テキサス出身の有能なシンガー・ソングライター達の中でも、トップレベルのクリエイティブな力量とシンガーとしての個性を持つラドニー・フォスター。80年代にフォスター&ロイドとしてメインストリームにデビューし、90年代早々にソロに転向、現在まで着実に活動を続けてきたベテランです。彼の、カントリーをベースにしつつロック、ブルース、フォークの影響を大いに感じさせる独自の塩っ辛いサウンドは、多数派ではないものの、ルーツ志向の熱狂的なファンの心をとらえ続けてきました。そんな彼の最新作は、アルバムタイトル「Revival(信仰復興)」で表現されているとおり、スピリチュアルな色合いが濃い作品。しかしそれを、ホンキー・トンク・スタイルでもなく、ましてやメインストリームのポップ・スタイルでもない、ミニマムでライブ感のあるバンド編成によるロック・サウンドで表現している所がラドニーの独壇場です。さらに、ラドニーの作品を取り上げたダークス・ベントリーDierks Bentleyやダリアス・ラッカーDarius Ruckerらのメインストリームからのゲスト陣をコーラスに迎えている事も話題。
オープニング曲"A Little Revival"のイントロで耳に飛び込む、炎のような凄みのあるギター・サウンドで、このアルバムのただならぬ熱気を予感させます。メインストリームの爽快なサウンドとは全く異色の、粘りあるハードなギターなのです。そしてこのサウンドが、続く2曲でも軸となり聴き手に迫ります。70年代後半のパンク~ニューウィエブ・ロックや近年のオルタナ・ロックのようなイメージですね。"A Little Revival"についてラドニーは語っています「僕たちは皆、違う政治的洞察を持っている。でも皆同じ信仰心を持ち、違う人生を歩んでいる。皆何を必要としているんだい?この国には何が必要なんだ?人々には?そこで僕たち(この作品の共作者Jay Clementi と Darrell Brownら)は、信仰復興について語り合った。そして僕は、コーラスのフレーズを歌い始めたんだ'Hallelujah, a little revival!' 」彼のボーカルは、一見知的とも見えるルックスに見合わず、結構ブルージーな粘りあるテナー・ボイス。一度虜になったら、病みつきになる魅力があります。
2曲目は若干ペースを落とした"Forgiveness"。90年代半ばに離婚して、妻と息子がフランスに行ってしまった頃のことを回想したナンバー。ハードなギターをバックに「君が君自身に与えるべき最も厳しい物は、寛大さなんだよ」 と深い歌詞が歌われます。現在、息子は ナッシュビルの Belmont University に入学の為戻ってきており、その事がこの曲を生み出すきっかけにもなったよう。続く"Until It's Gone"はアルバム中最もスピーディーな、実にかっこいいナンバー。ダークス・ベントリー(「Greatest Hits」収録の"Sweet and Wild"はラドニーの作品) のセクシーな掛け合いコーラスがイイ。
ロックというよりR&B寄りの作品が、ジャック・イングラムJack Ingramとの共作"Trouble Tonight"。60年代のモータウン・サウンド、マーヴィン・ゲイあたりを想起させるミディアムの逸品で、ラドニーのソウルフルな声がグルーヴィーなノーザン・ビートにのって軽やかに弾みます。そして曲間を入れずに続く"Shed a Little Light"がストレートなブラック・ゴスペル調ジャンプ・ナンバー。ここでは、クワイア・コーラスをバックに、エモーショナルな歌声を聴かせてくれます。
それでもやはり、カントリー・フィールドのシンガーソングライター、ラドニー・フォスターの真価は、アコースティックなカントリー曲で発揮されます。その中で、アルバムのピークの一つが、ダリアス・ラッカーがサポートするミディアム"Angel Flight"。 戦争で弟を失い、その遺体を移送するパイロットを主人公にした、感動的な物語が歌われています。ダリアスが次のアルバムに、ラドニーの新曲を取り上げようとコンタクトをした事がきっかけで、このコラボが実現したよう。彼はHootie & the Blowfish時代に、ラドニーの"A Fine Line"と "Before the Heartache Rolls In"を取り上げていました。 "I Made Peace with God"は、ささやかにストリングスが色を添える、しっとりした弾き語りバラード。我が子が負傷するという極度の状況であっても、神がそばにいる事に安堵する主人公の信仰心を、切々と歌います。ロンサム感たっぷりの"Suitcase"も聴きものです。クロージングは、アコースティック・ギター、フィドルとマンドリンによる"A Little Revival"のカントリー・リバイバル。シンプルな編成によって、楽曲の良さが引き立ちます。
1959年、テキサスはDel Rio生まれ。 フォスター&ロイドFoster & Lloydの一員として、1987年に"Crazy Over You"のヒットをモノにします。それだけでなく、当時のメインストリーム・スター、 Holly Dunn、 Forester Sisters、 Sweethearts of the Rodeoそして Tanya Tuckerらが、ラドニーの作品でヒットを飛ばしていました。ラドニーは1992年、自身の生誕地と生まれ年をタイトルにした名盤、「Del Rio, Texas, 1959」でソロ・デビュー。トラディショナルなホンキー・トンク・カントリーとロック、R&Bが、実にピュアな形で結実したすばらしいアルバムで、 その中の"Just Call Me Lonesome"と"Nobody Wins"でトップ10ヒットを獲得したのです。しかし、その後の作品は批評家には高い評価を得るものの、メインストリームでのヒットには恵まれず、マイナー・レーベルでアーティスティックな質の高い作品をリリースし続けています。しかし、ソングライターとしては、ブルックス&ダンBrooks & Dunnの "Again"、 ケニー・チェズニーKenny Chesneyの "Somebody Take Me Home" ディキシー・チックス Dixie Chicksの "Never Say Die" や "Godspeed (Sweet Dreams)"、サラ・エバンス Sara Evansの "A Real Fine Place to Start"、ジャック・イングラム Jack Ingramの "Measure of a Man"、 ゲイリー・アランGary Allanの "Half of My Mistakes"、パット・グリーン Pat Greenの "Three Days" そして、キース・アーバン Keith Urbanの "Raining on Sunday"などなどメジャー級ヒットを数多く提供して、その才能を遺憾なく発揮しているのです。
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