亡き次男に捧げる冒険小説です。
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一三
三人それぞれの思惑が噛み合わない中、《サンダー渓谷》《ゴール橋》の出口側に到着した。当初は手負いの《ウォーグ》狩りという自分たちの力で充分に完遂できる冒険だった。いつの間にかそれが《竜》との遭遇という分不相応な冒険になる可能性が出てきた。不安げなハーラとテーリ。ナーレも二人の神妙な面持ちに、不安が伝播する。
「怖かったらやめた方がいいよ、ハー兄、テー兄。」
ナーレはお気楽な性格に見えてその実、慎重さをもっていた。そうでなくては《青銅街》を生き抜くことはできなかった。今回のヤマは身の危険を感じる。渓谷に着いたナーレはそう直感していた。
「こんなことならヴァッロとヘロを雇っておけばよかったかな。」
ハーラが弱音を吐いた。冗談めかしていたが本心だろう。ヴァッロたちが醸し出していた冒険者としての風格は《息巻く竜》ならば、十分に渡り合える圧があった。しかしそれはもう後の祭りであった。
「《竜》がこの時間帯に活動している可能性は低い。昨日の《ウォーグ》を排除したら、速やかに渓谷を出ればいける。どうかな?」
テーリの正義感は恐怖を抑えつけた。もし《竜》の出入りするような渓谷ならば、《ウォーグ》も住処を変えようとするかもしれない。そうなれば人型生物が襲われる可能性が格段に上がる。昨日の戦いから学んだテーリたちは、一晩にして力が増していた。今の自分たちなら《ウォーグ》程度なら遅れをとることはない。
「無理はしない。それだけは約束しよう。」
ハーラの言葉に二人は頷くと、昨日の戦場へ降りて行った。
真夏のまだ気温が上がりきらない午前の日差しは、それでもギラギラと義兄弟の三人を照りつけた。昨日と打って変わった蒸し暑い森林特有の風が義兄弟の三人に重く絡みついた。樹々のざわめきで、渓流の涼しげな音はかき消されていた。
渓谷に入っていく三人組の姿を認めたチッチたち四人。いかにも手練れの《パーティー》は義兄弟に気取られない絶妙な距離をあけて義兄弟の跡を追った。不幸なことにチッチたちは《竜》の噂を、道中耳にすることがなかった。聞いたところで、さして問題視することもなかったのだが。ただ、《竜》に対しての備えがなかったことは慢心と言わざるを得なかった。
【第2話 一四に続く】
次回更新 令和7年2月19日水曜日
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遂に見つけた魔獣の巣穴。しかしそこには他の魔物の痕跡が!
冒険者3levelになったテーリ・テフルデニス
・ロングボウとピストルが得意武器となった。
・この2種類の武器の特殊効果を発揮できるようになった。
・生存術のスキルを獲得した。
・戦闘技術として遠距離攻撃を獲得し、矢弾の命中率が増した。