ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Josh Turner ジョシュ・ターナー - Haywire

2010-03-04 | カントリー(男性)

 2007年の好盤「Everything Is Fine」以来、3年のブランクでようやくリリースされた、ジョシュ・ターナー待望の新作です。その長いブランクの理由の一つには体調の不良もあったようですが、そんな事は微塵も感じさせないくらい、アップテンポを中心にラインアップした意気の良いアルバムになっています。ジョシュと言えば、クロスオーバー化著しいメインストリーム・カントリーにあって、そのディープでグッドなバリトン・ボイスを駆使し、断固としてトラディショナルでプリミティブなカントリーらしいスタイルを守っている一人。そんな彼の信念はここでもしっかり貫かれ、ファンの期待するジョシュ像を高次元で形にして安心させてくれます。フィドル、バンジョー、そしてドブロらの生音が豊かに奏でられ、ソリッドなギター・サウンドでガッチリと締める。カントリー・ミュージックを長く愛してきた人間には、応えられない音世界です。



 リードシングルの“Why Don’t We Just Dance”で、ジョシュは再びカントリー・シングルチャート1位を獲得しました。彼のディープ・ボイスを引き立たせる、ダウンホームでありながらキャッチーなフックを持つメロディが何とも魅力的だなぁ・・と、ソングライターのクレジットを見ると、アノ男、Jonathan Singletonの名が。彼はここ最近”ヒット請負人”といえるくらいの活躍ぶりで、ゲイリー・アランGary AllanのWatching Airplanes、ビリー・カリントンBilly CurringtonのDon't、デビッド・ネイルDavid NailのRed Lightなど本物感溢れる佳曲を提供している人。彼自身もThe Grooveというバンドを率いてダン・ハフDann Huff(キース・アーバン、キャリー・アンダーウッドを手がける)のプロデュースによるシングルをリリースしています。今後も彼の動向は要チェックでしょう。Jonathan自身もアーシーなシワガレを持つせいか、結構ソウルっぽいネッチコさを持つメロディが身の上の人で、それがジョシュの声に上手くフィットしたのが成功の要因でしょう。

 アルバム中、よりソウル色の強いナンバーとして、Jonathanの作品でないですが、Lovin' You On My Mindが目を引きます。ストリングスをフィーチャーした70年~80年代フィラデルフィア・ソウルの雰囲気を持つミディアムで、ジョシュの声が実にセクシーに語りかけます。カントリー・レジェンド、ドン・ウィリアムスの1987年曲のカバー I Wouldn't Be A Manもソウルフルな味付け。このスタイル、すっかりジョシュの十八番ですね。アメリカの女性ファンは、この声についつい引き付けられるんでしょう。我が国の女性カントリー・ファンの皆様、いかがでしょうか??

  ブルーグラス・スタイルのアップテンポ、Your SmileとAs Fast As I Couldは、トラディショナリストであるジョシュの面目躍如。カントリー~ブルーグラスの様式美に則ったスタイルで、さらにメロディがキャッチーで親しみやすいと思います。このアルバム、カントリー・バラードが意外に少なめなので、自身の息子達に捧げたという1曲、I'll Be Backが貴重。「君の涙を拭いてあげる。紙飛行機を飛ばしてあげるよ。モンスターが怖ければ追っ払ってあげる。~いつでも、どんな事でも、そしてどこでも、僕はそばにいるよ」とてもシンプルですが、このストレートな家族愛の表現がカントリーの大切な機能の一つなのです。


 終盤、ナショナル・ギターとエレクトリック・ギターのユニゾンによるテーマ・フレーズが印象的なファンキー・チューンAll Over Meや、ノヴェルティな"Eye Candy"らで盛り上げて、ラストは深い信仰心を持つ彼らしくゴスペル・バラードThe Answerで締めます。「疑問を感じる事があれば、進むべき道筋が必要。永遠に貴方を支える腕。他に替わるものなどないのだから、これ以上探す必要もない。愛する人、理解する人にとって、ジーザスこそが答えなんだ」クワイアも加わって厳かに、このトラディショナルなカントリー・アルバムにふさわしいエンディングを演出します。



 このアルバムには、4曲多いデラックス版Deluxe Editionもリリースされていて、アウトテイク2曲(カントリー・バラードと、アップテンポのホンキー・トンク・チューン。やはり、チョッと地味目)と、Long Black Train、Your Manのライブ・バージョンが収録されています。名曲Long Black Trainでは観客が大合唱で盛り上がり、「その長く黒い列車に乗っちゃダメだよ。悪魔が運転しているんだから」と、現代社会の安易な誘惑に対する戒めを歌うこの曲の影響力の大きさがヒシヒシと感じられます。

 ●ジョシュ・ターナーのMySpaceサイトはコチラ



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1 コメント

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Josh Turner/Haywire (Ryu)
2010-03-30 15:34:00
早速、購入しました。
青い瞳に爽やかな笑顔。
なんと言っても魅力的なバリトン・ボイス。
男の僕でもついつい引き込まれてしまいます。

「I wouldn't Be A Man」
「The Answer」等の数少ないバラードは
そのどれもがお気に入り。
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