PRESIDENT Online スペシャル 掲載
■一流人は、源泉徴収票を「読むルーティン」
2016年も早いもので、1カ月が経過しました。
会社員や公務員など給与所得のある方は、この1月末までに「源泉徴収票」を勤め先から受け取ったことと思います。源泉徴収票とは、ひと言で言うならば、昨年1年間でいくら稼いだのか、そしていくら所得税を納めたのかが記載された証明書です。
社会保険料なども記載されていて、税金や社会保険料がすぐにわかる優れモノなのですが、そんな源泉徴収票の見方を皆さんは“本当”にご存知でしょうか?
実際のところ、結局いくら引かれていくらもらっているのか、理解していない方もいらっしゃるかもしれません。知っておいて損はありません。ざっと、おさらいしておきましょう。
まずは、源泉徴収票を見てみましょう。
源泉徴収票はこんな構成です。
1段目:自分の住所や名前など。
2段目:支払金額、給与所得控除後の金額、所得控除の額の合計額、源泉徴収税額。
3段目:扶養親族の数、社会保険料等の控除額など。
▼「支払金額」は手取りではない
まず、「支払金額」(1)からいきましょう。「額面年収」ともいわれますが、大事なのはこれが皆さんが実際にもらう金額、いわゆる「手取り額」とは異なるということ。ここを勘違いしている人も少数ですが存在します。
「支払金額」(1)は、ボーナスを含む1年間の収入のことです。その年の1月〜12月の期間にいったい自分がいくら稼いだのか、この「支払金額」の欄で知ることができます。(著者注:ただし、通勤手当の非課税分はここには含まれませんので、通勤手当が支給されている場合は実際の支払額の合計より少なく記載されていることがあります)。
では、「手取り額」はどこに書いてあるか? 書いてありません。源泉帳票には記載されていないのです。
「手取り額」は自分自身で、次の手順を踏んで計算しなければ算出できません。
先ほどの「支払金額」(1)から、「源泉徴収税額」(2)と「社会保険料等の金額」(3)を差し引きます。この「源泉徴収税額」(2)は所得税額、「社会保険料等の金額」(3)は健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料の合計です。
手取り額算出の作業は、これで終了ではありません。
■手取り年収の算出のしかたを10秒で言えるか?
「源泉徴収税額」(2)と「社会保険料等の金額」(3)のほかに、定期的に徴収されているものがあります。住民税(4)です。でも、これも源泉徴収票には記載されていません。だから、源泉徴収税額(2)や社会保険料等の金額(3)とは別途に差し引く必要があります。どうすれば住民税額(4)がわかるのかといえば、会社から毎月配布されている給与明細書に記載されています。
つまり、1年間の手取り額を知りたい場合は、「支払金額」(1)から「源泉徴収額」(2)、「社会保険料等の金額」(3)、「住民税額(12カ月分)」(4)を差し引くことになります。
いかかでしょうか。
結構な額の税金や社会保険料を払っているな、と思われた方も多いと思います。(2)〜(4)の合計は、(1)の支払額(額面年収)の2〜2.5割といったところです。
では、この源泉徴収税額(所得税)はどのように計算されているかご存じですか。
源泉徴収票 みほん(図A)の2段目にある「給与所得控除後の金額」(5)、「所得控除の額の合計額」(6)を見てください。
▼自営業者だけじゃない 会社員にも経費は認められている
「給与所得控除後の金額」(5)は、「支払金額」(1)から「給与所得控除」(源泉徴収票には記載なし)を引いた後の金額です。「給与所得控除」はあまり聞きなれない言葉かもしれませんが、平たく言えば、会社員の経費です。これは申請しなくても、自動的に経費として全員に認められます。
会社員の方の場合、たとえば、仕事で着るスーツや靴を買うなど、仕事に対してどれだけの経費がかかったか把握することは難しいもの。そこで、国税庁が定めた計算式に基づいて算出し、必要経費を「給与所得控除」として収入から差し引き、その分は所得税を徴収しないという仕組みになっています。給与所得控除の計算式は国税庁のホームページ(https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1410.htm)にあります。
年収別の給与所得控除額はそれぞれの収入に応じて段階的に決まっていています。
収入:給与所得控除
300万円:108万円
500万円:154万円
700万円:190万円
など。
■所得税算出の「控除」の内訳を全部言えるか?
「給与所得控除」のほかにも、実は控除があります。
それは、全ての納税者が無条件で所得控除できる「基礎控除」が38万円、生命保険や地震保険に加入している方(文末に特別コラムあり)は、それらの年間支払額を控除できます(上限あり)。養っている家族がいる場合は、その家族の「配偶者控除」や「扶養控除」などもあります。12月末の家族なので、年末までに扶養が増えた場合は、その年の控除対象になります。
これらの記載もやはり源泉徴収票にはありませんが、その合計が図Aの「所得控除の額の合計額」(6)になります。
たとえば、会社に勤めていて、配偶者が専業主婦、大学生の息子が1人いる場合、配偶者控除が38万円+特定扶養親族控除(19歳以上23歳未満)が63万円控除です。20歳以上の大学生は、国民年金に加入します。国民年金保険料は、「学生納付特例制度」を使うと支払う必要はありません。しかし、親が支払うと国民年金保険料は全額所得控除(平成26年度は、195120円)になります。税率10%だとすると、所得税が約2万円少なくなります。
その他にも、会社で確定拠出年金のマッチング制度が導入されている場合、制度を利用すれば全額所得控除できます。要するに所得控除を使えば、会社員も節税することが可能なのです。
「支払金額」(1)から、こうしたものをすべて引き、そこに税率をかけたものが「源泉徴収税額」(2)となります。これが、あなたが国に支払った所得税の金額です。
▼有能なビジネスパーソンは源泉徴収票をスルーしない
所得税は、支出が多い方や収入が少ない方に、負担が重くなり過ぎない仕組みになっています。
会社員は、源泉徴収や年末調整の制度があり、税金や社会保険料を支払っている実感が少ないと思われます。
今回のような確認作業をすると、税金の使い道が気になったり、社会保険料の大きさに驚いたりとさまざまな発見があります。そのことが節約意識を高めることや、人生のマネープランの立案・修正に役立つのです。
私の経験上、有能なビジネスパーソンほど月1回の給与明細や、年1回の源泉徴収票をスルーしないで、しっかり確認するルーティンを持っています。
■【お得コラム】ここをチェックしないと損をする「保険料控除」
生命保険や地震保険に加入している方は、先ほどの源泉徴収票の3段目、右から2つめと3つめの欄を見てください。きちんと保険料は控除されていますか?
たとえば、生命保険に加入していて年間8万円(月約7000円)の保険料を支払っている方は、最大4万円の控除を受けることができます。年間所得が195万円超330万円以下の方(所得税率10%)で4000円、330万円超695万円以下の方(所得税率20%)で8000円がもどってきます。
地震保険や火災保険などの場合も同様です。
それでは、どうすればこの控除を受けられるでしょうか。
会社員は、基本的には勤務先の会社で行う年末調整に含めて手続きをしてもらえますので簡単です。毎年10月頃〜年末までに、保険会社から「保険料控除証明書」が送られてくるはずですので、それを勤務先の担当部署へ提出してください。
自営業の方は、確定申告で手続きをすることになります。
(ファイナンシャル・プランナー・社会保険労務士 井戸美枝=文)
あとでじっくり読みたい記事ですので、とりあえずカテゴリーを「memo」に入れておきます。