ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Mary Chapin Carpenter メアリー・チェイピン・カーペンター - The Age of Miracles

2010-07-19 | カントリー(女性)

★2020年リリースの「The Dirt and the Stars」を取り上げました★

 

 20年を超えるキャリアを持つメアリー・チェイピン・カーペンターMary Chapin Carpenterの通算11作目のオリジナル・アルバムです。90年代初頭、トラディショナル・カントリー全盛の中、フォーク~フォーク・ロックを基軸とした実に個性的なカントリー・サウンドを生み出してブレイク。当時は日本盤も発売されるくらい我が国でも注目されていました。そして何より素晴らしいのが、彼女自身の歌声。その幾分ハスキーなコントラルトボイスは、アーシーなリズム・ナンバーでは姉御風に力強く、一方、優しみ溢れるフォーキー・チューンでは詩情たっぷりに聴き手の心を包み込みます。20年たった現在でも、そんな彼女らしさはキープされ、ワン・アンド・オンリーの説得力を持ってるのがスゴイ。当時と比べると、チョとフォーク色が強まっているのかな。緻密に構成された音の重なり具合が美しく見事。プロデューサーはナッシュビルのスタジオ・ピアニストであるMatt Rollings。



 メアリーの魅力はサウンドだけでなく、日々生きる事に対する明快な視点、そしてそこに前向きな希望を見出す詩作にあると言われていて、本作でも、気ままな放浪生活の後にパートナーを見つけ、一つ屋根の下の生活に落ち着く、と言うテーマが多くの作品で歌われています。さらに、アーネスト・ヘミングウェイの奥さん("Mrs. Hemingway")から天安門広場("June 4, 1989")などのひと味違う題材を取り上げ、彼女ならでは前向きな視点を展開するのです。落ち着いた響きのスロー曲が多く収録されているのですが、“Last Night I put My Ring Back On”は濁った音色のギターがダウンホームなノリを生み出し、全盛期の一連のヒット・ソング("I Feel Lucky""Shut Up and Kiss Me")を想起させるリズム・ナンバーです。一番カントリー・フレイバー溢れるのが、シンプルな"I Was A Bird"。牧歌的なリズムとメアリーのナイーブな歌声に和みますよ。これイイですね。タイトル・ソングでは、木漏れ日のようなギターやワルツのリズムが穏やかにアルバムのテーマを総括し、そしてラストの"The Way I Feel"へ。メアリーらしいフォーク・ロック調のミディアムで、車で一人飛び出してきた主人公の、それでも数時間か、あるいは数日間に男性の元に戻るかも・・・という微妙な心持を歌い、アルバムを軽快に締めくくります。

 

 メアリーは1958年ニュージャージー州Princeton生まれ。父はLife誌の代表だった人で、幼少期には何と日本で過ごした事もあったとか。彼女は流行のポップ・ソングに親しむだけでなく、母が好きだったウディ・ガスリーやジュディ・コリンズのフォーク・レコードのおかげでカントリーやフォーク・ミュージックにも興味を持ちます。家にいるときはいつもギターを手放さず、父はそんな彼女をしばしばタレント・コンテストへ出演させました。ブラウン大学ではアメリカ文化を専攻。1986年までにはワシントン地区のアワードを獲得するくらいに、ローカルシーンでは知られる存在になっていました。1987年にコロンビアから「Hometown Girl」でデビュー。ヒットしなかっただけでなく、彼女がレコーディングした"Runaway Train"がロザンヌ・キャッシュRosanne Cashに横取りされ、ロザンヌ盤がNo.1になる始末。しかし、メアリーの個性をアメリカが放って置くはずがありませんでした。



 1990年「 Shooting Straight in the Dark」からの、ケイジャン風味が効いた"Down at the Twist and Shout"がメインストリームでブレイク。そして1992年の「Come On Come On」が500万枚のセールスを記録する大ヒットとなったのです。CMAアワードの女性ボーカル賞を1992~93年の2年連続で受賞と破竹の勢いでした。現在のテイラー・スウィフトやレディ・アンテベラムみたいな存在ですね。1992年のCMAアワードは日本のNHK-BSでも放送され、"I Feel Lucky"でのライル・ラベットやマーティ・ステュアートを従えたパフォーマンズは忘れられません。1994年の「Stones in the Road」でも好調を維持、ダウンホームなシングル"Shut Up and Kiss Me"が遂にNo.1を獲得し、さらにアルバムもグラミー賞のベスト・カントリー・アルバムを受賞するに到ったのです。メインストリームでの人気と言う意味ではこの時期がピークでしたが、カントリー・フィールドで彼女の唯一無二のサウンドに追従出来るアーティストは出現せず、その後も着実にヒット・アルバムをリリースし続け、現在までファンの心を捉え続けて来たのです。



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1 コメント

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素敵なジャケットですよね (TravelinSoldier)
2010-07-25 10:16:12
ベテランカントリー歌手の一人、Mary Chapin Carpenterの新作ですね。
私もCD店で見ました。
私のMary Chapin Carpenterとの出会いは他のどのアーティストとも違う、特別なものでした。
それは、「ジャケット」。
今現在でも唯一私が持っている彼女のCDが、クリスマスアルバムの「Come darkness, Come light」です。そのアルバムは、曲から入り込んだのではなく、ジャケットからでした。
何でかわかりませんが、そのクリスマスアルバムのジャケットのワークにとても魅了されて、毎日気になっていたところ、Amazonで曲の試聴をさせて頂き、独特なハスキーボイスが魅力的だったので購入に至ったわけです。
ジャケットから入り込んだアーティストということで、今でも私にとって特別な歌手の一人でもあります。

まだ彼女のオリジナルアルバムは一枚も持っていませんが、この新作も含めて昔のアルバムなども良作が揃っていることは確かのようです。
少しずつ買い込んでいきたいと思います。
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