
最大で1時間あたり80回、45秒ごとに離着陸が行われている羽田空港(2016年9月、青山陽市郎撮影)。
(乗りものニュース)
日々たくさんの飛行機が離着陸している羽田空港。それら膨大な数の飛行機を誘導し、安全な運航を支えている現役の航空管制官に話を聞きました。あまり知られていない管制官、その実像はどのようなものでしょうか。
レーダー担当? タワー担当? 航空管制官の仕事とは
東京の玄関口であり、世界でも有数の離着陸数を誇る羽田空港(東京都大田区)では、1日約1200回、1時間あたり最大80回も飛行機の離着陸が行われています。これほど多くの飛行機をどのようにさばいているのでしょうか。
まずひと口に「航空管制官」といっても、空港があるエリアとその離着陸にかかわる「空港の管制官」と、それ以外の空を監視する「航空交通管制部の管制官」とに大別できます。後者の航空交通管制部は全国で4つ設置されており、たとえば関東地方の上空は、埼玉県所沢市にある東京航空交通管制部が管轄しています。
「空港の管制官」は、その職務内容によってふたつに大別されます。空港周辺の比較的広いエリアを見張る「レーダー管制官」と、それより狭い空港直近の範囲を管轄し、飛行機が着陸許可を受けるところから離陸するまでを担当する「タワー管制官」です。よって、飛行機が羽田空港へ着陸しようとする場合、先にこれへ対応するのはレーダー管制官のほうになります。
「羽田空港のレーダー担当チームは、到着担当が3人と出発担当が2人、経路通りの飛行をしているかを注視する管制官が2人、そのほか軽飛行機や遊覧飛行機などを担当する管制官、加えて関係機関と調整を行う管制官を含めると、つねに10人程度の管制官がレーダー画面を見て業務を行っています」
そう話すのは、羽田空港でレーダー管制官を務める国土交通省東京航空局 東京空港事務所 管制保安部の藤本智弘さん。藤本さんらは主に早番、遅番、夜勤の3交代で24時間、羽田の空を見つめています。
「到着担当はパイロットと連絡をとりながら、エアバスA320型旅客機などの小型機であれば3マイル(約5km)、ボーイング747型旅客機などの大型機であれば5マイル(約9km)以上の間隔を保って、後ろに続く到着機が飛行できるよう誘導していきます」(藤本さん)
トラブル発生、そのとき管制官は…?
羽田空港へ飛行機が着陸する際は、所沢の東京航空交通管制部から羽田空港の管轄エリアへ飛行機が進入する30分前に、便名、到着予定時刻、高度、機種、どの航路から進入するか、進入する順番はどうなっているか、といった情報が羽田空港の管制室へ送られ、短冊のような紙に次々と自動で出力されます。しかし、悪天候や何らかのトラブルにより、予定通りの順番にならないこともあります。
「到着予定時刻や進入する順番などが変更になった場合、その内容を(出力された短冊状の紙に)手書きで修正し、タワー担当チーム(後述)に連絡します」(藤本さん)
また地上が混雑していたり、滑走路が閉鎖されているような場合、飛行機に「空中待機」を指示することも、レーダー担当チームの仕事です。
「空中待機は高度5000フィート(約1700m)から1万5000フィート(約5000m)までのあいだで行えるため、5機から10機程度を待機させることは可能です」(藤本さん)
羽田空港へ着陸予定の飛行機が空港から半径9kmの範囲に進入すると、その業務はレーダー担当チームからタワー担当チームへ引き継がれます。滑走路担当が4人、地上担当が4人、到着地までの飛行経路や飛行高度を承認する担当が1人と、レーダー担当チーム同様、つねに10人程度が3交代で業務を行っています。
進入してきた飛行機に対し、まずは滑走路担当が、レーダー担当チームからの情報や風向きなどを考慮して、どの滑走路へ着陸させるかを決定します。羽田空港でタワー担当管制官を務める、国土交通省東京航空局 東京空港事務所 管制保安部の坂口明子さんは次のように話します。
「羽田空港は4本の滑走路が井ゲタ状に配置されており、風向きによって着陸する滑走路を選びます。もちろん、滑走路上で飛行機同士がぶつからないようにするのが一番大事なポイントです。また、ひとりが1本ずつ滑走路を担当しているのですが、飛行機が着陸する滑走路を急に変更するような場合は4人連携して、レーダー担当チームとも連絡を取りあいながら対処しています」(坂口さん)
眼鏡可、コンタクトでも可
滑走路が決まったらいよいよ着陸です。当然、着陸許可は、前に着陸した飛行機が滑走路にいないかを確認してから出すわけですが、この確認は目視で行われるとか。
「視力については一定の条件がありますが、矯正視力も認められていますので、コンタクトレンズや眼鏡を使用している管制官もいます。また、夜間や悪天候時には、レーダー画面から得られる情報も併用して飛行機の現在地を確認しています」(坂口さん)
飛行機が無事に着陸したあとも、タワー担当チームの仕事は続きます。前述のように、世界有数の離着陸数を誇る羽田空港では、次の飛行機がすぐあとに控えているため、着陸後はスムーズに滑走路から離れ、駐機場へ向かってもらう必要があります。そうした地上での誘導もまた、坂口さんたちタワー担当チームが受け持っています。
「航空管制官はパイロットに対し、分かりやすい指示を出しますが、羽田空港に不慣れな海外の航空会社のパイロットが操縦している場合には、右折や左折を細かく指示するなど、相手の状況に合わせた対応を心がけています」(坂口さん)
このように、1機の飛行機が着陸するのにも、何人もの管制官が関わっています。彼らが綿密に連携することで、今日もたくさんの飛行機がスムーズに羽田空港に着陸し、私たちは安全な空の旅を楽しむことができています。
かつて取材で羽田の管制塔に入ったことがあるようなことを思い出したなぁ。
それと、大分空港から伊丹空港に向かっていたとき、大阪上空で30分近く旋回していたような…。
ただでさえ飛行機が嫌いだったのにイヤな思いをして、翌日の伊丹空港から出雲空港へ向かったときは、エアポケットに入ってグーンと急降下。
ますます飛行機が嫌いになったことも思い出しちゃったよ。 