旧・鮎の塩焼キングのブログ

80年代を「あの頃」として懐かしむブログでしたが、子を亡くした悲しみから立ち直ろうとするおじさんのブログに変わりました。

冒険小説 ハテナの交竜奇譚 第1話 その26

2025-01-10 15:11:00 | 小説

亡き次男に捧げる冒険小説です。


二六

 《ゴール橋》の東側には、西に向かって歩いていく三人組をじっと見つめる一団、四人の人影があった。その中にはヴァッロの姿もあった。

「彼らは想像以上に強かった。儂らが助けるまでもなかったことに驚きもしたし、安心もしたよ。」

四人のうちの一人、ローブを纏った痩身の《ドラゴンボーン》が呟いた。ヴァッロに「チッチ様」と呼ばれた人物だ。《ドラゴンボーン》にしてはかなりヒョロリとしている。180センチメートルを超える上背の割に筋肉がついていないため、《ドラゴンボーン》らしからぬ弱々しさがあった。その身なりと身体付きから《魔術師》であることが窺えた。

「そうですね。でも本当に安心していいかは、まだ決められないでしょ?」

四人の中では一番背の高い《ケンタウロス》の《聖職者》が相槌を打ちながらも、懸念を述べる。女性らしい柔らかな物言いだった。

「彼らが欄干から飛び降りるのを目の当たりにした時は肝が冷えた。だが、なかなかどうしてやりおることだ。もう少し様子を見守りたい。合流することは容易いが、今すぐというのは心の準備が整わない。」

チッチは心配事があるようで、肩をすぼめた。

「それもわかる話です。私も自分自身が心配ですから…。」

《ケンタウロス》の淑女はそう答えると同じく肩をすぼめると、パカリパカリと蹄を鳴らして橋に向かって歩き出した。続けてチッチが歩き始めると、ガチャリガチャリと金属が擦れ合う甲高い音を立てて従者と思しき《小人》が続いた。《小人》は振り向いて、意味深にヴァッロとその奥に視線を送る。ヴァッロは辺りをキョロキョロと見回す。《小人》の送った視線の先に、ハーラの連れである馬が繋がれていることに気が付いた。ヴァッロは欄干に括り付けられた手綱を器用に外すと、おもむろに馬を引いてスタスタと歩き始めた。

「オデを置いていかないでーよ。」

言葉とは裏腹に、ヴァッロの動きはのんびりしていた。呑気な奴だと《小人》は呆れていた。


【第1話 二七に続く】

次回更新 令和7年1月12日日曜日


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用語解説

《ドラゴンボーン》

竜のような見た目の人型生物。竜と同じ特質を有するものが多く、ブレス攻撃をしたり、翼を出して飛べたりする者もいる。屈強な者が多いため、チッチのようなドラゴンボーンの魔術師は珍しい。


《魔術師》

ウィザードとも。魔法使いとしては最もポピュラーなクラス。魔術書の研究などを通じて、呪文を学ぶ。他の魔法使いクラスに比べて、「学ぶ」というクラス特徴のため使用できる呪文の種類は桁違いである。


《ケンタウロス》

半人半馬の人型生物。下半身が馬のため、身長が非常に高くなる。D&Dではプレイアブルキャラクターの一つである。


《聖職者》

クレリックとも。魔法使いクラスの一つ。主に体力回復やバフとなる呪文を操る。神派の信仰心を呪文の素とするため、必ず何らかの神を崇めている。




冒険小説 ハテナの交竜奇譚 第1話 その25

2025-01-08 12:29:00 | 小説

亡き次男に捧げる冒険小説です。


二五

 暫く三人は声をひそめ、背中を丸めて森を見渡していた。30分ほどしても何も起こらなかったので、《サンダー渓谷》を発つことにした。

 だがその前にテーリの所持品を見つけなければならない。いくら記憶がないといっても、テーリがここまで全裸で来られたわけがない。周囲を捜索すると、テーリが潜っていた澱み近くの河原に荷物が積まれているのを発見した。近くにはきちんと畳まれた衣服や鎧があった。サイズはテーリにぴったり。やはり自分の足でここまで来て、自分の意思で服を脱いで川に潜ったのだ。

 テーリの直近の足取りと荷物を回収した三人は、《サンダー渓谷》からの脱出を試みた。《野伏せり》だったテーリはすぐに獣道を見つけると、そこから渓谷を登る山道に辿りつき、ものの20分で《ゴール橋》の出口側に出ることができた。


 真夏の夕刻、日が長くまだ人通りも多い。テーリのお師匠様が住む《魔法都市》は大マータの中央部に位置する。《魔法都市》を訪ねるには、西に向かわなければならない。三人は少しでも早く先に進もうと、《ゴール橋》の出口から一番近い宿場町に向けて早足で歩き始めた。


【第1話 二六に続く】

次回更新 令和7年1月10日金曜日


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用語解説なし



明日は次男の誕生日!そんな日に見た夢

2025-01-06 16:24:00 | 日記

明日は次男の誕生日。

次男が生まれるかもしれないからと、我が家では1月6日に七草粥を食べるようになった17年前の今日。台所からはカミさんが七草を刻む音が聞こえます。


そんな日だからか、次男が夢に超久しぶりに現れました。


私の背中あたりにいた子供が居間の真ん中で寝転がっている三男に嫌がらせをしに飛び出しました。


なんと、可愛い三男のプリケツに顔をうずめ、ぐりぐり押し付け始めるではありませんか!!

嫌がる三男。そりゃそうだ。


爆笑しながら顔を上げたのは次男でした。

次男特有の悪い笑顔が堪りません。

夢と認識していない私としては、2度びっくりです。

あれ?次男ってもう亡くなってなかったっけ?


