オルタナティブ・カントリー界のおしどり夫婦、バディ&ジュリィ・ミラーの、連名では2作目となるアルバムです。各々のキャリアは長いので、まだ2枚目というのは意外ですね。その今作、バディ・ミラーのアーシーなギターも冴え渡り、メインストリーム・カントリーとは一味も二味も違う、アメリカン・ルーツ・ミュージックの香りをふんだんに漂わせたクリエイティブでソウルフルな作品で聴きものですよ。そのカバーするカテゴリーは、カントリーやフォーク・ミュージックに留まらず、ストリング・バンド風やブルース、ダウンホームなロックンロールなど多彩。また要所に美しいモダンなバラードも配するなど、この夫婦の引き出しの多さには感服します。しかもそれが、一貫してトラディショナルでソウルネスに溢れたトーンでシッカリまとめられているところがナイス。
"Ellis County"のイントロで聴かれる、アパラチアを思い起こさせる枯れた味わいのフィドルと、簡素で力強いバンド・サポートでミラー夫婦の世界に一気に引き寄せられます。 バディー・ミラーによるロンサム感タップリのラフなテナー・ボイスはパッションに溢れ、古いフォーク・バラッドを思い起こさせるメロディにのって魅力的に響きます。二人のハーモニーの混じり具合も実にソウルフルな、必殺のカントリー・バラードです。このアルバム、やはりバラード系に注目作が多いですね。タイトル曲の"Chalk"もバディがメインのナイスなスロー、ピアノとアコースティック・ギターのミックスが独特の浮遊感を醸し出します。一方、ジュリィ・ミラーも、華やかな甘さと奥南部の泥臭さが同居した、唯一無二のカントリー・ボーカルを聴かせてくれます。ジャジーでスモーキーな"A Long, Long Time"、アンティークなギター・サウンドがディープな雰囲気を醸し出す"Everytime We Say Goodbye"。そして中でも聴きものが、”耽美的”という言葉を使いたくなるほど繊細な音世界が繰り広げられる"Don't Say Goodbye"。ピアノをフィーチャーしたその曲調はなかなかにモダンで、いずれメインストリームでカバーされるかも。それでもこのアルバムのカラーにシッカリ収まるのは、夫婦の自宅スタジオでレコーディングされたという乾いた音作りの技(ピアノの響きがホント絶品!)と、そして何よりジュリィの歌声の個性なのです。なおこの曲ではPatty Griffinが客演しています。
一方リスム・ナンバーでは、バディー・ミラーのギターをフィーチャした、かなりブルージーに迫っている作品が強い。今年のグラミー賞を総なめにしたアリソン・クラウス&ロバート・プラントの「Raising Sand」のサウンドを、もっと泥臭くパロディーしたかのようなロックン・ロール"Gasoline and Matches"で、アリソン&ロバート以上にラフな歌声をキメてみせます。そしてナント、"What You Gonna Do Leroy"ではそのロバート・プラントが参加。カントリー・レジェンドMel Tillisのペンによるフォーク曲を、マディ・ウォータースMuddy Waters的ブルース(エレクトリックなバンド・ブルースを完成させる直前、"Hoochie Coochie Man"とかより前のね)とストリング・バンド風アレンジをコンビして料理されたこの作品で、バディーの荒削りな歌声とは対照的な、ロバートらしい甘く中性的でクールな歌声を聴かせてくれています。ロバート様、すっかりオルタナ・カントリーの人になったのかな?"Memphis Jane"はよりブルース色が強くなる、野太い(ズバリ、マディの"Rolling Stone"っぽい)ギター・フレーズが強烈なオリジナルのブルース・チューン。ミラー夫妻の粘りあるハーモニーと、スリリングなギター・ソロが熱い。 ラスト曲では、お約束のエミルー・ハリスがデュエット。レオン・ペインのクラシック・カントリーを、一筋縄ではすまないコクのあるアレンジで聴かせてアルバムを締めくくります。
「Down the Old Plank Road」でチーフタンズと共演したミラー夫妻
