ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

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タイラー・ハバード Tyler Hubbard - Tyler Hubbard ~ Florida Georgia Lineのボーカリストがソロ・デビュー

2023-03-11 | Florida Georgia Lineフロリダ・ジョージア・ライン レビュー

 

今年2023年の1月、フロリダ・ジョージア・ライン(FGL)のメイン・ボーカルを担ってきたタイラー・ハバードが、満を持してソロ・アルバムをリリースしました。ソロ・デビュー曲の"5 Foot 9"がリリースされたのが去年の5月なので、相当に期間が開いた印象ですが、その間も随時、新曲をリリースしてきており、今回それらが新曲と共にまとめられています。既にスーパースターであるタイラーが新たな装いをまとった爽快感があり、彼らしいパワー感も備えたアルバムになっているようです。

 

 

昨年、ブライアン・ケリーとの活動を一時休止するというアナウンスとほぼ同時にリリースされた"5 Foot 9"は、幸先よくビルボード・カントリー・エアプレイで1位を獲得しました。実はこのナンバーを作曲した時、チョッとしたミスを犯していた事をタイラーは告白しています。この印象的なタイトルは彼の妻の身長なのですが、タイラーは言います。゛あの曲を書いた後の晩、家に帰って彼女に聞いたんだ。「ベイビー、君の身長ってどのくらいだっけ?」彼女は「あ、5フィート10インチよ」って言ったんだ。「やれやれ」という感じだったよ。「これは今日書いた曲で、一部は君のことを歌っているんだ。1インチ足りなかったかもしれないね 」ってね゛重要曲にもかかわらず、なんともおおらかなお話で、楽しくまります。

このアルバムのオープニングを飾る"Dancin' in the Country"は、昨年8月にリリースされた6曲入りEPで公開されていたナンバー。ハイスピードのバンジョーが印象的なエレクトリックなダンス・チューンです。

 

 

君を連れていくよ カントリーで踊ろう/リーバイスでロービーム/レッド・ダートでスピンして/両足でスイート/太陽が沈むこのあたりで/シルバラード(注:ピックアップ・トラックの名前)のバックビート/君は決して家に帰りたくないし、きっとカントリーで踊りたいって思うだろ/  ~"Dancin' in the Country"~

この曲の作曲にはあのキース・アーバンが参加していて、タイラーによると、キースのこの曲への貢献は大きかったようです。゛彼は間違いなく彼のテイストを持っていて、当時僕が書いていた曲に新しい要素を加えてくれたんだ゛゛この曲を彼と一緒にツアーで演奏するのが楽しみだよ。もしかしたら彼を説得して、僕と一緒にギターソロを演奏してもらうこともできるかもしれないね゛昨年秋にタイラーは、キース・アーバンのツアーにオープニング・アクトとして同行していました。

 

 

本作はとても練り上げて製作されたことが感じられて、FGLのイメージから幾分か洗練させて、スターらしい明るく華やかなスタートを演出しようとしている王道のポップ・カントリーとして聴きました。聞いていて気持ちよく、佳曲も多いです。しかし、それと同じく、タイラーってこんな感じで良いんだったかな、と何とも落ち着かない気持ちにもなります。"5 Foot 9"から相当期間が開いたのは、音楽的な方向性を探るのに時間を要した為ではないでしょうか。個人的なお気に入りは、トーマス・レットのお父さんレット・エイキンスが共作した、近年のFGL風の"I'm the Only One"あたりで、やはり土の香りのするイキの良い作品に耳が行きます。

 

 

 

やはり、有名グループからのソロ独立となると、聴く側の捉え方がビミョーになる宿命を改めて感じてしまいます。それも、およそ10年前、カントリー界に鮮烈な新風を巻き起こし、一時代を築いたフロリダ・ジョージア・ラインです。ほとんどのヒット曲を歌ってきたのがタイラーだったのですが、それでもやはり、何かエッジのようなものが足りないように感じられます。ブライアン・ケリーのコーラスや、さりげない゛Yup!゛の合いの手がないだけでも、物足りないのです。たとえば、キース・リチャーズらストーンズのいないミック・ジャガーとか、ピップスのいないグラディス・ナイトなどなど、過去にもたくさんのソロ独立作品の思い出がありました。カントリーでも、アラバマのボーカル、ランディ・オウェンがソロでヒットを飛ばした話など聞いた事がありませんね。有名なソロの成功例としては、ワム!からソロになったジョージ・マイケルの成功例が思い浮かぶくらいか・・・

 

 

本作のチャート・アクションは、カントリー・アルバムで8位、そしてビルボード200では40位と、゛フロリダ・ジョージア・ライン゛の作品としては、チョッと物足りない結果でした。本国のファンも、やはり戸惑いを感じているのでしょうか。昨年のグループ活動休止のアナウンスが急だったので、今だにFGLに対する待望を捨てきれないファン心理が根底にあるのかもしれません。タイラーが今後どのようにファンの思いをくんで活動をしていくのか、とても興味深いです。



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