落葉の積もる場所

- The way I was -
 

AB29  (つづき)

2009年09月29日 | WEBLOG
  








【前回のお話】


まだ僕が船会社のサラリーマンになる前、 もうじき就職…という時期に知り合った5歳年上の 看護師・Yさん。AB型・28歳。
彼女は、東京・要町のアパートで一人暮らし。有名な大病院に勤務していました。
23歳の新社会人と、 28歳の看護師さん。まるで、オトナと子供です。
彼女の行動、 彼女の話し方、何を見ても、何を聞いても、憧れの気持ちが強くなるばかりでした。
新入社員である、僕の配属先は三重県。大都会・東京は遥か彼方です。
年の差…、遠距離……、僕の恋心が、成就する条件は何ひとつありませんでした。
学生時代、 僕はいつも恋愛の主導権を取っていました。
(年上相手の恋愛経験がなかったせいもありますが…)
ところが、Yさんの前では 尻尾を激しく左右に振る、小型犬のようになってしまうのです。
働き始めた僕は、 お金が貯まる度、東京へ行き、Yさんとデートしてもらいました。
場所は、TDLだったり、池袋だったり、鎌倉だったり。
「付き合ってもらってる」感が否めない、オトナの女性と青二才のデート。
そして、 いつもYさんの口癖を聞いては、 敗北感一杯で帰路の新幹線に乗り込むのです。

   「ちっぷくんは、若いんだし、希望に満ちた新社会人なんだから、
    こんなおばさんを相手にしてちゃダメよ。
    きっと近いうちに、貴方にお似合いの若いお嬢さんが現われるわ。」

しかし、その言葉は僕にとって、恋の炎に油を注ぐような 「魔法の呪文」だったのです。

知り合ってから半年余りが過ぎた頃、 Yさんの誕生日が近づいて来ました。
Yさんが遠距離電話の向こうで僕に対して突然言った言葉は、 実に意外なものでした。

   「ちっぷくん、 私の誕生日、部屋に泊まりに来る?」




























         
































Yさんの部屋は、小さなアパートの2階にありました。





6畳のリビング、4畳半の寝室、うなぎの寝床のようなキッチン。





いかにも大人の女性らしく几帳面に片付けられた部屋の中には、ひとり暮らし特有の寂しい空気が漂っていました。








「私が夕飯の準備をしてる間に、お風呂済ませちゃう?」











正直なところ、その夜どんな展開になるのか見当もつきませんでしたが、男として強い期待感は抱いていました。











いつもより、念入りにシャワーを浴び、出された瓶ビールを飲みながらテレビを観ている間も、





    これから出される料理をどんな言葉で褒めればYさんは喜んでくれるのだろう・・・、





そんなことばかり考えながら。
















       





Yさんが作ってくれたのは 「鯖の味噌煮」 でした。







あまり好き嫌いのない僕にとって、 数少ない 「食べられない料理」 のひとつ・・・     








が、 当然のように 笑顔 でいただきました。    そして、結構旨かった。











好きな人が作ったモノは、何でも旨いのかも知れませんね。          



























夕食後の会話を終え、 11時頃 「そろそろ寝ましょう」 ということになりました。










4畳半の部屋には、彼女のベッドが置いてあります。





僕の視界には、そのベッドがチラチラ入ってきてしかたがありません。



















しかし、 Yさんは、6畳の部屋にそそくさと布団を運んできて敷いてしまったのです。










   「ちっぷくんはこっち、  私はベッドで寝るから来ないでね。」












        
















「まぁ、しかたないよな~」













落胆をひた隠しにして、眠りにつく僕。

















三重県から出てきて、 東京駅の大丸でプレゼントを買って、 慣れない地下鉄でやって来て・・・、





きっと相当疲れていたのでしょう。











目を閉じたとたん、僕は深い眠りにおちました。       



























            


























「ちっぷくん!」












突然、Yさんが僕の布団に滑り込んで来ました。







完全に眠っていたせいで、 逆に躊躇することなく、僕もすぐに応じることができたのですが。

























             


