バディ・ミラーのキャリアは1960年代の前半までさかのぼります。高校生の頃はブルーグラス・バンドのベーシストでした。アコースティック・ギター1本でアメリカのあちこちを旅して廻った後、ニューヨークにたどり着きます。彼は自身のバンドを持ちますが、そのボーカリストだったのがショウン・コルビン Shawn Colvinだったそう。また、現在はカントリー・フィールドの重鎮ソングライターでありカントリー・ロックの旗手でもあるジム・ローダーデイルJim Lauderdaleとの交流が始まったのもこの時期。バディは最終的にナッシュビルに移動、そのジムやHeather Mylesの初期作などでセッション・ギタリスト&ボーカリストとして活動を開始しました。そんな中で1995年、マイナーのHightoneレーベルよりファースト・アルバム「Your Love and Other Lies」をリリース、見事にメディアからは無視されてしまいます。この時期、バディはエミルー・ハリスのバンドのギタリストを務めており、1998年のライブ盤「Spyboy」で彼の素晴らしいギターがフィーチャーされ話題に。エミルーは1997年のバディのセカンド「Poison Love」でハーモニーを聴かせています。2001年には、妻ジュリィとの初のデュエット・アルバム「Buddy & Julie Miller 」をリリース。2004年には、ソロでのゴルペル・アルバム「Universal United House of Prayer」で高い評価を得ています。
ミラー夫妻は、アーティストとしてはルーツ志向のオルタナ・カントリーをプレイしてますが、ソングライターとしてはメインストリームのアーティストにも一目置かれており、ディキシー・チックスやリー・アン・ウーマックが彼らの作品を取り上げていました。特にリー・アンの"Don't Tell Me"や"I Know Why the River Runs"は心に残っています。なお、この5月20日に発表されたThe 2009 Americana Music Association Honors and Awardsのノミネーションで、バディー・ミラーはジュリィとの連名も含めて、5つのノミネートを獲得、もちろんアルバムとして本作もノミネートされました。
●バディ&ジュリィ・ミラーのMySpaceサイトはコチラ●
"Ellis County"のイントロで聴かれる、アパラチアを思い起こさせる枯れた味わいのフィドルと、簡素で力強いバンド・サポートでミラー夫婦の世界に一気に引き寄せられます。 バディー・ミラーによるロンサム感タップリのラフなテナー・ボイスはパッションに溢れ、古いフォーク・バラッドを思い起こさせるメロディにのって魅力的に響きます。二人のハーモニーの混じり具合も実にソウルフルな、必殺のカントリー・バラードです。このアルバム、やはりバラード系に注目作が多いですね。タイトル曲の"Chalk"もバディがメインのナイスなスロー、ピアノとアコースティック・ギターのミックスが独特の浮遊感を醸し出します。一方、ジュリィ・ミラーも、華やかな甘さと奥南部の泥臭さが同居した、唯一無二のカントリー・ボーカルを聴かせてくれます。ジャジーでスモーキーな"A Long, Long Time"、アンティークなギター・サウンドがディープな雰囲気を醸し出す"Everytime We Say Goodbye"。そして中でも聴きものが、”耽美的”という言葉を使いたくなるほど繊細な音世界が繰り広げられる"Don't Say Goodbye"。ピアノをフィーチャーしたその曲調はなかなかにモダンで、いずれメインストリームでカバーされるかも。それでもこのアルバムのカラーにシッカリ収まるのは、夫婦の自宅スタジオでレコーディングされたという乾いた音作りの技(ピアノの響きがホント絶品!)と、そして何よりジュリィの歌声の個性なのです。なおこの曲ではPatty Griffinが客演しています。
