我が旦那さんは、
最近夜遊びが激しい。
きちんと夕飯を食べ終えて
それからいそいそと準備しだす。
ウキウキとしている気配を
存分に醸し出して。
そんな旦那さんが、
本日お休みで家に居るワタクシを残して
夜遊びに繰り出そうとしている。
(まあ、ほっとかれるのは全く構わない)
今夜も夜遊びですか?お盛んですね。
そうだね。島の男の嗜みだからね。
ほう。嗜み、ときたか。
さてと。
じゃ、行ってくるね。
笑顔の旦那さんは立ち上がる。
夜に繰り出す。島の男の嗜みとやらに。
釣り竿を担いで。
そう。
旦那さんは夜釣りという名の
夜遊びに出かける。
この時期はイカがよく釣れるそうで
イカファイターの旦那さんは、
動画を観て研究したり、備品を新調したり、
アプリを駆使して狙いどきを選んだり
楽しく真剣に夜遊びに取り組む。
そのおかげか、
(彼は日頃の行いの良さだねと豪語する
それを聞かされた計算高い嫁は
にっこりと微笑んでみせる)
釣果はなかなかである。
しかし。
私がそれらを調理することはない。
触ることすら恐怖だ。
ホタルイカくらいなら可愛いものだが、
この島に生息するそれらはデカイ。
それ故に非常にグロテスクに視覚を刺激する。
ヌメヌメと動くさま。
そのどぎつい目ん玉。
うごめく触手。
もう、エイリアンにしか見えない。
どれが足だとか手だとか触手だとか
もはやそれがひっくるめて何本だとか
そんなの知ったこっちゃない。
だってもうエイリアンなのだから。
エイリアンのことなんざ
知らなくても構わない。←
先日のこと。
深夜、仕事から帰宅した私は
水を飲もうと冷蔵庫を開けた。
そうしたら、
何かが私の足元に落ちた。
それは、
ビニール袋に包まれた、
旦那さんが釣り上げたイカであった。
もう!実家に持っていってと言ってるのに!
(巨大イカを調理するのを私が拒否しているので
それはもっぱら実家の義母に委ねられる)
プンスカ怒りながら、
恐る恐る袋を持ち上げた。
その時。身の毛が逆立った。
私はそうして凍りつき、
静かにそれを床に置いた。
エイリアンが
触手を持ち上げてみせたから。
盛り上がるビニール袋。
エイリアンが、エイリアンが、
地球人に挨拶をしている。
コンバンワ。地球人ヨ。
生きてる!!まだ生きてる!!
私は、寝室に飛んで行き
旦那さんのお尻を引っ叩いた。
起きて!起きて!生きてる!生きてる!
ああ?
そう言いながら渋々起きた旦那さんで
あるが、状況はすぐに察したようだ。
あー。締めが(トドメの刃)甘かったか。
そう言いながら台所へと向かう。
うみさん、うみさん、
コイツまだ元気だよ。
流石2キロ越えだね体力あるね。
見てよ。締め方教えてあげるから。
台所の入り口で見守ってる私に
旦那さんが恐ろしい提案をする。
遠慮します。聞きたくありません。
島の男の嗜み、の。
思わぬとばっちり。恐怖。