Mark Chesnutt(マーク・チェスナット) 「Rollin' with the Flow」

　昨年のカントリー・ゴールドで来日してくれたマーク・チェスナットが気持ち良い、そしてテキサス風味も感じさせてくれるニュー・アルバム「Rollin' with the Flow」をリリースしています。オリジナル作としては、１２作目。Too Country(カントリーっぽすぎる）モノが疎まれているアメリカのメインストリーム・カントリー・シーンにあって、カントリー・ミュージックとして守るべきホンキー・トンク・スタイルをこうしてオーソドックスな形で守りながら着実にアルバムをリリースし続けるマークは、やはりグレイトな存在です。そこには、挑戦的な試みや余計な色気は見られません。マーク・ファンが聴きたいマークの音楽を期待どうりに、もちろん時代に合わせた調味料を適度にまぶして今の音楽としての必然性も持たせつつ、聴かせてくれるのです。

　

　オープニングの"Things to Do in Wichita"の心地よさで期待はいやがおうにも膨らみます。カントリー・スウィングって言いたいくらいにストレート・カントリー・サウンドが軽いジャジーなリズムでノッテいます。このアルバム、バックはEddie Bayers(ドラム)、Paul Franklin(スティール)、Brent Mason(ギター)らプレイヤーズの面々もサポートしているくらいですから、サウンドのクオリティは申し分ありません。マークのボーカルも気持ちよさげで、調子の良さがわかります。そして続く２曲がこのアルバムのハイライトといえる、スロー・ナンバー。"When You Love Her Like Crazy"は、ソングライターのMark Nesler（９８年にプレーンなアルバム「I'm Just That Way」をリリース)に、奥さんの Tracieについての曲にしたいからとタイトルの変更まで依頼した、気合の入ったナンバー。そして昨年にシングルとしてリリース済みの"Rollin' With the Flow"。Mark曰く、「チャーリー・リッチの歌は、ショーで沢山歌ったけど、この曲は歌った事はなかった。しばらくは子供を育てるとか、結婚するとか、経験していない事をテーマにしたものは歌う気にならなかったからね」過去の３枚のアルバム用に準備されていましたが、今回ようやくレコーディングし日の目を見た曲です。現代ホンキー・トンク・サウンドとストリングスの組み合わせが実にストレス・フリーな世界を創り、マークの歌声もノビノビしていて、聴いてると夢心地になります。２１世紀のナッシュビル・サウンド。"When I Get This To You"などは、レトロなど真ん中のナッシュビル・サウンド・バラードですしね。"When You Love Her Like Crazy""Rollin' With the Flow"は、最近アップされたCMT.comのアンプラグド・ライブでも演奏しており、マークの素晴らしい生歌を堪能できます(カントリー・ゴールドの会場、熊本アスペクタはチョッと広すぎて、彼らしさが出にくかったとの声も・・・)。

　

　アップテンポ曲でも快調ぶりを見せており、ホンキー・トンク・カントリーらしいタイトルのニュー・シングル"Come On In the Whiskey's Fine"は、タイトルどうり酒場の、そしてテキサスの塩っ辛い雰囲気がタップリの、コクのあるミディアム曲。終盤で盛り上げてくれる"Long Way to Go"。これは"Too Cold At Home"でのデビュー・ヒット後、長年ロード・ツアーに明け暮れてきた彼自身を歌った歌。腰の強いリズムとカントリー・ギターをバックに、マークが勢いのあるカントリー・ボイスを聴かせ、彼がまだまだこれからも注目に値する存在であリ続ける事を感じさせてくれます。そしてラストはクラシックなカントリー・バラード"She Never Got Me Over You"で美しく締めてくれるのです。なんとこの曲、Keith Whitleyが生前最後に書いた曲で、共作のHank Cochranが今回のアルバムの為にとマークに提供した作品。心して聴いてください。