今年、サード・アルバム「Kelsea」をリリースしたばかりのケル
シー・バレリーニが、そのアルバムの裏返しのような、コンパニ
オン・アルバム「Ballerini 」を急遽リリースしました。発表も今
月に入ってからなので、本当の突然な感じです。曲目曲順は全く
同じ。しかし、本人の言葉によれば、゛キー、テンポ、メロディ
ー、歌詞、プロダクションが異なる゛もので、゛「Kelsea」はキ
ラキラ輝き、大胆で生き生きしている無限の夢。彼女は私がなり
たいものです。一方で、「Ballerini 」は感情的で感傷的、ソフト
で周囲をよく観察し、言葉を選んでいるの。彼女は私のことよ゛
と説明しています。
単純に捉えれば、本編のポップ・アルバムをマイルドなアコース
ティック・アレンジに仕立て直したものとなりますが、リミック
スなどではなく、完全にレコーディングしなおしているのです。
それは、オープニングの"Overshare"のイントロのドブロ・ギタ
ーの響きで、直ぐに感じ取れます。ホールジーとデュエットして
いた"The Other Girl"もアコースティックで穏やかなミディアムに
なっていますね。いずれの曲もメロディーは、細かいニュアン
スが結構変えられていて、歌い込んだライブ・バージョンの
ようです。
本編で既にアコースティックだった曲では、"Homecoming Queen?"
はアコギ主体から陰影あるピアノの伴奏に、反対にピアノ曲だっ
た”Love and Hate"は牧歌的なバンジョーやマンドリンが響くカン
トリー・ソングになっていい感じですね。地味目だったポップ曲
"Love Me Like a Girl"や"Needy”はメロディーが引き立ち、くつろ
げる曲になってます。ラストの"La"だけは、少しザラついたエレ
キ・ギターのストロークで揺れ動く心を表現しているようで、よ
りパーソナルな印象です。彼女の柔らかな歌声は結構気に入って
いるので、この一貫して穏やかにアレンジされた盤は彼女らしく
歓迎したいと思います。
このような再録音的なアルバムは、どちらかというとファン・サ
ービス向けで、あまり広い影響力は持ちえないものですが、ケル
シーが゛すべての曲が良く考えて変えられた゛と語っているよう
に、かなり念入りに製作された感じがします。というのも、「Kelsea」
はカントリー・アルバム・チャート上は2位(亡くなったケニー・
ロジャースのベストに1位を阻まれた・・・)でしたが今は25位内か
ら消えていますし、シングル・カットされた"The Other Girl"はほ
とんどチャートは上がりませんでした。そして、今年のCMAアワ
ードの女性ボーカル賞のノミネートも逃しています。そういう状
況に対するカンフル剤的な意味があるように思います。また、
コロナ時代のステイ・ホームのムードに対応したとも取れます。
ただ、ストリーミング・サービスで表示される聴取者数は、たと
えばキャリー・アンダーウッドよりかなり多いし、アシュリー・
マクブライドは足元にも及びませんので、十分存在感は持ってま
す。新たにシングル・カットされた"Hole in the Bottle"で、まず
カントリー界で挽回を期待したいです。それにしてもジャケッ
トは、本編の裏を表にしただけですが、何とも悩ましく、ユー
モアが効いていますね・・・
コチラはシングルのレギュラー・バージョンです
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