つづきのつづきです~~
そんなある日のことです。水びたし事件がおきました。
私は中身をいっぱいにした水とうのせんを、しっかり閉めずに、床に置きっぱなしにしていました。
その水とうのヒモに、ミルの後ろ足が引かっかってしまい、ミルは引かっかって取れない水とうを引きずって、その辺りをぐるぐるまわり、中身がどんどんもれてあたりは水びたしになったのです。
私の大切な本もシールも、床に置きっぱなしだったので、ぬれてしまいました。
私は「ああっ、全部ミルが水びたしにしたー!」と大声をあげました。
あげながら、いらだつような気持ちがムクムクとわいてきて、とんでもないことをしてしまいました。
ミルの後ろ足に引っかかった水とうを、乱暴に取り上げて、ミルにむかってなげてしまったのです。
かたい水とうは、おばあさんになったミルの体にあたってしまい、ミルは「ぎゃっ」と声をあげて、うずくまりました。
なぜそんな事をしてしまったのか、私はじぶんのしたことに、おどろいて怖くなりました。
もう、なにもかも、ぐちゃぐちゃです。
ミルの体も、見ればぬれていました。
さわぎを聞いて、お母さんがやってきて「ああ、もう、だめじゃない。」と言ってタオルをたくさん持ってきて、ミルと床とをきれいにしてくれました。本とシールはベランダに出して乾かしました。
「ミル、だいじょうぶかな?」私がお母さんに言うと、お母さんは「だいじょうぶそうだね。」とだけ言いました。
私はミルに「ごめんね。」と言ったけど、どうにもならない気持ちでいっぱいでした。
私にできることは、なにもありません。
あの時を、やり直したいと何度も思います。
悲しい、ミルとの思い出です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/10/7e/13fee12ea6f83d93082424e7d25c7c96.jpg)
それから、しばらくたったある日、ミルが眠っているところへ、私は画用紙をもって、そっとしのびよりました。
そして、眠っているミルのとなりで画用紙に色鉛筆で、足の丈夫なミルの姿をかきました。
りっぱな後ろ足になったミルです。早く走ることのできるミルです。
ジャンプもできるので、高いところにも登れます。
眠っているミルを、そんなミルにしようと思ったのです。
後ろ足の動かないミルに、おもいっきり走ったり、ジャンプしたりしてほしいと思ったのです。
私のかいたミルは、広い草原をいきおいよく走って、木によじ登ったり、高いところへジャンプしたり、思いのままです。
どこまでも行けます。
ミルは楽しそうにかけ回ります。とくいげにジャンプします。
私も楽しくて、後をおいかけます。だけどミルに追いつけません。
「早いなあ、ミルは。」わたしが言うと、ミルは「ニャーー!」と大きくないて私を呼びます。
こっちだよって、早くきてよって、もっと遊ぼうよって、遠くまで行こうよって。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/32/0ef43e1d33d739f574e0575bfb103196.jpg)
本物のミルが、もそっと動いて、うすく目を開けて私を見ました。
私はやさしくミルの頭をなでました。
ミルはゴロゴロのどを鳴らしたので、少し私は安心しました。
ゴロゴロは幸せの音だって、お母さんが言っていたからです。
・つ・づ・く・