上を向いて歩こう

昔々の大昔のお話なんですけどね。

私ね。子供時代、

いじめられてたことがあったの。

存在無視とか逆に暴言とか

教科書隠しとか水ジャパーンとか。

まあ、一通りなこと、ね。

小学校高学年まで島外で暮して

それから島に戻ったのね。

だから島の方言も分からない

私の話し方といえば、

いわゆる標準語のイントネーションで。

こいつ何テレビの人マネしてるば？

と言われ揶揄われて、

(←確か最初のきっかけはそうだった)

それで焦ってオドオドした私は、

だからまあ徐々にイジメの標的にされたよね。

とりあえず。主にイジメの主導権は、

カースト上位の子たちだったのね。

だから皆それに習っていたよね。

先生は黙認というかそんな感じ。

まあ、

というわけで人生初のドン底を

小学生で体験したよね。暗かったね。

上を向いて歩こうよって坂本さんが

全世界に向けて歌って大流行したらしいけどさ

私はもう、下を向いて歩こうだったよね。

目を合わせたら、

何因縁つけられるか分かんないから。

でも私にとって幸運だったのは、それ。

下を向いて歩いてたってこと。

いじめられても、

ああ、私が悪いんだなって。

(あくまで私にとって幸運だったと思う

ことです。私の性格上、適切であったわけで

全ての人がもしもそうであったなら、

怨恨とかそんな言葉生まれないよね)

よくさ。

いじめられている君は悪くない

とか負けないでとか最近は言うよね。

私は逆で。

私の方が悪いんだと思っていたの。

島での標準から外れている私が悪いな、と。

思い込ませたという方が正しいかな。

めちゃくちゃ言い聞かせたの。だって、

その方が楽だったから。私にとって。

私は悪くないって思うのってめちゃくちゃ

パワーがいるし、ストレスかかるし、

もしかして被害者意識が高まるかもしれない。

めちゃくちゃ逃げたの。

下を向いて目をつぶってやり過ごしたの。

そんで未来を夢みてた。大人になったら。

大人になったら変わってやるんだって。

そうだそのためにはこの島から出ようって。

そんなわけで、

少しの引きこもりと、少しの友達を得て

(高校生になってそれらはなりを潜めたから)

無事卒業を迎えた次の日に島から出たよね。

これでもう自由だと。やっとだと。

それからはもうheavenよね。

遅咲きの開花よね。爆発してやると。笑

坂本さん、

これから私は上を向いて歩きますよって。

あ。なんだか前置きが長くなっちゃった。

んで。

冒頭からこんな昔話を繰り出して

何が言いたいかというとね。

再会したのね。

昔々のいじめっ子だった子に。それも

同級生の中で頂点に君臨していた子に。

いじめっ子女王様、ママになってたよね。

その子供ワーワー騒ぎながら

縦横無尽に店内を走り回ってたよね。

そんな我が子を気にするわけでもなく

通路の中央で他のお客様を顧みず、

堂々と通路を塞いだまま井戸端会議してる

軍団の中にその彼女は居たの。

相変わらず女王様な感じだったな。

とそこに店長からインカム。

うみさん。

店内走り回っているお子様がいます。

注意喚起のアナウンスお願いできますか。

きたよ。これ。きたよ。

私は思ったよね。心なしか

何故か泣きそうになっちゃって

目頭うるんだよね。なんでかな。

ねえ。

昔、私をいじめてた貴女。

よく聴きなさいよ。

耳の穴かっぽじってよく聴きなさいよ。

私は大きく息を吸って吐いて

気持ちを落ち着かせたのち

アナウンスを開始したよね。

貴女が気持ち悪いと馬鹿にしていた

方言イントネーションがない口調で

親御さんになった貴女に向けて

アナウンスしたよね。

店内に響く私のアナウンス。

それを聞いた貴女。

大騒ぎで子供を回収しながら、

アナウンスしたスタッフは誰だと

言わんばかりに視線を泳がせたよね。

そうして。

見つけたよね。私を。

私と目が合ったよね。

その時、

貴女の表情が変化したのがわかった。

思い出したの？私を？知らんけど笑

ご協力大変ありがとうございます。

だから私もまっすぐ貴女を見つめたのち

笑顔で最後のセリフ(マニュアルには無い)

を口にしてお辞儀をしたよね。

女王様、子供に

あんたのせいで怒られたじゃないの！

って文句ぶつけながら退店していったわ。

ねぇ、貴女やっぱり間違ってる。

だからねえ。

ほんとにこれだけは言ってあげたいの

夢見枕でもいいからさ

昔の幼かった私に伝えてあげたいの

誰も味方が居なくて孤独だった

伝えられるものなら本当に

あの頃の私に言いたいの。

あんたほんとよく頑張ってる。

辛いよね。分かるよ。と。

今日ね、少しだけかもしれないけど

敵とってきたからね。と。

それからね。ぎゅーぎゅーと

目一杯抱きしめてやるんだ。

あ。それとね。女王様、

体型崩れまくってさらに巨大化してたよ。

すげぇおばちゃんになってっから。

という情報も付け加えてあげたい。