昨年2022年に颯爽と登場し、"Fall in Love"と"Rock and a Hard Place"の2曲が、カントリー・シングル・チャートの上位に居座り続けている新人ベイリー・ジマーマンによる、2022年リリースの8曲入りデビューEPです。"Fall in Love"はカントリー・エアプレイでナンバー1になり、一方の"Rock and a Hard Place"はホット・カントリーで最高2位、そしてエアプレイは今もトップ10で上昇中です。EPとしても、カントリー・アルバムで2位、そしてビルボード200で9位を獲得しています。ルックスもなかなかイケメンな、ロック・シンガーのようなしわがれ声を持つカントリーシンガーです。何となく、モーガン・ウォレンの謹慎中の隙を突いた、という感じがしています。
プロフィールです。出身はイリノイ州ルイビル。両親とも音楽ファンで、父親からはカントリーを、そして母親から80年代のハード・ロック(Hair Rockと呼ばれるポップ・メタル)を学んだそうです。おそらくベイリーの声は、そのロック系音楽から来たものでしょう。16才の頃から労働者として働き始め、食肉加工工場やガスパイプライン、そして道路工事などの職を転々としてきました。その空いた時間に自分の音楽をインターネット、ソーシャル・メディアを通じて発表するようになります。特にTikTokによるシェアでファンを獲得するようになります。
2021年に、まず"Never Comin' Home "が最初のシングルとなり、その年の終わりには "Small Town Crazy "がリリースされました。そして、2022年に"Fall in Love"が大ブレイク。この年の4月にメジャー、ワーナー・ミュージック・ナッシュビルと契約に至るのです。アメリカのSpotify等でセンセイションが先に起こり、その実績によってメジャー契約を果たしたという形です。その後も、"Where It Ends "と "Never Leave "がリリースされ、本EPへとつながっていきます。
ついつい比較したくなるモーガン・ウォレンに対しては、とても重厚で引きずるようなハスキー・ボイスが個性的で、"Fall in Love"や"Rock and a Hard Place"もそうですが、本EPもほとんどがスロー・ナンバーで埋められています。そして、そのミニマムのカントリー・バンドによるサウンドが実にオーソドックスで抑え目、フィドルやペダルスティールも時折聴かれ、トータルで他ではなかなか味わえない誠実な雰囲気を醸して歌声を引き立てています。静かな夜にじっくり浸れる作品集です。
゛岩と厳しい場所/赤ワインと過ち/君の涙が頬を伝う/僕がドアを出て行くとき/その時、僕は失ったんだ/オースティンの真夜中/もう、くたくただ/一体全体これは何なんだ?/ここで終わるのか、それとも壊れるのか?/岩と厳しい場所の間で゛ - "Rock and a Hard Place"
鮮やかに多くのスタイルを使い分ける(そして、ちょっと危なげな)モーガン・ウォレンに対して、ベイリーは見事にその好敵手となったわけですが、"Fall in Love"や"Rock and a Hard Place"はやはりフックの有るリフレインなど楽曲自体がとても良かったと思います。ただ、モーガンもすでに新たなヒット曲を立て続けにリリースしてきており、来週にはニュー・アルバム(36曲入ってるらしい)も日の目を見ます。ベイリーがさらに表現の幅を広げて、勢いを保ち続けてくれるか、注目していきたいです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます