二月四日は、朝七時に目が覚めました。熟睡したので気分はすっきりしていました。
私が起き上がって動き始めたので、隣のベッドのUさんも起きて、「おはよう。どう?」
「すっかり気分が良くなった!」
「じゃあ、今日はバギオの町に出かけなきゃね。お土産も買わないといけないし」
「そうよね。まだ、何にも買っていない」
そうなのです。フィリピン入りして九日めになります。四日の夜、つまりもう一泊バギオに泊まって五日にはマニラに向かいます。マニラで一泊して六日の便で帰国なのです。
今回の旅行はいわゆる観光旅行ではなくて、フィリピン山岳奥地への宣教地訪問旅行でした。
たくさんの教会を訪問し、「同じ主(しゅ)にある兄弟姉妹」――クリスチャンは、同じキリストの信徒をそのように呼びます――と出会い、祈り合い、喜び合う旅でした。
グルメが目的ではありませんが、グルメもあり、あたたかいもてなしを当てにしていたのではありませんがあたたかい歓迎がありました。「絵になる光景」も、スリル満点の体験もありました。
けれども、お土産物屋さんはありませんでした。色とりどりのトロピカルフルーツを見て、何度も「持って帰りたい!」と思ったのですが、ナマモノは持って帰ることができないのですから、叶わぬ夢でした。
お土産を買うのも、旅行の楽しさの一部です。そのことを、突然、私も思い出したのです!
「そう。今日はお土産を買いにバギオの町に行きましょう!」
部屋のカーテンを開けると、みずみずしい緑の庭園と森が目に入りました。
この神学校は、一九九〇年代にマニラから移転してきたそうですが、素晴らしい環境の中にあります。
広い敷地にいろんな建物があって、そのどれもが一般のフィリピン人の住まいとはまるで違います。
もともとバギオはアメリカ人の避暑地として開発された土地、ここもアメリカ人の別荘地だったのかもしれません。
宿舎の部屋は広く、天井は高く、ベッドも家具調度もみんな私たちには大きすぎるほどです。
備え付けのワードロープなどは大きすぎてハンガーに手が届かないのです。
ここだけ、アメリカかヨーロッパのようです。
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神学校はじつは日本にもたくさんあります。しかし、有名ミッションスクールなどはべつにして、たいていの神学校は規模も小さく、財政的にも苦しく、学生数も十数人規模です。
APTSは、環太平洋を中心に世界中から学生を集める国際的な神学校で、さらにその母体のAG教団(アッセンブリ・オブ・ゴッド教団)は、世界でも有数の規模の教団。その上、所在地が物価の安いフィリピンであるためか、財政的にも余裕があるのを感じさせます。