ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

マルティナ・マクブライド(Martina McBride)  Emotion

2007-05-27 | Martina McBride マルティナ・マクブライド レビューまとめ

 Martinaの1999年の作品。思い出もあるので、取り上げさせていただきます。と言うのは、コレが出た頃の、カントリーに精通されていた知人の言葉。。。

 「このジャケットは何!?こんな音楽、カントリーじゃない。前の(Evolution)は良かったのに。最近のカントリーは何かおかしい」

 ジャケットには、クリアなブルーの背景に、洗練された都会的な雰囲気のMartinaが。そして、映画「Runaway Bride」のサントラにも採用された、とてもプレーンなメロディと歌唱の"I love you"がファースト・シングルで、ポップ・シーンへのクロスオーバーの意図がアリアリなのは感じました。この"I love you"、私も今だにビミョーです。この時期、Shania Twainが圧倒的な人気を誇っていて、Faith Hillがソウルフルな声になってポップ・シーンにブレイクしていました。それまでの90年代は、80年代末に出てきた多くのネオ-トラディショナリストによってプリミティブなカントリーらしいホンキー・トンク・サウンドが復活し、Garth Brooks(余談ですが、Martinaの旦那さんはGarthのproduction manager)を筆頭に展開されていた良い時代だったのですが、その終盤になってだんだんポップなサウンド嗜好 (時に"産業ロック"的な、さわやかに歪んだエレキ・ギターサウンドが聴かれたり)に変わって行き、カントリー・ファンの間では色々議論された時期でした。2000年には、George StraitとAlan Jacksonによる"Murder On Music Row"という、ポップ・カントリーへのプロテストソングが話題になる程。そこには、フィドルやスティールが、ロック・ギターに取って代わられた云々の歌詞が歌われていました。日本でも、「カントリーらしさとは?」という議論が一部で過熱しました。

  しかし私、この「Emotion」。好きな曲は多いです。確かに、前作「Evolution」での"A Broken Wing"や"Be that way"(カッコイイ!)などのようなアメリカ南部を感じさせるダウン・トゥ・アースな曲調とアレンジとは違っています。"I love you"については彼女も当時のインタビューで、「自分にとってこれまでと違うもので、歌っている間は気持ちよく感じられた」とコメントしています。でも、愛の大切さを歌う"Love is the only house"(~big enough for all the pain in the world !)のように、彼女の歌にこめる魂と心意気は、全体を聴くとそれまでとは変わっていません。"There you are"で聴かれるソフトな歌唱も、彼女の表現力の成長と見るべきでしょう。むしろサウンド的には、前作「Evolution」の方がオーバーダビングとかサウンド処理が多く、この「Emotion」の方が小さなバンドによるフレッシュで心のこもったサウンドと感じられます。過去のロック等のあの頃のサウンドみたい、というのが特定しにくい、つまり新しいサウンドなのです。

  この作品が出た当時、ディレクTVでアメリカのCMT(Country Music TV)を放送してて、Martinaのスペシャルなアコースティック・ライブを見る事ができました。曲目は"I ain't goin' nowhere""Anything and Everything""From the ashes""Wild Angels""I love you"。野外での大きな木の下で本当に美しいシチュエイションでの素晴らしい演奏でした。"I ain't goin' nowhere"(良い曲ですね)のマンドリンを伴った気持ちの良いアンサンブルも見事に表現されていました。彼女およびスタッフの、そのサウンドに対する自信の現れでしょう。Martinaのファッションは、胸の谷間もあらわなShania風のタンクトップで、結構奮発されております。これは貴重!?

 長くカントリーを聴かれていたホンキー・トンクがお好きな方に聞いた話では、70年代あたりはポップな傾向が強く、聴きたいものが少なかったそうです。長い目で見ると、カントリーはスタイル的には伝統的でプリミティブなサウンドとクロスオーバーなポップ・サウンドの間で振幅を繰り返しており、この時期もその歴史の延長上にあると言う事でしょう。

 



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1 コメント

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Re:はじめまして・・・ (bigbird307)
2007-05-31 22:44:54
夜の騎士さん、今晩は。

JoshのライブCD情報は、アメリカのHPでたまたま見つけて、面白い情報と思い、追記したまでです。
"Cracker Barrel Old Country Store restaurants"でexclusivelyに売られる為にレコーディングされた、と記載がありました。Garth brooksのDVDがWalmartで製作されているのと同じようなイメージを持ちまして、amazon.co.jpなどで新品で買えないのかな、と思ったのです。

今後ともよろしくお願いいたします。

bigbird307@mail.goo.ne.jp
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