ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Ashton Shepherd(アシュトン・シェパード) 「Sounds So Good」

2008-03-28 | カントリー(女性)
 先日ご紹介をさせていただいた、大型女性シンガーAshton Shepherdのデビュー作。最近は、Alan Jacksonと併せて、ヘヴィ・ローテーション・アルバムとなっています。潔く堂々とした必要最低限のプリミティブな、ディストーション・ギターは隠し味程度で、それでいて21世紀を感じさせるストレートなバック・サウンド。クリアなエレクトリック・ギターやアコースティック・ギター、そしてマンドリンやバンジョーのアンサンブルが強力な圧力で訴えかけてきます。その上で自由自在に跳ねる声は、たくましくも優しく、21歳と言う年齢を感じさせない上手さを感じさせるもの。とてもエモーショナルで魂を感じるものの、ソウル・ミュージック云々とは無縁の、生粋の白人系、ずばりカントリー・ボイスを持つシンガーです。そして楽曲の方も、11曲中7曲が単独作、3曲が共作と、ソングライターとしても完成された能力をいかんなく発揮しています。
 
 リード・シングルで、アルバムの強力なオープニング"Takin' off This Pain"。リフレインのメロが、ガンズ・アンド・ローゼズの曲を思い出させる、パンチのあるロッキン・カントリー。「右手には冷たいビール/左手には結婚指輪/私、それをあまりに長く付けすぎたわ/それを捨て去る準備はとっくに出来ている/私は自分を自由にできるの」そして”So”と一息ついて、「アンタが私に押し付けてきたこの苦しみから私は逃げるわ!」カントリーでは伝統の離婚ソングを、力のある歌声のイメージのとおり、現代流の強い女性的に描いているところが彼女らしい。しかし、離婚を勧めるということではなく、Ashtonのインタビューによると、彼女のファンはこの曲を苦しい状況を自分自身の力で変えていくモチベイションの象徴として前向きに聴いているようです。女性の気持ちを描いた歌として感動的なのが、クラシック・スタイルのカントリー・バラード"I Ain't Dead Yeat"。「私には赤ちゃんがいるし、長~い家事リストもある/旦那は毎日帰ってくれる/洗濯をして、料理や掃除をする/それが私の責任だし、いつもちゃんと9時までには寝るわ/でも私は今でも冷たいビールや埃っぽい道が好き/そしてラジオでKeith Whitley(Hank Williams)を聴くのも好きなの/だからといって、私が良いママでも良い奥さんでもないとは言えないわ~私は年を取ったかもしれない、でもまだ死んではいないのよ」結婚して、家庭におけるサザン・ベル(南部の良妻賢母)としての責任を果たそうと日々頑張っているものの、現代の活動的な女性らしいパッション、時にはハメを外して楽しみたい、という思いの狭間で葛藤する素直な気持ちが描かれています。

 

 ミディアム・テンポで楽しいのが"The Pickin' Shed"。「さあ、来ない?/ギターを持って来て、ここで私達のサウンドを演るのよ/沢山の素晴らしい友人達と音楽が生まれ育つの/まさにこの裏庭の演奏小屋で」 ここでのShedという言葉、カントリーの歴史で出てくるBarn(納屋)に相当する現代の言葉なのでしょう。そして、それは都会の、そしてロックの世界で言う”Garage(ガレージ)”と基本的に同義なのだと思います。スローで個人的にお気に入りなのが"Lost In You"。フォーク・バラッドっぽく、実にシンプルで心を掴んで離れない1つのメロディを繰り返すものですが、盲目の愛を歌う甘美な歌声を最新の演奏テクニックで美しく神々しく幻想的に盛り立てる様が素晴らしいです。

 若いにもかかわらず、幼少期はパッツィ・クラインばかりを聴いて育ったと言う筋金入りのトラディショナリスト。アメリカには今でもこのようなルーツを大切に守ろうとする文化圏があり、そのおかげで現在でもこうしてエッジの効いたプリミティブでアーシーなコンテンポラリー・サウンドが楽しめることが、このアルバムと出会えた何よりの喜びなのです。

 

 Ashtonのルーツが垣間見れる、彼女への一問一答はこんな感じ。
音楽的ヒーローは? 「Keith WhitleyとDolly Parton」
カバーしたい歌は? 「Nitty Gritty Dirt Bandの"Fishing in the Dark"」
最もデュエットしたい人は? 「Alan Jackson」
どんな曲が書きたい? 「"He Stopped Loving Her Today"」
シャワーの時に歌う歌は? 「沢山ある自分の歌」

 Ashtonは、今もナッシュビルに移住せずに故郷のアラバマはLeroyに住んでるそうです。ナッシュビルの歴史は尊敬してるけど、家は家だと。アラバマ。かつてのサザン・ソウルのメッカで、スワンプ・ロックの連中やエリック・クラプトン、ローリング・ストーンズが憧れたマッスル・ショールズのフェイム・スタジオがある地です。そしてハンク・ウィリアムスの故郷です。

 ●AshtonのMySpaceサイトはコチラ


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