★セカンド・アルバム「Never Enough」を取り上げました★
MCAレーベルからのデビュー曲"Pretty Heart"が、ビルボードのカントリー・エアプレイで1位となったパーカー・マッカラムが、メジャー・アーティストとしてのデビュー・アルバムをリリースしました。先行してリリースされたEP「Hollywood Gold」とのダブりはその"Pretty Heart"だけで、他の9曲はシングル "To Be Loved by You"などの新曲です。以前そのEPを取り上げた記事でテキサス州出身であるプロフィールをご紹介しましたが、本作ではそのテキサスの多くの重要アーティストがサポートしていることがまず目を引きます。
まず、プロデューサーのジョン・ランダル(「The Mafa Tapes」)がテキサス人です。そして、相当前にご紹介したテキサス・カントリーの大物、ランディ・ロジャースが3曲でパーカーと共作しており、その内の1曲"Dallas"では、もう一人のテキサスの雄、ウェイド・ボウェンも加わっているのです。ランディとウェイドの二人は最近共作アルバム「Hold My Beer, Vol.2」とタイトル曲をテキサスでヒットさせています。さらに"Dallas"では、こちらもテキサス出身で、一時テイラー・スウィフトとライバル視もされていたダニエル・ブラッドベリーがコーラスでデュエットしているという話題もあります。
さらに、あのサザン・ロック・バンド、38スペシャルのサウンドをイメージして製作したという"Falling Apart"では、もっと大物のテキサス人、と言うよりメインストリーム界の中心人物ミランダ・ランバートもソングライティングに参加しました。パーカー曰く、゛僕の世代のドリー・パートン゛であるミランダはこの曲に重要なアドバイスをしたそうです。もともとパーカーの書いたメロディは゛僕はただ他の誰かを必要としたのかもしれない゛という歌詞でしたがミランダは好まず、゛君は他の誰かと一緒のほうが良いかもしれない゛と変えるように提案したのです。パーカーは゛この歌の中で本当にクールなとこだと思ったよ゛とミランダのセンスに脱帽しています。
テキサス出身ではありませんが、もう一人メインストリーム界のスター、フロリダ・ジョージア・ラインのブライアン・ケリーも、ボールルーム調ピアノが印象的な、ラストのカントリー・ソング"Never Loved You at All"にクレジットされています。パーカーは曲のアイデアを思案しながらケリーに家に向かったのですが、゛ケリー達は僕を立たせ、ほぼ即興のように歌わせたんだ。とりとめない事を歌っている間、ケリー達はそれらを書き留めたんだよ゛というユニークな経緯で生まれた曲です。
このアルバムで聴かれる音楽は、アメリカン・ロックを下敷きにしたいわゆるコンテンポラリー・カントリーになるのですが、ギター・サウンドが実にシャープで、よくあるポップ・カントリーの音にはない硬質さです。その一方で、穏やかなシャッフルの"Heart Like Mine"や先の"Never Loved You at All"などのトラディショナルなナンバーを合間に入れるという、やはりテキサス・カントリーのマナーが感じられます。パーカーの声は時に煽情的だったり、また時に陰影を湛えるテナー・ボイスで、予定調和に留まる事はありません。このコロナ・パンデミックの困難な状況を見つめた、アコースティックな"Rest of My Life"で聴かせる憂いを帯びた歌声は彼ならではと思います。
あのグランド・オール・オープリーを放送するWSM局が、今年7月の「Country Rising Sound」の注目アーティストとしてパーカーをフィーチャーしており、次の世代を担う人としての期待も高まっているようです。ポップな親しみや今人気のR&Bのリズムも排除された゛塩っ辛い゛本作、ビルボード・カントリー・アルバムで初登場6位と上々のデビューで、今後ますます期待したいところです。
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