昨年、録画したまま、まだ観ていなかった舞台を観ました。作品は、M&Oplaysプロデュース『アイドル、かくの如し』です。これでようやく全部終了。
【収録】2011年12月21日 本多劇場
【放送】NHK BSプレミアムシアター 2012年10月8日(月)【7日(日)深夜】午前0時45分~午前5時19分
【作・演出】岩松了
【キャスト】
宮藤官九郎(大人計画)
夏川結衣
津田寛治
伊勢志摩(大人計画)
上間美緒
足立理
金子岳憲
宮下今日子
橋本一郎
岩松了
【ストーリー】
舞台は小さな芸能事務所。ここは、元女優で今は事務所の社長と、元マネージャーで夫の夫婦が経営している。救世主のようにあらわれたアイドルだが、スキャンダルを起こしてしまう。
小さな事務所で繰り広げられる夫婦関係、その周囲の人間関係を描いていく。
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作・演出の岩松了さんは、作品の中に恋愛を絡めることが多いというのを聞いたことがあります。今回の作品も恋愛、愛情が根底にありました。
タイトルにある「アイドル」は、ただ単に事務所のアイドルを指すのではなく、事務所の経営者夫婦の夫から見た妻のことでもあるわけです。彼は長距離トラックの運転手をしているとき、ドライブインでたまたま観たテレビに映っていた女優に、自分の「アイドル」=自分の「理想・こうであって欲しい女性像」を投影したのですね。そして、彼女のマネージャーになり、やがて結婚、彼女は女優を引退して二人で芸能事務所をひらくわけです。本当は妻に女優を止めて欲しくなかったんですよね。自分の「アイドル」なんだから。。
全編を通して流れている、「愛情」という名のエゴと脆さと危うさに、切ないような物悲しいような気持ちになりました。
この作品は、夫婦善哉の体をしていながら、その実、人はなんのために生きているのか? 生きていくことは死ぬまでの時間潰しなのか? 「愛情」とはなんなのか? ということを描いているように感じました。
キャストさんでは、女にだらしないダメな夫役の宮藤官九郎さんがいいですね。ダメな男なんだけど、どこか憎めない。時折、ちらっと垣間見せる繊細なところ、不器用な優しさに心惹かれます。
今回が初舞台だという妻役の夏川結衣さんは、初舞台とは思えない自然で力みのない演技でした。時折、ドラマを観ているような錯覚さえ覚えましたし(いい意味で)。
事務所の社員役の津田寛治さんは、生真面目でテンパりやすく、感情が高ぶると狂気が混じってくるさまがはまっておりました。ドラマの「警視庁捜査一課9係」をふと思い出したり。
事務所の古参事務員役の伊勢志摩さんは、最初はどこにでもいそうな地味な女性事務員が、最後は怖い女の業を露わにするさまを観せてくれました。どんどん、別な人間のようになっていくさまを演じわけられていてすごいなぁ。。と。
事務所の新人社員役の足立理さんは、今時のちゃらい男性が似合っていたんですけど、後半になっていくにつれて変化していく人間性が演じきれていなくて、なんでそんな言動に繋がるのかがわかりにくかったですね。惜しい。
作・演出でもある岩松了さんは、今回もまたもや胡散臭い中年男性を好演?しておりました。この手の役が似合いますよね~ にこにこしながら、目の奥が笑っていないっていう胡散臭く怖い感じが(笑
観終わった後に、小さな棘が刺さっているような感じ。決して大きくもないし、深くもないんだけど、なんだか刺さっているという。
嫌な感じでもないし、ふわふわした感じでもない、岩松了さんの作品を観るといつもそんな気分になります。
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