現実を忘れさせる笑顔が脳裏に焼き付きました。これはこれで嬉しいものです。


でも夢で出てきたのはそれだけ。

あとは三男ばかりでした。


実は三男の言葉遣いがあまりに悪いので説教した後、お昼寝したため、三男が気になっていたのでしょう。夢の主役は三男でして。


怒っちゃったお詫びじゃないけど学校に行くのに駅まで送るよと車を出したら、なんと車道にいきなり飛び出して轢かれかける三男。


幸い無傷でしたが避けた車が大破!中から中東の方がわらわら出てきて大パニック!スマホに通訳してもらおうと車に取りに戻ったら、なぜか亡き父のそっくりさんが車から降りてきて、尚パニック!まあ、夢らしいこと。


その後、スマホを持ってデパートの中を徘徊するという、夢らしい訳のわからなさでした。


亡き次男のことばかり考えてしまいますが、生きて成長し続けている長男と三男を最優先に考えなければいけません!それを改めて考えさせてくれた夢でした。


もう次男には会えないから、次男のことを思うのは夢だけでいいです。


長男や三男にはずっとそばにいて欲しいから、たまには厳しいことも言ってしまいますが、目一杯愛して、立派な大人になれるように支えていきたいと思います。


夢から覚めても特に泣くこともなく、冷静に過ごせるくらいには次男のことも整理がつきました。風邪をひいて寝込んでばかりの正月でしたが、明日からは仕事を頑張りたいと思います。




冒険小説 ハテナの交竜奇譚 第1話 その24

2025-01-06 11:57:00 | 小説

亡き次男に捧げる冒険小説です。


二四

 《タツノオトシヨ》では《コボルド》は一般的な人型生物である。ただし「邪悪」な人型生物として知られており、森や平原の厄介者である。《コボルド》は、《竜》と狩猟犬を足して二で割ったような見てくれをしている。知能は高くなく、他の人型生物に使役されている者がほとんどである。強い者と徒党を組んで寒村や旅人を襲うのが《コボルド》である、というのがこの世界の一般的な認識であった。

 そんな悪評の多い《コボルド》が十数メートル先の川向こうから声をかけて来た。どうやら三人の役に立ちたいと思っているようだ。

 三人に緊張が走る。《コボルド》が単独で行動するわけがない。どこかに主である《ゴブリン》や《オーガ》が潜んでいるのか?先ほどの戦闘の傷も癒えぬうちに連戦ともなれば、下手をすると命取りだ。三人の背中に冷たいものが流れた。

 「僕たちはお前の助けを必要としない。帰れ。」

三人の年長者であるハーラは代表として言葉を発した。毅然とした態度で《コボルド》を追い払おうと、語気を強めて命令した。《コボルド》はやれやれというように首を大きく振る。

「オデは敵じゃないぞ。でも怖がるのはよくわかる。元気そうだから言われた通り帰るよ。じゃな!」

そう言い残すと、這い出て来た藪にまたゴソゴソと潜り込んで行ってしまった。あまりにも素直な《コボルド》の行動に、呆気に取られた三人はしばし口を開けて、《コボルド》が潜り込んだ藪を眺めていた。無言で藪を見つめていると、藪の中から大きな声がした。

「チッチ様、オデは要らねーってさ。」

先ほどの《コボルド》が誰かに声をかけている。

「ヴァッロ!声が大きい!いいから早く帰ってこい!」

《コボルド》とは明らかに違う声が、もっと大きな音で森に轟いた。ごめんなさいよー、とヴァッロと呼ばれた《コボルド》の声がしたきり、渓谷は元の静けさを取り戻した。

 「何だったんだろうね、今の。」

誰にともなくテーリが話しかけた。

「わからないが、我々を狙っているという感じじゃあなかったな。なんか可愛かったし。」

ハーラが返事をした。ハーラの言う通り、ヴァッロは《コボルド》にしてはどんぐり眼で愛嬌のある顔つきをしていた。喋り方や這いずり方も、人間の幼児のような癖のあるもので、可愛いと言われればその通りとしか思えない愛くるしさがあった。


【第1話 二五に続く】

次回更新 令和7年1月8日水曜日 午前8時


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用語解説

《ゴブリン》

《タツノオトシヨ》では一般的な人型生物。ロールプレイングゲームの最序盤に現れる雑魚モンスター。基本的には邪悪な存在。D&Dではプレイアブルキャラクターの一つ。


《オーガ》

《タツノオトシヨ》では一般的なモンスター。知能が低いためより高位のモンスターに使役されることも多い。巨人に分類されるが、巨人の中では小型の部類である。


《謎の冒険者 ヴァッロ》

どこか憎めない、愛嬌のある《コボルド》。流暢な標準語を話すが、所々イントネーションがおかしい部分もある。「チッチ」という男の従者であるらしい。テーリたちに近付いた目的は不明。



冒険小説 ハテナの交竜奇譚 第1話 その23

2025-01-04 08:50:00 | 小説

亡き次男に捧げる冒険小説です。


二三

 三人の心が一つとなり、一緒に旅をしようと話がまとまった。喜びに声をあげた正にその時、対岸の藪がガサガサと音を立てて、大きく揺れた。何事かと三人が警戒の目を向けると、のそのそと《コボルド》が這い出て来た。

「おう、三人とも無事だったか。オデ(俺)は何かの役に立つか?」

流暢な共通語を話す《コボルド》を見つめ、三人は首を傾げるのだった。

「また変なのが出た…。」

ナーレが独りごちた。


【第1話 二四に続く】

次回更新 令和7年1月6日月曜日 午前8時


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用語解説

《コボルド》

ロールプレイングゲームでは序盤に登場する雑魚モンスター。D&Dではプレイヤーの選択できる「人種」の一つである。自分たちは《竜》の血をひく存在であると信じている。