阿武山(あぶさん)と栗本軒貞国の狂歌とサンフレ昔話

コロナ禍は去りぬいやまだ言ひ合ふを
ホッホッ笑ふアオバズクかも

by小林じゃ

12月12日広島県立図書館「大野町誌」など

2018-12-12 20:00:49 | 図書館

 今日はメシ当番の都合でいつもより芸備線2本、40分ほど持ち時間が少ない。まずは郷土の書架から「大野町誌」を読む。巻末の年表を眺めると、阿武山関連で弘化二年の災害の記述があった。

「八月六日から大雨、大洪水、中山山くずれ」(豊助日録)

中山は道ゆきぶりに出てくる中山だろうか。この年表には文化年間や他にも水害の記録がある。また、この弘化二年は大竹から呉まで、かなり広い範囲で土砂災害があったようだ。阿武山に近い町村の地誌を見直してみたい。

 前回、松原丹宮代扣書」に出てきた寛政二年の人丸神社勧請の事は年表には、

「三月十八日 人丸神社を更地迫の谷筆柿の元に遷宮、願主柳縁斎福原貞国狂歌別鴉郷連中」(松原丹宮代扣書、人丸社棟木札)

とあり、人丸社棟木札という資料が出てくる。前回読んだ松原丹宮代扣書」のこの条は後略となっていて、そこまでに書いてなかった柳縁斎と別鴉郷連中は人丸社棟木札にあるのか、それとも松原丹宮代扣書の後略の部分にあるのかはっきりしない。

なお、お恥ずかしい話であるけれども、「狂歌桃のなかれ」にも柳縁斎とあったのに貞佐と同じ桃縁斎と見間違っていたことに今日気付いた。貞右の玉雲斎とからめて書いた回は全く意味をなさないもので、帰ってすぐに非公開(下書き)にしてその後訂正しました。読んでくださった方には全くもって申し訳ないことで、おわび申し上げます。

さて、気を取り直して、貞国は狂歌桃のながれの寛政五年までは柳縁斎で、狂歌家の風の享和元年までに栗本軒の額をいただいたことになる。家の風の序文はこの軒号が主題のような書き方であるから、栗本軒を得てから出版に取りかかったという流れだろうか。

大野町誌の本文にも、貞国について二か所記述がある。まずは大野町に関する文芸作品を抜粋した項には、まず貞国の弟子の柳唱斎貞蛙なる人物が登場する。大野の実力者のようで、本名は大島周蔵、この大島家に貞国や別鴉郷連中の狂歌を記した文書や掛け軸が伝わっているようだ。また、貞国の掛け軸を所持されている大島忞氏(故人)は前回読んだ「古文書への招待」の著者と同名でご子孫なのかもしれない。住吉新開という新たな土地が享和元年に完成した時の貞蛙の歌の中から一首紹介しておこう。


       こたび御恵み給ふ新開のかたはらに胡子住吉の社ありける

       によりて、人々住吉新開ともまた胡子新開ともいへる者も

       ありければ

  百姓も猶これからは住吉のかみの力をゑびす新開


そして、出典不明だった貞国の妹背の瀧の歌も載っている。

  

  めをと滝そのみなもとはかわれどもすえはひとつにやはりおほのぢゃ


しかし、大野町誌にもどこから引用したかは書いてなかった。さいごの「ぢゃ」はあまり見かけない表記だが、意味があるのかないのかよくわからない。

また、大野町の文芸を解説した項には、別鴉郷連中について3ページにわたって解説している。瑞川寺(現聖光寺)にあるという碑についての記述もあった。

「その辞世の歌が、京都の門人三六〇人によって尾長村(現広島市東区尾長町)瑞川寺境内に碑にして建てられている。その辞世の歌は「花は散るな月はかたふくな雪は消なとおしむ人さへも残らぬものを 貞国」と、そして「行年八十八翁、天保四癸巳年二月二十三日没」と碑に刻まれている。」

とある。辞世の歌については、柳井地区とその周辺の狂歌栗陰軒の系譜とその作品」には、「花散るな月傾ぶくな雪消へなおしむ人さへ残らぬものを」とあり、大野町誌の引用は字余りの助詞が多くなっている。碑が残っているなら見にいってみたいものだ。うちの貞国の掛け軸の母方の先祖は広島藩士で家は尾長にあったという。大野の大島氏と同様に尾長にも有力な門人がいたのだろうか。

もうひとつ、大野町誌の興味深い記述としては、

「今、大野東小学校に別鴉郷連中の歌を彫った版木が残っていることから推して、歌集を刊行していたことも考えられるが、その版木も虫食いで損じて読み難く、また歌集も発見されていない。」

大野に版木が残っているというのは驚きだった。どこかに歌集が残っていないものだろうか。

またこの項には2枚の写真があり、「狂歌伝授誓約書」「貞国の筆跡」と題されている。

 

誓約の内容は日付と貞佐貞国の名前と落首の戒めぐらいしか私には判読できない。漢字が全然で「狂歌誓約」の前の肝心な所からして読めないのだから話にならない。掛け軸の二つの印がうちの掛け軸のと似ているような気もするが、もちろんこの写真では全然わからない。

借りて帰ったのは4冊、近世上方狂歌叢書は狂歌阿伏兎土産が入っている二十四にした。それから江戸狂歌本選集十三、これは狂歌江都名所図会が入っている。国会図書館デジタルコレクションで読めない歌が多いので見比べてみたい。三冊目は大野古文書管見 1 、ここには狂歌や大頭神社関連の文書はないが、大頭文書の3は持ち出しできないので1をゆっくり読んでみたい。最後に岩波文庫の近世畸人伝を借りた。しかし、貞佐が入っているのは続編だった。これは失敗。まあ同年代の本として言葉を探しながら読んでみたい。この4冊とともに年を越すか、あるいは年末もう一度行くかは読書の進み具合をみて決めることにしよう。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。