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●2019年リリース、「Honky Tonk Time Machine」の記事をコチラにアップしました
スト様の最新作。誰も太刀打ちできません。
いつも厳選された素材に恵まれつつも、徹底してテキサス・ホンキー・トンク&トラディショナル・スタイルを基調とした、なめらかで心地よいストレート・カントリーを届けてくれるスト様ことジョージ・ストレイト。前作、「It Just Comes Natural」はそれが極上の形で結実し、昨年のCMAアワードではAlbum of the Year部門で18回目のウィナーに輝いています。サラリと聴くと、予定調和の極みのアメリカ歌謡ってなイメージ("カントリーはアメリカの演歌”という・・・)を持ちがちですが、そういうメロウでソフィスティケイトされたポップ・チューン("The Chair"など)と共に、ルーツ・オリエンディッドな相当にダウン・ホームなナンバーもやったりして(「It Just Comes Natural」での"Give It Away"なんて、渋すぎ)、しかもそれをしっかりヒットさせてしまう。これがスト様の正統カントリー・ボイスの持つマジック。元々この人、今でこそ悠々自適で豊かなスタッフに恵まれ余裕綽々の親しみやすいカントリー(たまにポップにもなったり)でヒットを飛ばしていますが、80年代にプリミティブなテキサス・ホンキー・トンク・サウンドで出てきた時は、本当の意味で勇気有る革新者だったのです。当時はアラバマやケニー・ロジャーなど文字どうり超弩ポップ・ソングが全盛の時代だったから。そこからスト様が道を開いたおかげで、ドワイト・ヨーカム、ガース・ブルックス、クリント・ブラックやアラン・ジャクソンがそれに続く事が出来たのです。だからテキサス・ルーツへのこだわりは強力で、いくらバックの音が滑らかに飾り立てようとも、基本がブレる事がないのでしょう。
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この「Troubadour」、前作がベイシックなホンキー・トンク・サウンドの現代における可能性を様々なスタイルで昇華させて、スト様らしい親しみやすい肌触りでまとめられていたのに対し、今回はそこから幾分メロウでポップ・サイドにシフト。注目のタイトル曲"Troubadour"や、シングルの"I Saw God Today"などがそれ系のスムースなバラードで和ませてくれますから。"It Was Me"や""Give Me More Time"も同系バラード。これもスト様お得意のスタイルですけどね。アップテンポでは、"Brothers of The Highway"がキャッチーなメロディがナイスなロッキン・カントリー、続く"River of Love"に到ってはリゾート気分タップリのカリビアン・ミディアム。このアルバム、録音は地元テキサス以外にも、フロリダのリゾート地、キーウェストでも行われおり、その辺からこの手のレパートリーが加えられているのでしょう。しかし、トラディショナル・スタイルも要所で押さえており、お約束のウェスタン・スウィング調"West Texas Town"もちゃんと1曲聴けるし、Patty Lovelessとのデュエット"House of Cash"は実にヘヴィな異色作。スト様とパティのルーツ志向むき出しのダウンホームな声のバトルがスゴくてなかなかの聴きものです。
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1952年テキサス州は Pearsall生まれ。父親は中学生の教師でしたが、それだけでなく100年以上も農場を運営している家系でした。小さい頃に母が出て行ってしまい、父とともに暮らす事に。その幼少期、ウィークデイは町で、週末は農場で過ごすという生活で、10代になる頃にはガレージ・バンドでロックをやっていたそうです。ズバリ、ビートルズなどのイギリスのビート・バンドがアメリカを席巻したブリティッシュ・インベイジョンの時期と重なり、その波を経験してた人なのです。60年代後半には大学に行くものの、すぐにドロップアウト。1971年からは兵役に就き、2年後にハワイに配置されます。そして、そのハワイでスト様はカントリー・ミュージックをプレイし始めるのです。1975年に兵役を終えると、早速テキサスに戻り、Texas State Universityに入学し農業の勉強を始める一方で、現在でもスト様のバックをサポートする名バック・バンド Ace in the Hole Bandを結成する事になります。バンドと地元のローカル・レーベルでレコーディング後、ナッシュビルへ向かいますが、最初はコネがなく苦労します。しかし、MCA Recordsで働いた事のあるErv Woolseyというテキサスのクラブ・オーナーと知り合った事をキッカケに、遂にMCAとの契約にこぎ付けたのです。1981年のデビュー曲"Unwound"が早速トップ10ヒット。翌年の"Fool Hearted Memory"で早くも1位を獲得し、現在までその栄光のキャリアは続いていくのです。
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スト様が60年代のティーンエイジャーの頃にロックをやっていた事は、聞き捨てならないです。この60年代前半のブリティッシュ・インベイジョン~ビートルズ、ローリング・ストーンズ、アニマルズ、デイブ・クラーク・ファイブ、ホリーズ、キンクス、そしてフーなど~の連中がやった事は、つまりはアメリカで50年代に一旦は”消費”されたロックン・ロールのリバイバル。彼らはアメリカの若者達にこう語りかけたのです。「アンタ達の国には、こんな素晴らしい音楽があったんだゼ。大事にしなよ」そしてその精神を体に染み込ませたスト様は、それを自身の生い立ち・ルーツに置き換える事によって、テキサス・ホンキー・トンクへの愛情を強靭な精神力で保ち続ける事が出来たのだと思うのです。
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