カントリー界の期待の若手でテキサス出身のパーカー・マッカラムが、「Gold Chain Cowboy」に続くメジャーMCAでのセカンド・アルバムをリリースしました。メジャー・デビュー曲の"Pretty Heart"と続く "To Be Loved by You"が連続してビルボード・カントリーエアプレイで1位となり、本作からのリード・シングル"Handle on You"も2位(モーガン・ウォレンに阻まれた)と快調にヒット曲をモノにしてきている彼。テキサス/レッド・ダートの無骨さを醸し、かつてのドワイト・ヨーカムを思わせるような(あそこまでクセはないですが・・・)憂いを帯びたソウルフルなカントリー・ボイスが魅力で、待望と言いたいアルバムです。
オープニングの"Hurricane"では、タイトル通りの嵐のようなシャープなロック・ギターがさく裂し、最初は少々面喰いましたが、かつてのアメリカン・ロックの王道を継承したストレートな疾走感は彼の大きな魅力の一つです。そして、以降続く作品群は、テキサス/レッドダート的な期待をいい意味で裏切るような幾つかの新たなスタイルも聴かれ、なかなかの充実した作品集だと感じました。
まず耳を奪われたのが、続くシングルとなる"Burn It Down"。弾むビートやデジタルなアコギのイントロに導かれ、冒頭のパーカーの歌声にはイコライジングがかかります。印象的なコーラスから彼本来の伸びのある歌声が聴かれますが、程よいポップ感が好印象。ナッシュビルのソングライター、ロリ・マッケンナやヒラリー・リンジー、リズ・ローズらとパーカーがタッグを組んだ快作です。さらに意表をつかれたのが、"Things I Never Told You"や"Have Your Heart Again"というモダンなピアノ・バラードが収められている事です。エモーショナルなテナー・ボイスがよく生えて、特に後者は全編ピアノのみのバックで、時折ファルセットを交えて歌声の表現力をアピールします。かつてのビリー・ジョエルとかエルトン・ジョンのような感じの曲想ですね。
それでもそこはテキサス出身、大半の曲は骨太でドライなギターを主体としたバンド・サウンドやホンキー・トンク・スタイルを基本にしてアルバムにしっかりと軸を作っています。リード・シングルの"Handle on You"からして、泣きのスティール・ギターが響きわたる結構オーソドックスなカントリー・ソングでした。カントリー・バラードということでは、自虐的な負け犬的な心情を歌った"Tails I Lose"が聴きモノです。一方、ハードなナンバーでは、やはり"To Be Loved by You"のイメージを踏襲した"Stoned"あたりがパーカーならではのテキサスらしさを堪能できるソリッドな作品と言えるでしょう。
もう1曲、ピアノをフィーチャしたバラード" Lessons From an Old Man"は、コチラは3連のバラードで南部の土の香りが漂うスタイル。パーカーのソウルフルなボーカルが堪能できるお気に入り曲です。まだ30才という若さですが、こういうのを歌うとはなかなか達観しているのでしょうか。こちらもロリ・マッケンナ、リズ・ローズと、プロデューサーのジョン・ランダルらとの共作です。
指輪を買う前に、自分のワイルドな面を克服しろ
丘の上の家では王様になれない
派手な車ではどこにも行けない
いつも善人が最後に来るとは限らない
5時はゆっくり来るが、年月は確実に過ぎていく
大人が泣かないなんて言わせないよ
犬は狩りをし、馬は走るんだ
風は背中に、顔は太陽に向けろ
大きな王冠の帽子に、ボロボロの古いダッジ
葉巻とディーゼルの匂いを嗅ぐことができる
彼は背もたれに寄りかかり、もう一息吸う
彼は言った、"全てを知っているわけではないが、十分に知っている "と
"全部はわからないけど、十分わかるよ "
(コーラス)
お金がすべてじゃない、でもお金はいいものだ
ウィスキーに悪いものはない、ただ日曜日は飲むんじゃない
生活のためと、人生のためがある
老人の教えが若者を賢くした
プロデューサーのジョン・ランダルは、90年代にはアーティスト活動もしていて、「The Mafa Tapes」でミランダ・ランバートと共演していたテキサスゆかりの人物です。また、作曲陣にはテキサス・カントリー界の重鎮・ランディ・ロジャース、ウェイド・ボウェンらの名前も見られるなど、サポートにはしっかりテキサス関係の人脈が担っていて、ここからもテキサス・ルーツをしっかり据えようとする姿勢が感じられます。それを今後どのようにメジャーでのさらなる飛躍につなげていくのか、期待していきたいと思います。
昨年のCMAフェスのライブ。今年もまもなく6月8日から開催されます
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