林業は山の樹木を切る仕事。
第二次世界大戦後に外国材が安く輸入されるようになり、
材木の価格は1/4に、
林業従事者は1/5に減ってしまったといいます。
衰退の一途と言わざるを得ません。
そんな厳しい状況下、
現在も木を切ることを生業にしている人たちがいます。
中でも巨木・大木の伐採を専門とするのが「空師」と呼ばれる職人たちです。
樹高数十mの巨木に登り、
木材としての価値を落とさぬよう計算して効率よく伐採するスキルは、
江戸時代から伝わる伝統術。
そんな彼らを取材したNHKの番組を見つけましたので紹介します。
■ 「“空師”〜吉野の山に生かされて〜」
そびえ立つ木に登り伐採する「空師」。ロープを巧みに操りさまざまな体勢でチェーンソーを扱う職人だ。奈良県吉野地方の空師・中平武さんに密着。山奥に眠る巨木に挑む。 日本屈指の林業の地、奈良吉野で一目置かれる空師・中平武さん43歳。そびえ立つ木に登り伐採する職人だ。技術を極めることで廃れゆく林業を活性化したいと空師を志した中平さん、この秋挑んだのは空師の技を用いなければ切ることのできない山奥の樹齢200年を越える巨大なとちの木。共に伐採に立ち向かったのは背中を追い続けてきた父。予想もしない試練の連続。空師の誇りをかけた挑戦の結末は。知られざる大和の空師の物語。
現代の「空師」はロープを巧みに操り、
チェーンソーを駆使して巨木を伐採します。
そのバリエーションと言っていいのかわかりませんが、
「枝打ち師」という職人もいます。
京都の北山杉は真っ直ぐな材木です。
その樹形を整えるために不必要な枝を伐採(枝打ち)する必要があります。
それを担うのが「枝打ち師」。
こちらは命綱たるロープを使いません。
下に降りてまた登ると仕事の効率が悪いので、
木から木へ、樹上を飛び移ります。
木を自ら揺らして隣の木に飛び移る様は、
サーカスレベルの職人芸。
今から30年前、
とあるマンガにこの「枝打ち師」が描かれており、
その時初めて知りました。
その民話の世界のようなストーリーと絵に惹かれましたが、
今となってはマンガの名前も作者も忘却の彼方。
ああ、また読んでみたいなあ。
<番組ディレクターから>
【この番組を企画したきっかけは】
以前、別の番組で取材をさせていただいたことがきっかけでした。ひとつの木を植えてから、商品として切りだすまでにかかる時間は100年以上。自分の代だけでなく、自分の前の世代、そして後の世代にも思いをはせながら仕事をする、林業ならではの仕事観に感銘を受け、より深く取材したいと思っていました。そんな折に、中平さんからお聞きしたのが、「空師」の仕事の話。地上での伐採でも大迫力なのに、木の上での伐採はいったいどんなものなのか。再びの取材をお願いし、番組の企画に至りました。
【制作でこだわった点、もしくは、苦労した点】
制作で一番大変だったのは、ロケで中平さんたちについていくことです(笑)普段から山で仕事をする彼らはどんな傾斜でもやすやすと歩きますが、我々クルー(特に私)はついていくのに精一杯。筋肉痛と日々戦いながらも、中平さんたちから手厚くフォローいただき、なんとかロケを完遂できました。山奥で初めてのテント泊をしたことは、個人的にも一生忘れられない思い出になりました。
【取材をする中で印象に残った言葉】
「俺らは吉野の歴史の中のほんの一部分やから」、その言葉が深く印象に残りました。自分自身、これまでの人生で自分の人生と何かの歴史が紐付いていると感じたことは全くなかったので、木や山を通してその土地の歴史の一部分に自分がいるという感覚をもつ中平さんたちの生き方に非常に心惹かれるものがありました。普段生活していると、自分のことでいっぱいいっぱいになってしまうのですが、もっと大きなものに目を向けたら(それが自分にとって何なのかはまだ分かりませんが)違う世界が見えるのかもしれないと考えさせられました。