「イスラエルがすごい」
熊谷徹著、新潮新書、2018年11月
NHKで8年間記者として働いた後、1990年からドイツでフリージャーナリストとして活動する著者ならではの視点で、
主に近年のイスラエルについてレポートした書籍。
イスラエルでは新型コロナウイルスのワクチン接種が進み新規感染者数が激減し、
屋外でのマスク着用が不要になった、というニュースを見て本書を思い出し、
読み返してみました。
イスラエルには
「テロや戦争が絶えない危険な国家」
「ハイテク国家」
両方の顔がありますが、本書では後者を中心に述べられており、
輸送機器やセキュリティの研究開発状況が具体的に記されています。
ただ「テロや戦争が絶えない危険な国家」であるからこそ軍事技術が発展し、
そこから輸送機器、セキュリティなどの技術も産まれてきて「ハイテク国家」になったともいえます。
事実、第2章「イノベーション大国への道」では、
イスラエル国防軍で電子諜報を担当する「8200部隊」の出身者が創業したベンチャー企業が
約1000社にのぼると推定とあります。
著者から見たイスラエル人の思考:
「失敗することを恐れてはならない。失敗は、むしろ良いことだ」
「他の国を頼りにしてはならない。自分の命は武力によって自分で守るしかない」
「相手を質問攻めにして、納得するまで相手を信用しない」
第3章ではイスラエルとドイツの関係、
第4章ではイスラエルと中国の関係
について、第二次世界大戦後を中心に触れています。
両国とも緊張関係の時期もありましたが、いまは技術・経済優先で関係を強化しているそうです。
アメリカとの関係、パレスチナをはじめとするアラブ諸国との関係についても数ページずつ触れています。
イスラエルの全体像を知るには、こちらの関係の方が重要に思えますが、
本書は「ハイテク国家」の方に焦点を当てたということでしょう。
最後の第5章はイスラエルと日本の関係。
日本がイスラエルとの関係構築に消極的な理由として
1.日本企業の「自社開発・調達主義」
2.アラブ産油国に対する忖度
3.治安に関する先入観
を挙げています。
自分もまあそうかなと思います。
3は先入観というより事実ではないでしょうか?
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