彩の国さいたま芸術劇場 大ホールで、『ムサシ』ロンドン・NYバージョン 10月18日(金)開演13:30を観てきました。
【脚本】井上ひさし(吉川英治「宮本武蔵」より)
【演出】蜷川幸雄
【音楽】宮川彬良
【美術】中越司
【照明】勝柴次朗
【衣装】小峰リリー
【殺陣】國井正廣・栗原直樹
【振付】広崎うらん・花柳寿楽
【能指導】本田芳樹
【狂言指導】野村萬斎
【キャスト】
藤原竜也:宮本武蔵
溝端淳平:佐々木小次郎
鈴木杏:筆屋乙女
六平直政:沢庵宗彭
吉田鋼太郎:柳生宗矩
白石加代子:木屋まい
大石継太:平心
塚本幸男:忠助
飯田邦博:浅川甚兵衛
堀文明:浅川官兵衛
井面猛志:只野有膳
【ストーリー】(フライヤーより)
慶長十七年(一六一二)陰暦四月十三日正午。豊前国小倉沖の舟島。
真昼の太陽が照り付けるなか、宮本武蔵と佐々木小次郎が、たがいにきびしく睨み合っている。小次郎は愛刀「物干し竿」を抜き放ち、武蔵は背に隠した木刀を深く構える。
武蔵が不意に声をあげる。「この勝負、おぬしの負けと決まった」。約束の刻限から半日近くも待たされた小次郎の苛立ちは、すでに頂点に達していた。小次郎が動き、勝負は一撃で決まった。勝ったのは武蔵。
検死役の藩医に「お手当を!」と叫び、疾風のごとく舟島を立ち去る武蔵。佐々木小次郎の「厳流」をとって、後に「厳流島の決闘」と呼ばれることになる世紀の大一番は、こうして一瞬のうちに終わり、そして……物語はここから始まる。
公式サイトはこちら → 『ムサシ』ロンドン・NYバージョン
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※ネタばれがありますので、ご注意くださいませ。
客入れの音楽はなし。
美術はシンプル。第一幕は素舞台で背景に、ぼう。。と膨らむ大きな赤い月と波打ち際の絵。
その後、幻想的な照明の中を竹林と宝蓮寺のセットが黒子たちによって設置されます。竹林は時折、さわさわまたはざわざわと揺すられて。
この宝蓮寺のセットはプログラムに載っていた写真と酷似しており、イメージが再現されたものかと。
客席の上手と下手にある2本の通路も登退場に使用されます。
音楽もシンプルで少なめ。ラスト近くにパイプオルガンに般若心経が重なり、やがてパイプオルガンの音のみが大きくなっていきます。
作品中に一貫して流れるテーマは「恨みの連鎖を断ち切る」、「命の尊さ」について。
休憩込みで3時間超えの作品です。役者さんたちはほぼ出ずっぱりで、殺陣や能・狂言の所作と謡、早い掛け合い、長台詞と負荷が相当にかかるのではないかと思われます。
ですが、中だるみのないテンポのよい展開。終始笑いが絶えません。
小次郎が乙女たちに武術を伝授するとき、「右!左!」と声をかけながらすり足で移動するのですが、これがいつの間にかタンゴのダンスになっていたり。武蔵と小次郎の早口の言い合い中に、武蔵が小次郎の頭を扇子でバシバシ!叩くさまは、ハリセンで叩くお笑いのツッコミのようです。武蔵と小次郎が斬り合うのを防ぐための方策として、全員で足を繋ぐ5人6脚も笑えます。
そういえば、吉田鋼太郎さんは扇子が客席に飛び、最前列のお客さんが拾って差し出すというハプニングも。
とにかく役者陣が魅力的で実力者揃い! そして、みな声がよいのです。
余談ですが、唐十郎さんが「役者は1に声、2に声、3に声、4に姿」とおっしゃられておりましたっけ。確かに、声がよいと耳に心地よく、ストレスなく台詞を聞き続けることができますものね。
今回このカンパニーに加わった小次郎役の溝端淳平さんが初々しく、清潔感のある小次郎を好演されておりました。武蔵役の藤原竜也さんとの息もぴったりでした。
藤原竜也さんはこういったユーモア溢れるお芝居もいいですね。個人的には、色気を感じる苦悩する役が好きなんですが。
まい役の白石加代子さんからは目が離せなくなりますね、なにをやってもおもしろい。そういえば、この劇場で『身毒丸』のときにも藤原竜也さんと共演されていましたね。
練られた脚本に芸達者で化物級(褒め言葉です)の役者さんたちが奏でるお芝居を堪能しました。
観終わった後素直に、「おもしろかったなぁ~」と思える作品でした。
終演暗転の後、役者さんたちが挨拶に出てこられるとき、舞台上方に亡くなられた井上ひさしさんのにこやかな笑顔のお写真が掲げられておりました。哀悼の意なのでしょうね。
カーテンコールは2回。2回目はスタンディングオベーション。
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プログラム 変形判 1,600円。
井上ひさしさんと堀威夫さんの対談や役者さんのコメントなど、読み応えたっぷり♪ 公演劇評集も付属。
恒例のフライヤーの束から。同じ演目が来年の3月にBunkamuraシアターコクーンで公演されるそうです。
個人的には、シアターコクーンより彩の国さいたま芸術劇場のほうが、1階席後方でも観やすいように思います。