ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

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Dolly Parton ドリー・パートン - TRIOライブ映像 ~ DVD:Dolly Parton & Friends

2016-09-16 | カントリー(女性)
最近すっかりヴィンテージ寄りになってるようですが、ご容赦を。ドリー・パートン、リンダ・ロンシュタット、エミルー・ハリスの3人が1987年と1999年にリリースした共同制作アルバム、「Trio」「Trio Ⅱ」が、今年2016年、レア音源や未発表音源もまとめたCD3枚組「The Complete TRIO Collection」としてリイシュー・リリースされましたね。前者は400万枚、後者は100万枚を越える売り上げを当時記録し、共にグラミー賞も獲得と言う名盤ですから、カントリー・ファンには嬉しいニュースです。私、まだこのリイシュー盤は入手してないのですが、代わりと言っては何ですけれども、その3人によるライブ演奏が楽しめるDVDをご紹介したいと思います。



「Trio」は、70年代に一度企画が持ち上がりましたが、やはり当時全盛期で超多忙な3人のスケジュールが合わず、1987年にようやく日の目を見た、と言う経緯があります。しかし、その当時、ドリー・パートンがホストを務めていた音楽バラエティ番組”Dolly”の中で、3人の共演が実現していたのです。この”Dolly”、1976年から1977年にかけてワンクールだけ放映された番組で、毎回ゲストを招きドリーと共演するという番組でした。今回のDVDは、その番組からセレクトされた6エピソードが2枚に配されており、その目玉として、リンダ・ロンシュタットとエミルー・ハリスの2人が出演した回の映像が収録されているのです。その他の回では、ケニー・ロジャース、アン・マレー、ロニー・ミルザップらの当時のカントリー・スターばかりでなく、Marilyn McCoo&Billy Davis, Jrや、Rod McKuenなどの異ジャンルのアーティストも見られます。なんと、ボブ・ディランも出演する予定でしたが、最終的にテレビ・メディアを避けてキャンセルになったとのこと。なお、DVDはリージョン・フリーです。

それでは、DVDの冒頭に収録された、”Trio”の回の演奏内容を見ていきましょう。アチラの音楽番組なので、他の回ではもろ口パク演奏もよく見られるのですが、このTrioの回では全編ライブ演奏(或いはライブ歌唱)と思われ、見ごたえがあります。

(オープニング)
毎回、テーマソング"Love Is Like A Butterfly"が流れる中、ドリーがブランコに乗って上から下りてきます。

1、Silver Threads and Golden Needles
まず、ゲストにちなんだ曲をドリーが一人で歌います。これはリンダのカバーですね。そして終盤のコーラスで、おもむろに両脇からリンダ&エミルーが加わり、早速見事なコーラスを聴かせてくれます。

2、My Blue Ridge Mountain Boy
まず、ドリーを中心に3人が並んで座り、しばし会話(ただ、リンダは全編で全く話さない)。それぞれのいでたちは、ドリーがお得意の牧歌的で明るい衣装、頭に巻いたスカーフが時代です。エミルーはジーンズ姿で東海岸のフォーキーなイメージ、そしてリンダはシンプルなワンピースですがアパラチア娘のような色気があり、三者三様のさまが興味深いです。ここでまずはゲストをフィーチャーして、エミルーがギターを携えてドリーのナンバーを一人で歌います。

3、I Can't Help It (If I'm Still in Love with You)
お次はリンダの番(とドリーが言う)で、彼女も生ギターを弾きながら、ハンク・ウィリアムスのナンバーを、情感込めて歌います。コーラスにはエミルーが加わります。これは、リンダの代表アルバム、「Heart Like a Wheel」に収録されていますね。


Linda Ronstadt - Heart Like a Wheel


4、Applejack
皆が席に戻り、ドリーのこの歌に。ここでようやく3人によるコーラスが楽しめます。ドリーは歌詞に合わせて5弦バンジョーを弾き、間奏も含めて演奏にアーシーな華を添えます。

5、Do I Ever Cross Your Mind
一旦、ゲストとの共演は休憩。番組では毎回、スタジオを飛び出し、外で歌うロケ映像が入ります。ここがたいがい口パクになるのですが、今回は”前夜のナッシュビルのナイトクラブ”でのライブ演奏なのです。チェット・アトキンスと共演したドリー自作曲を、3人の男性コーラスと自身のガットギター1本で聴かせてくれます。歌声はもちろん、そのフィンガーピッキングの鋭さは、ドリーの高いミュージシャンシップを感じずにおれません。ここでユニークな演出が飛び出します。始めの演奏は(レコード盤の)45回転バージョンで、次に78回転の別バージョン!?が演奏されるのです。ドリーの高音の声帯模写が見事で、観客は大ウケ!フィンガーピッキングも高速で、面白いと同時に、改めてドリーの高度な芸に圧倒されます。このジョーク、CD世代では分からないんだろうな・・・

6、The Sweetest Gift
再び3人が並んでの演奏に。まずは、リンダの「Prisoner in Disguise」に収録のこのスローバラード曲。エミルーがギターを弾き、リンダとドリーがリード・ボーカルをとります。そして、3人の、掛け合いのようなコーラスの妙が素晴らしいです。


Linda Ronstadt - Prisoner in Disguise


7、Bury Me Under the Weeping Willow
ラストは、カントリー音楽の定番、カーター・ファミリーのナンバー。今度はドリーがガット・ギターで得意のフィンガーピッキングによる伴奏をつけます。この3人によるコーラスで聴ける名曲、とても贅沢に思います。

8、I Will Always Love You(クロージング)
毎回この曲で締めるのですが、クロージングのコメントと共に毎回歌っています。ここでは、ゲスト2人がいないとキョロキョロ探していると、既に客席でポップコーンを食べながら休憩済み。エミルーがポップコーンを舞台に投げたところで、この曲に入り、クロージングとなります。



演奏される楽曲にはトラディショナルな志向が強く、10年後の「Trio」のイメージにつながります。また、リンダ関係の曲目が多くフィーチャーされていますね。エミルーは1975年にブレイクしたばかりで、一方リンダは既に70年代を代表するポップ界のスターとして君臨していたはずだから、そのあたりの事情からかな。丁度この頃、私は洋楽を聴き始めたんですが、リンダ・ロンシュタットの名は、当時別格の人と言う印象を持っていたのを覚えています。ただ、この番組中では末の妹みたいなイメージ(実際はエミルーより年上)なんですけれど。

この”Dolly”は、結構視聴率は良かったそうですが、ワンクールしか放映されなかったのは、ドリー自身が番組に満足していなかった為のよう。自分のスタイルに合わない、例えばスタンダード・ナンバーのような曲を歌わなくてはいけなかったり、自分の事をよく知らないゲストとの共演が辛かった、とインタビューでも語っています。映像を見ている限り、いつも楽しくゲストを盛りたてているように見えるのですが、そういう内情があったようです。なお、80年代に入って、同名のTVショーのホストを再び務めています。


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