こうして、Yさんとの熱い夜は、 



翌朝、階下の住人が天理教の太鼓を鳴らしてお経を唱え始めるまで続きました。























































地下鉄の駅。





病院へ出勤するYさん。        三重県へ戻る僕。


























結局  お互いの顔を見たのは、それが最後になりました。























「ONE NIGHT STAND」





どちらがそれを望んだのか、 または ふたりともがそれを望んだのか、





いまだに僕にはわかりませんが、 





その後、  彼女からの連絡はなく、  僕から電話をすることもなく、
















あの夜の思い出だけが、 淡く 微かな熱を保ちながら、僕の心に残っているのです。











































             Fin






16 コメント

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こんにちはー (nori)
2009-09-29 11:19:12
早速訪問しちゃいました。

人生って岐路にたったときの選択で、
色々な道に行ってしまうんですよね~

やっぱり、自分次第だと思うんですが

女の人の立場にたつと・・・
連絡・・・待っていたんじゃないかと・・・
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noriさんへ (ちっぷ)
2009-09-29 13:43:09

早速のご訪問、ありがとうございます

たくさんの岐路を経て、現在の自分がいるんですよね。

女性の気持ち、  
いくつになっても全くわかりません。

ほんとうに・・・難しいです・・。

    
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Unknown (ぴあの)
2009-09-29 18:44:34
看護師さんかぁ~…



看護師さんねぇ~…



ん~看護師さん…






なんやねん





ま そういうことです。
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出逢いって ()
2009-09-29 19:11:51
必然的なんだと思います。

どうして連絡をしなかったんですか?

淡く切ない思い出なんですね。

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こんばんは♪ (あんず)
2009-09-29 20:33:33
はじめまして、ですね♪
おじゃまいたします~

なるほど、なるほど、

私も、連絡待ったと思うな~
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きちゃった~^^ (ミンタン)
2009-09-29 20:37:23
まぁちっぷさん
ダメじゃないですか
「来ないでね」は「来てね」ってことよ
強引にいって欲しかったわ
まあ あれから時を経て女の気持ちのわかる
ステキな男性になったのよね
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ぴあのさんへ (ちっぷ)
2009-09-30 06:52:27

保育士さん … 優しい

看護師さん … 天使

消防士さん … 男らしい


職業イメージって、ありますよね~       
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杏さんへ (ちっぷ)
2009-09-30 06:55:10
出会いは必然・・・。
確かにそうですね。
近所にいても、言葉を交わすことなく
すれ違いのままの人もいれば、
遠く離れていても、巡り会う人もいます。

連絡をしなかった理由、
今となってはわかりませんが、
当時は明確なものがあったと思うんです。

      
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あんずさんへ (ちっぷ)
2009-09-30 06:58:12

いらっしゃいませ。

お互いに連絡をとらなかったのって、
それぞれ理由があったのかも…ですね。

良い勉強をさせていただいたと思っています。
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ミンタンさんへ (ちっぷ)
2009-09-30 07:02:45

私が思っていたより、年の差を感じる必要性は
なかったみたいです。
それに気が付かず、ひたすら自分の「若さ」を
恥じていたあの頃。

懐かしくも切ない出来事でした。

   
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おはよ~~ (マリンママ)
2009-09-30 09:29:43
出遅れた~~
ちっぷさんのファンクラブの中で私が最後?
年上の看護婦さんいい思い出です・・・きっと
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おはようございますV(^-^)V (ミチ)
2009-09-30 10:36:25
はじめまして♪ですね(^з^)-☆Chu!!

その「来ないでね」は間違いなく「後できてね!」ですね☆
まだ若かった、チップさんには女心は難しかったですねf^_^;
でも、その後連絡しなかった事で、今の思い出になってるんですね・・・
淡いようなせつないような(^_^;)
青春の1ページですねV(^-^)V
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こんにちは♪ (華千代)
2009-09-30 15:38:49
そうね…ベットに行くべきだったと思います。
待ってたのよ、彼女。
襲わせるなんて…ダメぢゃない!

電話も待ってたと思うな~

う~ん…じれったい男~
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マリンママさんへ (ちっぷ)
2009-09-30 22:47:14

こんばんは。

彼女も時には思い出してくれてるかな、私のこと。

      
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ミチさんへ (ちっぷ)
2009-09-30 22:50:42

いらっしゃいませ。    

お互い、それぞれの立場で遠慮してしまったのか…
今でも謎なんです。
いい思い出にはなってますが。

     
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華千代さんへ (ちっぷ)
2009-09-30 22:55:16

うーん、、たしかに若い頃はかなり優柔不断
だったかも知れませんね。

今は、僅かなチャンスを逃さない、立派な「ハンター」
になってしまいましたけど。(ガオ~~)

     
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