中華街で行列といえば、皆さん何を思い浮かべますか。ある人はお粥で有名な「謝甜記」をあげるかもしれませんね。「いやいや、人気の香港路にある海員閣だ!」と反論する方もいるでしょう。GWともなれば、こんな光景だって普通に見られます。 しかし行列は、なにもお店ばかりではありません。寒い日に朝陽門(東門)横にある公衆トイレで足踏みしながらジッと順番を待ち続けたことってないですか。年間2000万人くらいの来街者があるという横浜中華街です。その人たちの排泄をまかなえるだけの便器が、公衆トイレだけでは足りないのは当然のことであります。 その結果、店の前で並び、トイレの前で並ぶということになるわけですね。 さて、数ある行列の中でも、今日ご紹介する行列は、意外と皆さん気がつかない行列です。 それは、中華街内のいろいろな建築物の屋根に並んでいる、 これです! これって、何なのでしょうか? 中華街で見かける彼らはすべて、鳥のようなものに乗った太公望か仙人のような人物が先頭にいます。 そのあとに続くのは、シーサーのような、あるいは中国獅子のような、空想上の動物です。聖獣でしょうか。しんがりには曲がった角があり、大きく口を開けた龍のような動物。 この行列は、いったい何を意味しているのか、ずっと気になっていました。 そこで今日は、とりあえず、私が発見した屋根の行列を並べてみましょう。冒頭の写真と上の写真は、善隣門の屋根。同じ門の上ですが、張り出した屋根によっては、頭数(?)が異なっています。 冒頭の写真は5体、上の写真は7体です。先頭とシンガリは共通で、その中間の隊員に違いがあるようです。 これは朝陽門(東門)。7体ですね。隊員の構成は善隣門のと似ています。 ただ、先頭の人物の顔が肌色! 2色使った豪華版といった雰囲気です。 これは西門の上。先頭とシンガリの間に2匹。あわせて4体です。 先頭の仙人の顔は、やはり肌色。どうやら隊列の中で、この人が最も格が高いようです。 こちらは南門。隊列は、かなり少ない3体。でも先頭のおじさんの顔は、やっぱり肌色です。 東西南ときたら、北門もはずせません。こちらは西門と同じく4体です。そして、人物の顔が肌色。 隊列の個体数を多い順に並べると、善隣門、東門が7体、西門と北門が4体、南門が3体です。この個数の違いに、何か意味があるのかどうか、う~ん、分かりません。 最初は、牌楼ごとに個数を違えているのかなと思っていたのですが、よくよく観察してみると、同じ牌楼でも屋根の位置によって隊列の長さが異なることが分かってきました。 朝陽門(東門)を見てみましょう。一番上の屋根には7体いますが、下層の屋根には5体しかいません。何か使い分けがあるようです。そして、どうも奇数の隊列が多いようです。 ところで、横浜中華街の牌楼は、東南西北にあって、それぞれ色が違っています。(ちなみに方位の順番は、マージャンで使うようにトン・ナン・シャー・ペーとしている) なぜ、4つとも同じ色、形にしていないのでしょうか。それは風水思想に基づいて建てられているからです。 このことについて横浜中華街のホームページに、こんなことが書かれています。 中国では古来より、皇帝が王城を築くとき、天文博士に天意をうかがわせ、城内に入ってくる邪を見張り、これを見破るために東南西北に限って通路を開いて、それぞれに門衛を置いたといいます。 それらは「春夏秋冬」「朝昼暮夜」という陰陽五行に基づく色である「青赤白黒」で彩られ、さらに各方位の守護神として人々に根強く信仰された四神を据えました。 その守護神というのは、東が青龍、南が朱雀、西が白虎、北が玄武。最初の3つはなんとなくイメージできると思いますが、最後の“玄武”というのは、蛇の巻きついた足の長い亀です。 そこで、これら4つの聖獣が牌楼に張り付いているのかどうか、確認してみました。 朝陽門(東門)の青龍。 朱雀門(南門)の朱雀。 延平門(西門)の白虎。 玄武門(北門)の玄武。 以上、東南西北の牌楼に棲む聖獣を見てみましたが、ちなみに市場通りには守護神らしきものは張り付いていません。しかし、代わりにこんなもので飾られています。 魚、野菜、果物、食器、花など、市場で売られているものたちですね。この通りの名称にちなんでいるのでしょう。 これは関帝廟通りの地久門。