メンタル患者の悩まされる反我。
反我の正体は、生まれてからそのときまで獲得してきた、いわゆる社会的な掟の集大成である超自我ではなく、エスである。
すなわち、エスがあることを意志して、同時に禁止するなどと言う、矛盾したことが起きているのである。
エスに形式論理学は通用しない。
だから、あることを意志して、同時に禁止するなんてことは、朝飯前にできることなのである。
それに、自我がエスの応援をしない。
あることを意志して、それが反社会的なものならば、社会的に容認できるものに対象移行して、それでエスの欲動を満たすという自我本来の働きをしないのである。
エスが分裂し、自我がエスの応援をしないというのが、メンタル疾患の特徴である。
きっとこの、エスの欲動を禁止するエスこそが、メニンジャーが言うところの己に背くものの正体であり、笠原俊雄の言う、幸福否定の心理の正体なのであろう。
この由来は、キリスト教神学においても、仏教説話においても現れる。
キリスト教神学においては、天界の天使三分の一を、神に背かせた神の敵サタンであり、仏教においては、帝釈天に逆らった阿修羅である。
以上、いけもと。