ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

ブレット・ヤング Brett Young - Weekends Look a Little Different These Days

2021-06-12 | カントリー(男性)

 

★今年2023年の新作「Across The Sheets」を取り上げました

 

このブレット・ヤングは、先週紹介したチェイス・ライスフロリダ・ジョージア・ライン(FGL)サム・ハントらの゛Bro-Country゛ムーブメントの流れの中でデビューしてきたアーティストとみてよいと思いますが、ラップ~ヒップ・ホップの影響のあったFGL以下のアーティストとは違い、同じR&B風でも男気と優しみの同居したソウルフルな歌声を洗練のサウンドに乗せた、歌心あふれるポップ・ソングで際立つアーティストと言えるでしょう。なのでわが国でも馴染が良さそうで、洋楽雑誌で紹介されるほどそこそこに知られた存在になってるように思います。

 

2018年の「Ticket to L.A.」以来の待望の3作目。やたらと長いタイトルが印象的です。ただ、曲数が8曲と中途半端で、どうもしばらくすると新曲を追加したデラックス盤が出てきそうな感じですね。狭い厳密な意味でのカントリー・スタイルで歌う人ではありませんが、唯一無二の歌声には゛アメリカの良心゛と言いたいものが感じられ、これからのカントリーミュージックを背負う声として期待したくなります。

 

 

プロフィールです。1981年カリフォルニア州はアナハイム生まれで、現在40歳。少年期からギターで音楽に親しみ、高校生の頃には学校のボランディア活動でステージでプレイする経験もありましたが、それより熱心だったのは野球でした。キャルバリー・チャペル高校当時からエース・ピッチャーとして活躍しメジャーにスカウトされるくらいだったのです。しかし、大学時代に利き腕の骨の深刻なケガでその夢をあきらめざるをえなくなり、そのエネルギーを音楽に向けるようになります。当初は ギャヴィン・デグロウ Gavin DeGraw(後に「Ticket to L.A.」で共演)や多くのカントリー・スターに曲を書いていた Jeffrey Steeleの影響を受け、自身のソウル・ボイスを生かした音楽で自主製作盤をリリースしてきます。次第に知名度を上げ、コルビー・キャレイやケイティ・ペリーらのカリフォルニアでのライブでオープニング・アクトを務めるようになります。

 

「Country in California」

 

そうした頃、自身の音楽がカントリーと親和性があることからナッシュビルに移動。それを記念して「Country in California」というユニークな命名のEPをリリースしたところ、さっそくBig Machineの興味を引き、晴れてメジャー級レコーディング・アーティストとなりました。そして、2016年のデビュー曲 "Sleep Without You"がビルボード・カントリー・エアプレイで2位となったのを皮切りに、"In Case You Didn't Know"から本作にも収録された”Lady"まですべて1位、一方カントリー・シングルではすべてトップ10ヒットを続けるほどの人気者となったのです。アルバムの方は、デビュー作「Brett Young」がカントリーで2位、セカンド「Ticket to L.A.」では1位に輝いています(それぞれ"ビルボード200"では18位と15位)。こうしてパンデミック後、満を持しての3作目となるわけです。

 

 

やはり軸となるのは、すでにNo.1になっているスロー・ミディアムの“Lady”でしょう。“僕は君がママのようになることを望んでる/そして僕のように彼女を愛することを/完璧な忍耐を身近に見れるんだ/~/可愛い娘よ、彼女を見るんだ/そうすればどうやってレディになるか学ぶだろう/どうやってレディになるかをね゛という歌詞で対象としているのは大人の女性でなく、ブレットの2019年に授かったという娘さんがモデル。娘への愛と妻への敬意をこめた佳曲です。そしてこの家族愛が、アルバム・タイトルとなった"Weekends Look A Little Different These Days”につながるのです。“以前は夜遅くまで起きて、昼間はずっと寝ていたものさ/今では9時までに寝て、夜明け頃に起きてるんだ/~/今は神様のおかげですべてが変わったのさ/ここ最近の僕の週末は少し違っているようさ/~/クレイジーだね。この赤ん坊の髪の毛はくちゃくちゃさ/それにあちこちに散らかったおもちゃや子供服や哺乳瓶も゛さわやかなサウンドにブレットらしいエモーショナルな歌声が映えます。

 

 

アルバム全体の選曲についてブレットは語っています。゛僕は、子供を授かってなかったり、結婚したばかりでない人を遠ざけるつもりはなかったよ。自分の人生のステージがそうだからといって、童謡のレコードは出せないだろ。曲を書くにあたって僕の人生のステージに影響してることと同じくらい、皆のための何かをそこに含めることもしっかりと意識したよ゛ということで、最新シングルの"Not Yet"など、子供や家族とは関係ないテーマの作品もあるわけです。また、これまでNo.1ヒットを続けていることへのプレッシャーは感じてないとも言います。゛僕はそれが起こっているなんて信じられないし、あり得ないことだよね。音楽がどのように作用してファンがなぜ惹きつけれらるのかを理解しようとすることがプレッシャーになるんだよ゛なかなか複雑な心境なことが感じ取れます。スター歌手の宿命ですね・・・

 

 

ラストには三連のR&Bバラードを据えたりで、音楽的には従来からのキープ・コンセプトと思いますが、 “You Got Away With It”がちょっとグラスルーツを感じさせるハードなリズム・ナンバーなのが目新しいでしょうか。曲数が少ないので、曲想の広がりが感じにくいのが残念ですが、いよいよ新作アルバムをじっくりと、という時代ではなくなってるのを感じます。ブレットの言う通り、No1云々は置いといて、独自のエバーグリーンと言いたいスタイルでさらに一時代を築いてほしいと思います。



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