一方リスム・ナンバーでは、バディー・ミラーのギターをフィーチャした、かなりブルージーに迫っている作品が強い。今年のグラミー賞を総なめにしたアリソン・クラウス&ロバート・プラントの「Raising Sand」のサウンドを、もっと泥臭くパロディーしたかのようなロックン・ロール"Gasoline and Matches"で、アリソン&ロバート以上にラフな歌声をキメてみせます。そしてナント、"What You Gonna Do Leroy"ではそのロバート・プラントが参加。カントリー・レジェンドMel Tillisのペンによるフォーク曲を、マディ・ウォータースMuddy Waters的ブルース(エレクトリックなバンド・ブルースを完成させる直前、"Hoochie Coochie Man"とかより前のね)とストリング・バンド風アレンジをコンビして料理されたこの作品で、バディーの荒削りな歌声とは対照的な、ロバートらしい甘く中性的でクールな歌声を聴かせてくれています。ロバート様、すっかりオルタナ・カントリーの人になったのかな?"Memphis Jane"はよりブルース色が強くなる、野太い(ズバリ、マディの"Rolling Stone"っぽい)ギター・フレーズが強烈なオリジナルのブルース・チューン。ミラー夫妻の粘りあるハーモニーと、スリリングなギター・ソロが熱い。 ラスト曲では、お約束のエミルー・ハリスがデュエット。レオン・ペインのクラシック・カントリーを、一筋縄ではすまないコクのあるアレンジで聴かせてアルバムを締めくくります。
「Down the Old Plank Road」でチーフタンズと共演したミラー夫妻
バディ・ミラーのキャリアは1960年代の前半までさかのぼります。高校生の頃はブルーグラス・バンドのベーシストでした。アコースティック・ギター1本でアメリカのあちこちを旅して廻った後、ニューヨークにたどり着きます。彼は自身のバンドを持ちますが、そのボーカリストだったのがショウン・コルビン Shawn Colvinだったそう。また、現在はカントリー・フィールドの重鎮ソングライターでありカントリー・ロックの旗手でもあるジム・ローダーデイルJim Lauderdaleとの交流が始まったのもこの時期。バディは最終的にナッシュビルに移動、そのジムやHeather Mylesの初期作などでセッション・ギタリスト&ボーカリストとして活動を開始しました。そんな中で1995年、マイナーのHightoneレーベルよりファースト・アルバム「Your Love and Other Lies」をリリース、見事にメディアからは無視されてしまいます。この時期、バディはエミルー・ハリスのバンドのギタリストを務めており、1998年のライブ盤「Spyboy」で彼の素晴らしいギターがフィーチャーされ話題に。エミルーは1997年のバディのセカンド「Poison Love」でハーモニーを聴かせています。2001年には、妻ジュリィとの初のデュエット・アルバム「Buddy & Julie Miller 」をリリース。2004年には、ソロでのゴルペル・アルバム「Universal United House of Prayer」で高い評価を得ています。
ミラー夫妻は、アーティストとしてはルーツ志向のオルタナ・カントリーをプレイしてますが、ソングライターとしてはメインストリームのアーティストにも一目置かれており、ディキシー・チックスやリー・アン・ウーマックが彼らの作品を取り上げていました。特にリー・アンの"Don't Tell Me"や"I Know Why the River Runs"は心に残っています。なお、この5月20日に発表されたThe 2009 Americana Music Association Honors and Awardsのノミネーションで、バディー・ミラーはジュリィとの連名も含めて、5つのノミネートを獲得、もちろんアルバムとして本作もノミネートされました。
●バディ&ジュリィ・ミラーのMySpaceサイトはコチラ●
コメントを有難うございます。ロック系のブログをされてる方なら、この夫婦は魅力的でしょうね。このブログは、メインストリーム・カントリーがメインですが、オルタナ系など売れ線以外も取り上げるようにしています。
ビートルズは最近リマスターが話題なんですよね。私の持ってるアビーロードは、子供の頃塾の先生にもらった、日本盤の初盤LPで (だと思います)古いです。CDに焼いていていますが、最近は聴いていないなぁ。
今後ともよろしくお願いいたします。
最近はJuneをよく聴いてます
どの曲も良いし、ギターも他の楽器もいい音してます
これから長い間、愛聴盤になりそうです
またお邪魔します