レリーフには赤兎馬に乗った関羽が描かれています。 話が脇道にそれてしまいました。今日の話題は屋根上の行列でしたね。もう少し牌楼を眺めていきましょうか。 地久門。3体。 天長門。同じく3体。この天長門と地久門は関帝廟通りの両サイドにあります。 山下町公園内にある会芳亭。5体です。やはり先頭のおじさんの顔は肌色になっています。 これは西門通りにある九龍陳列窓。この屋根の上にも4体の行列がありました。 先頭を行くおじさんを拡大してみました。彼が乗っているのは馬ではなく、どうやら鳥のよう。したがって、このおじさんは三蔵法師や太公望ではないようです。 中華街パーキングの屋上に建つ楼。その屋根にも行列があります。近寄ってみましょう。 やはり、同じ行列でした。個数は5体ですね。 以上、見てきた行列は牌楼、休憩所のように、すべて中華街の公共的な建築物でした。でも、お店の屋根にもあるんです。ここは中華街大通りの「一楽」。左側の屋根に発見しました。 望遠レンズで見てみましょうか。 おお~っ、やっぱり鳥に乗った仙人風の人物がいました。 これは「華都飯店」の屋根の行列。先頭のおじさんと、しんがりを務める“龍のようなもの”しかおらず、真ん中の隊員がいません。特別仕様なのでしょうか。 さて、こちらは中華街大通りの「萬珍楼」。太公望のようなおじさんの後ろに3体並んでいますが、例のしんがりがいません。ギョロ目を開いた龍のような、鯱(しゃちほこ)のようなものは他でも見かけましたが、行列とは離れて単独で棲んでいます。 これは「萬珍楼点心舗」の屋根。行列の長さとしては最大のもので9体います。さすが老舗ですね。 以上、いろいろな行列を見てきましたが、ここで中華街における屋根の形式について、考察なんてほどのものじゃあありませんが、少し考えてみましょう。 近代的なビルに建て替えた店舗の正面には、中華風の軒を張り出しているのを見かけますが、屋根というのはありません。正確に言えば屋根ではなく屋上があるというべきでしょうか。 したがって屋根を飾ることができないので、張り出した屋根風の軒を飾ることになります。 その屋根風の軒には2種類あるようで、多いのは切妻型のもの。切妻屋根の片側を貼り付けたような形をしています。 もう一つは寄棟型の軒。こちらも同じく屋根の片側を切り取って貼り付けたような形です。 上の例で言えば、玄関の真上に当たる部分が寄棟型。その両サイドにあるのが切妻型といえるでしょうか。 各店舗はこうして建物の正面を飾っているわけですが、牌楼は単独で建っているので寄棟型の屋根が付いています。 屋根の一番高い部分、左右に広がる部分が「大棟」です。そこから斜めに張り出しているのが「隅棟」といいます。 今回のテーマである行列は、この隅棟に棲んでいるのです。 この行列は何なのか。ネットで調べていったら、詳しく解説しておられる方がいらっしゃった。それによると、この太公望風の人物は仙人騎鳳。 仙人騎鳳に続く数体は走獣というそうです。 行列のしんがりは傍吻。 大棟の両端で、カッと目をむいているのは正吻というのだそうです。 さて、今までみてきた行列は仙人騎鳳、走獣、傍吻が一列に並んでいましたが、つい最近、彼らがバラバラになっているのを発見しました。 それは洗手亭。加賀町警察署裏手にある公衆トイレです。 こちらでは、走獣だけで隊列を組んでいました。仙人騎鳳と傍吻はどうしたんだろう…と思ってよくよく見ると こっちの屋根に傍吻がいました。でも仙人騎鳳が見当たりません。どこに隠れているのでしょうか。知っている方は教えてくださ~い。 今日は主に屋根の上の行列を見てきましたが、横浜中華街の建築物には数多くの装飾があります。それは中華風のものだけではありません。近代の西洋風もあれば、和風もあります。 皆さん、横浜中華街を訪れたら、中華料理を食べるだけではなく、ぜひともタウンウォッチングをしてみてください。新しい発見があって、楽しいですよ。お勧めします。 参考 屋根の行列について詳しく解説しているサイトは→こちら ←素晴らしき横浜中華街にクリックしてね 「ハマる横浜中華街」ランチ情報はコチラ⇒ |
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