
(河原れん著)
★★★★★(ベアの満足度)
凄い小説だった。
同乗したバイクで事故に遭い、恋人を失う。
事故のことを思い出すことができない。
失われた彼との最期の記憶を思い出すため、
調査を依頼する。
ストーリーに泣かされたわけではない。
文章に泣かされた。
言葉のひとつひとつ、行間にも滲み出る喪失感。
泣ける小説は好きだが、好きだからこそ、
わざとらしい展開には、目を光らせるところがある。
読み進めたいけど、悲しみに寄り添い、
進むことができない。
吉本ばななさんの「ムーンライト」を
もっと辛くした感じ。
泣きたくても泣けない、瞳の上で
涙が表面張力で止まっている。
「知る」ことは「痛み」を伴う。
それでも知りたい。
知ることが出来たから、前に進める。
不可能に挑戦したハッピーエンドも受け止められる。
このハッピーエンドが「幕末純情伝」なんだなあ。
もう一度読みたいけど、心が辛すぎる。
映画をDVDで鑑賞するに留めたい。