以前に、飛蔵軍服もののあらすじを書いたのですが、
そのスピンオフを考えてみました。
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しずかに、布の音だけが擦れた。
月の輝く夜、蔵馬はその布を手に取った。
柔らかな手触りが蔵馬の指に触れた。
ひとつ、ひとつ糸を縫い付ける指が、時折刺す針で赤くなっていた。
長い布を織り、蔵馬はそっとそれを抱きしめてみた。
この布は、飛影のものだ。
この闘いは、負けられないものだ。
だからこそ、蔵馬は今飛影のこの布をただ繕っている。
飛影は南の国との闘いに赴いた、この闘いは長くなることが予想されている。
拠点を離島に起き、飛影はそのなかで上に立つ者として、今頃は地図を広げている
ことだろう。
紺の布に、蔵馬は大きな花の柄を縫い付けていた。
この柄が飛影に似合うからと命令をしたのは飛影の母妃だったが、
大きな白い花の柄は飛影によくあっている。
宮中で飛影が袖を通すとき…それを考えるだけで、今は胸が熱くなった。
「飛影」
海の向こうで、飛影は眠れない夜を過ごしているのだろうか。
白い花が、形を作る蔵馬の指で広がって行く。
花びらの先まで、白を縫うと蔵馬はそっと花びらをなぞった。
紺色の着物の袖の部分だけにある大きな白い花が、飛影の瞳の熱さに重なって…。
そう見えた。
「わするることなかれ」
海音の 切なき鳥の番の羽根に君心なく わするるをなかれ
ずっと小さな頃から聞こえた歌。
忘れないで。
番の羽根は、自分でありたい。
「飛影」
この布が、この柄がきれいなうちに。
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歌はねつ造です。
私はこういう話を考えて歌を考えるのが好きなので、つい
ねつ造してしまうのですが許して下さい。
昨日の 口移しバレンタインとは違う意味で、ふたりの熱い恋を描きたかったのです。
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