映画館にて、『あなたを抱きしめる日まで』 を鑑賞。
【製作】イギリス・アメリカ・フランス 98分
【監督】 スティーヴン・フリアーズ
【出演者】 ジュディ・デンチ、スティーヴ・クーガン、ソフィー・ケネディ・クラーク、アンナ・マックスウェル・マーティン、ミシェル・フェアリー、バーバラ・ジェフォード ほか
【受賞歴】
●2013年度アカデミー賞 主要4部門ノミネート
●2013年度英国アカデミー賞(BAFTA) 主要4部門ノミネート
●2013年度ゴールデン・グローブ賞 主要3部門ノミネート
●ヴェネチア国際映画祭 脚本賞受賞
●トロント国際映画祭 観客賞次点入選
【ストーリー】
その日、フィロミナは、50年間隠し続けてきた秘密を娘のジェーンに打ち明けた。
1952年、アイルランド。10代で未婚のまま妊娠したフィロミナは家を追い出され、修道院に入れられる。そこでは同じ境遇の少女たちが、保護と引き換えにタダ働きさせられていた。フィロミナは男の子を出産、アンソニーと名付けるが、面会は1日1時間しか許されない。
そして修道院は、3歳になったアンソニーを金銭と引き換えにアメリカへ養子に出してしまう。以来、わが子のことを一瞬たりとも忘れたことのない母のために、ジェーンはBBCの政府の広報担当をクビになった元ジャーナリストのマーティンに話を持ちかける。愛する息子にひと目会いたいフィロミナと、その記事に再起をかけたマーティン、全く別の世界に住む二人の旅が始まる──。
公式サイトはこちら → 『あなたを抱きしめる日まで』
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※ネタばれがありますので、ご注意くださいませ。
田舎の素朴な老女フィロミナが、元ジャーナリストのマーティンと息子を探すロードムービー。
50年前のアイルランド、カトリック修道院がどういったものであったのかは知らないのだが、明らかに人道を無視した行為がまかり通っていたことに驚き憤りを感じる。信仰の教義を楯に、正論を振りかざし、最後まで謝罪さえもしない老シスターこそが一番恐ろしい。。
ただ、息子に会いたい一心ではるばるアメリカまで出向き、そこで、すでに息子は死亡していることを知るフィロミナ。彼女の心情を想うと涙が流れる。
フィロミナの息子に会いたいという願いは、結局、叶わなかった。。
しかし、アンソニーは故郷のアイルランドと産みの母を愛していた。これがせめてもの救いのような気がする。
実話に基づくというストーリーは、作品に重みと奥行きを与えているように思う。アイルランドの町並みと風景が美しく、より感慨深く。
ラスト近く、フィロミナが車椅子の老シスターに向かい、「あなたを許します。許すということは苦しい(罰)のだから」という台詞がある。なんて悲しくて、切ない言葉なんだろう。。
自分と息子、ほかの大勢の母子たちを苦しめてきた老シスターに向かって、彼女は許しを与えるのだ。それこそがフィロミナの信仰であり、生き方なのだろう。とても美しい生き方だとしみじみ思う。
それにしても、女性は「産む性」である宿命なのだと改めて思わざるを得ず、なんとも複雑な気持ちになってしまった。
男性は「産まない性」なので、自分自身の肉体には全く犠牲を強いられない。痛くも痒くもないのである。相手の女性が妊娠したかどうかすら知らない場合もあるだろうし。
ストーリー中の台詞に、「何故、神は快楽(セックス)を与えて欲望を禁じるのか?」というのがある。至極真っ当な疑問だと思う。
神と人、信仰(カトリック)と罪。人が罰を与えるという名目で、他者の人生に干渉し破壊していってもいいのだろうか?
老シスターが逆ギレしながら、「私を裁くのは神だけです!」というくだりがあるが、では、あなたは神なのか?罰を与えるというのなら、それは、神が与えるべきではないのか?
観ていて一番不快な人物が、敬虔な老シスターだというのが救われない気がした。。
今もまだ、イギリス、アメリカの両国で互いに親子が探しあっているという現実に胸が痛む。
こんなことは、もう二度と起こって欲しくない!と、本当に強く思う。