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デュマ・フィス『椿姫』あらすじと感想

2012-06-07 10:34:54 | 紙の書籍
岩波文庫 デュマ・フィス『椿姫』吉村正一郎 訳 を読了しました。

あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。




【目次】
一 ~ 二七
『椿姫』とその作者 訳者


【あらすじ】
歓楽の生活をなげうち、真実の恋に生きようとする娼婦マルグリットと純情の青年アルマンの悲恋の物語。何ものにも代え難いその恋さえ、恋人の前途のため諦めて淋しく死んでゆくマルグリット。


【感想】
作者のアレクサンドル・デュマ・フィスは偉大な作家である、父 デュマの私生児として生まれた。後に認知されたらしいが、このことが大きく彼の人生に影を落としたのは想像に難くない。

この作品はとある娼婦をモデルにして描かれたといわれており、そのままではないにしろ、イキイキとした彼女の描写が魅力のひとつだと思う。
私(作中の作者として登場)がふとしたことで出会ったアルマン・デュバールから聞いた、マルグリットという若く美しいパリの娼婦のことを、私が綴っていくという形をとっている。翻訳ものにしては読みやすい文体。
出会い、愛しあい、やがて悲劇的な破局、そしてマルグリットの死。彼女の死と別れの真相を知り、打ちのめされるデュバール。
デュバールの心境を思うと、読んでいて胸が痛くなるような感じだった。こんなふうに自分のためを思って身を引いていったマルグリットが、病気で苦しみながら寂しく死んでいったことを彼女の死の後に知らされたら、一体どうやって立ち直っていくことができるのだろう…。
絶望と悲しみしかないように見えて、読後感は決して悪くない。不思議だ。
この作品を書いたとき、作者はまだ二十歳くらいだったというのだから、さらに驚く。


【余談】
再読のような気がかすかにするのだが…。学生時代に読んだような読んでないような。はて?

この作品を読んでいて、ふと、赤毛のアンシリーズの短編を思い出した。ダイアナの親戚、嫌われ者の老婆が亡くなり、その老婆が「あんたならわかってくれると思った」と言い残してアンに残したものがある。そこにはこの老婆の在りし日の美しい姿と、悲しい結末を選ばざるを得なかった恋が綴られていた。
相手の将来を思い自分が悪者になることで、決して自分を思い出したりしないようにする。わざと心にもないことを言い、相手から破局を言い出すように仕向けたのだ。
彼は真実を知ることは絶対にない。彼女のことさえ記憶から消えてしまい、幸せな人生を歩んだことだろう。なんて悲しい、哀しいことか…。


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