●2017年の「From A Room Vol.1 & 2」についてアップしました。
このクリス・ステイプルトン、昨年2015年のCMAアワードで、突然3部門(男性ボーカル、アルバム、そして新人部門)で堂々の受賞。ココで一般のファンにも広く知られ、チャートや売り上げが伸びていったという、稀有なプロセスで成功しました。続くグラミーも2部門(ソロパフォーマンスとアルバム部門)を獲ってしまった。この背景には、当然彼もソングライターとしての下積み時代があるのですが、その裏方時代の偉大な実績より得た、ソングライター業界から深い愛情の積み重ねが、業界人の投票で受賞が決まるCMAアワードでの栄光を引き寄せた、というのが実態のよう。
演奏は、いわゆるホンキートンク・スタイルと言われる、簡素なバンドサウンド。近年の常識では、確かに売れる音ではない。隙間スキスキでライブ感たっぷり。その中で南部らしく骨太でありながら、温かい肌触りも感じ取れる演奏ですね。そして、楽曲のスタイルがとても幅広く、伝統的なカントリー・シャッフルやブルーグラス、フォーキーなバラード、さらにはサザンロック風まで。とにかくこのアルバムの聴きどころは、変幻自在、様々なスタイルに実に柔軟に対応するクリスの歌唱にあるといえるでしょう。基本的にスモーキーなシワガレ声ですが、ジャンプやソウル曲でのエモーショナルな雄叫びと、ブルーグラス・ワルツや弾き語り曲での優しみ溢れる歌唱を、全く自然に歌いこなしています。同業者なら唸ってしまうんでしょうね。最初のシングルヒットとなった、"Nobody to Blame"は土埃を感じるクールなギターフレーズとドッシリとした南部のリズムに乗り、彼のワイドレンジな歌声が楽しめお薦め。この曲から数曲の、穏やかなアルバム中盤が個人的には特に好きです。
ケンタッキー出身。2001年にナッシュビルに出ますが、最初は出版社と契約し、コツコツと作曲の仕事をしていきます。初めての転機は2008年。ブルーグラス・グループ、SteelDriverを結成し、業界で注目を浴びることに。2009年に、インターナショナル・ブルーグラス・ミュージック・アソシエーションから年間アーティスト賞を授与され、翌年にはグラミーのブルーグラス3部門でノミネートを獲得するのです。しかし、クリスはその後グループを脱退、今度はthe Jompson Brothersというサザン・ロック・バンドを結成。しかしそのバンドも2013年までには消滅。そして、ソロキャリアへと進んでいきます。この「Traveller」の前に、1枚アルバムをレコーディングしたようですが、シングルが泣かず飛ばずだったことから、お蔵入りと言う憂き目を見た過去もあったようです。
カントリーアーティストへの主な楽曲提供は、ジョージ・ストレイト"Love's Gonna Make It Alright"、ケニー・チェズニー"Never Wanted Nothing More"、ルーク・ブライアン"Drink a Beer"、ダリアス・ラッカー"Come Back Song"。その他、ブラッド・ペイズリー、ダークス・ベントリー、ティム・マグロー、そしてなんと、ポップのアデル(アルバム「21」の"If It Hadn't Been For Love")に到るまで、これまで音楽界に錚々たる貢献をしてきたクリス・ステイプルトン。カントリー業界人たちの彼への期待は、近年停滞がささやかれ、音楽的にも一般のラジオ向けに画一化してしまっているメインストリーム・カントリー業界への、危機感の現れだったとも言えると思います。
早速コメント入れていただき、感謝感激です。
長い間ご心配おかけしてスミマセンでした。
重ね重ね、お気楽にやって行きたいので、見守ってやってください。
今後は、こちらも気楽に、お待ちすることといたします。