旧・鮎の塩焼キングのブログ

80年代を「あの頃」として懐かしむブログでしたが、子を亡くした悲しみから立ち直ろうとするおじさんのブログに変わりました。

冒険小説 ハテナの交竜奇譚 第2話その14 『ダンジョン・アタック前編』 〜《ウォーグ》の洞穴〜

2025-02-19 15:05:00 | 小説

亡き次男に捧げる冒険小説ですね。


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一四

 眩しい日差しと騒がしい緑。それとは不釣り合いな乾いた血の黒さと屍肉の赤さ。昨日の戦いの場は生と死の入り混じる凄惨な様相を露わにしていた。蝿とシデムシが群がる2体の死骸。義兄弟の三人はその死骸に関心を示すことなく素通りした。魔獣にかける情けなど、この《タツノオトシヨ》に持ち合わせている者はいない。

 滴る血の痕が点々と森の奥に続いていた。《野伏せり》のテーリにとって追跡はそう難しいものではなかった。瀕死の《ウォーグ》は追跡されることを警戒する余裕もなく逃走を図っていた。歩きやすい獣道を使って、真っ直ぐに寝ぐらに戻っていた。渓流が作った急峻な崖の下に幾つもの横穴が掘られていた。そのうちの一つに二筋の血痕が続いていた。

「簡単に見つかったね。」

ナーレは拍子抜けした。橋の横で渓谷に降りるのを躊躇っていたことが嘘のようだった。手負いの獣は恐ろしいが、与えた傷は相当深い。昨日の二匹だけだったら、接敵した瞬間にこの冒険は終わる。

「わかっていると思うが、少し様子を見るよ。敵が何匹残っているのか、正確な情報を集めたい。」

《野伏せり》がいることがこんなにも心強いとは。ハーラはテーリの精悍な横顔を見つめた。出会ってまだ1日も経っていないのに、こんなにも信頼できる相手に出会えるとは、運命とは皮肉なものだ。実家には理解者が誰もいなかった。そんな悲しみや寂しさが脳裏をよぎったが、ハーラは首を振るとすぐに目の前の横穴を注視するのだった。

 森の中にハーラとナーレを残し、テーリが一人で横穴に近付いた。地面に寝そべると鼻先をくっつけ入念に匂いを嗅いだり、凹みの数を数えたりしている。横穴の入り口には一切近付かず、慎重に捜索したテーリは音も立てずに二人の待つ藪に戻ってきた。

「わかる限りで《ウォーグ》は8匹いた。」

「とすると、残る《ウォーグ》は最低でも6匹か。思ったより多いな。」

ハーラが顎に手をやり、悩ましげな顔をした。

「それだけならまだ対応できる。残念ながら敵は他にもいる。」

テーリの言葉にハーラもナーレも顔色を失った。

「やっぱり《竜》だね?」

ナーレは声を震わせた。

「いやいや、そこまで怖いものじゃない。《ゴブリン》だよ。3人くらいが出入りしている。」

《ウォーグ》は《ゴブリン》とつるむことが多い。一見すると《ゴブリン》に使役されているように見えるが、いざとなると平気で見捨てるくらいの薄い主従関係で有名だ。テーリの見立てが正しければ手負いの《ウォーグ》が2匹、傷一つない《ウォーグ》が4匹。そして《ゴブリン》が3人。9対3の正面衝突ならば、義兄弟に勝ち目はないだろう。正面衝突をするならば。

 不意にハーラが打ち明けた。

「ここ最近、身体が熱っていたんだ。そうしたらさ、昨日の戦いの中で気付いたんだけど、《魔術師》に覚醒したようなんだ。」

 この場でいうことかとテーリとナーレは目を丸くした。まさか《生得魔術師》の戦力がいきなり加わることになるとは。詳しく話してくれないかと、テーリはハーラの顔を見据えた。ハーラはそれに応じて、実家からの逃避行を思い返し、話し始めた。


【第2話 一五に続く】

次回更新 令和7年2月21日金曜日


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ハーラが過ごしたわずかな逃避行。その間に見た不思議な夢がハーラの眠れる力を呼び覚ました。


冒険者3levelになったハーラ・スイマール

クラス:聖騎士2level/生得魔術師1level

・グレートソードとヘビー・クロスボウが得意武器となった。

・この武器の追加効果を発揮できるようになった。

・両手武器の扱いが更に習熟し、基本的な攻撃力が増した。

・聖騎士の神聖なる一撃の呪文を覚えた。




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