カントリー・ミュージックって、アメリカじゃどんな人たちが聴いてるの?
CMA(カントリー・ミュージック・協会)が、2008年にその50年の歴史の中でも最も大規模で広範なカントリー・ミュージック・ファン像の調査を行い、今年その結果を発表しました。調査は7500人の個人と1850人の電話調査、そしてノースカロライナ州シャーロット、イリノイ州シカゴ、そしてアリゾナ州フェニックスの3箇所からの10のフォーカス・グループを対象とし、集計したものです。今回の調査を取り仕切ったのは、Leo Burnett CompanyとStarcom MediaVest Groupで、彼らの顧客リストには、コカ・コーラ、マクドナルド、任天堂、Visa、ウォルマート、ディスニーなど、そうそうたる企業が名を連ねています。アメリカではいち早く、CDからデジタル化へのシフトが進んで収益構造が変化してきており、その中で今後もカントリー・ミュージックが音楽業界のメインストリームで継続して発展していく為の情報を、カントリー業界関係者に提供する事が目的のビジネス目線の調査です。しかしこの調査、"今のカントリーってどんな音楽?”という問いに対しても、間接的ですが適切な興味深い答えになっているようにも思うので、その主な内容をご紹介します。
この調査の結果、18歳~54歳の成人のおよそ40%が”カントリー・ミュージック・ファン”と認められるとしています。その年齢以外でも、もちろんファンはいるでしょうが、収益の期待できる顧客として重要視すべき対象として定義しているのでしょう。そしてこのカントリー・ファンは、さらに2つのグループに分ける事が出来ます。一つは、カントリーに多額の費用を費やしてくれる8%のグループ「コア(Core)層」と、あまり出費はしないけれどもラジオやTVなどでカントリーを良く聴いている32%の大きなグループ「低出費層(Low-Funding")」です。これらカントリー・ミュージック・ファンは、統計的には少し白人が多く(ブラック・ピープルも8%いる)、小さな町の出身者がチョっとだけ多い。また、少し女性が多いものの、年齢層や収入的には、非カントリー・ファンとの違いはありません。特にコア層は、カントリー業界の収益を支える、重要な人たちです。
ファンの嗜好する傾向を見ると、カントリーは現実の生活や普遍的な真実との関連性、家族や仲間、バーベキュー、ビール、ダンスや楽しみ、片田舎の風景、そして持続性のある力や訴求力などによって人々に好まれています。今回の調査で全ての音楽ジャンルを、「意味⇔音楽」の横軸と「有徳⇔刺激」の縦軸の領域の中に知覚的にマッピングする事が試みられていますが、その中でカントリーは”意味”や”有徳”の側に位置付けられてます。一方ロックが、若かりし頃の自由だった日々への回想・回顧を誘ったり(オールド・ロックの場合)、”刺激”や音楽主体で知覚されるのとは対照的です。このことから、カントリーで新しいアーティストを売り込むときには、分かりやすく誠実な方法でファンにコンタクトする為に、人間的な結びつきやカントリーへの忠誠を演出するようなやり方でプレゼンテーションするのが大切である事が学び取れると、レポートは言っています。
コア層はさらに"カントリー嗜好派”と”音楽全般嗜好派”に分ける事が出来ます。
カントリー嗜好派は熱烈なカントリー・ファンで、女性が54%。既婚者で白人、小さな町の出身者が多いです。家庭にインターネットをつないでいる人は半分しかいませんが、職場や家以外では利用しているようです。彼らや、カントリー専門ラジオ局で新曲を耳にしています。そしてアルバム主体で自身で購入して聴いています。55パーセントの人が、曲単位で買うと、何か物足りなく感じると言っているくらいです。そして同じ位の比率の人たちが、アルバムを購入する事でお気に入りのアーティストをサポートする事が大切だと信じています。
一方、音楽全般嗜好派は、男性が55%。比較的若く、人種的には雑多、そして都会在住の人たちが多いです。彼らは流行に敏感で、ハイテクを好み、様々なジャンルの音楽に混じってカントリーも分け隔てなく愛しているのです。カントリー嗜好派よりはデジタル(ダウンロード)志向で、そして所有しているカントリーのCDやダウンロード・ファイルの数ではカントリー嗜好派を上回るコレクションを誇っているのが面白いです。カントリーラジオ局への依存度はカントリー嗜好派ほどではないものの、新曲を探す時には利用するようです。
コア層約8%の中では、カントリー嗜好派が5.1%、そして音楽嗜好派が2.6%という比率になっています。つまり、カントリー・ミュージックを購入して聴いている人の1/3は、他のジャンルと一緒にカントリーも聴いているということです。これは、現在のカントリーが既に、”限られた地域の人たちの音楽”ではなく、誰にでも楽しめる音楽になっている事が数字で表現されたと共に、我が国においてもポップ/ロック・ファンのライブラリーに、自然に加わっていける事を示唆しているように思います。
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