初版:1971年発行(学研)
新版:2007年発行(未知谷)
地元の里の川でホタルを見ることができて感動した私は、本棚からホタル関係の本を引っ張り出して読んでみました。
著者は小学校の先生。徳島県は美郷村という山里の中枝小学校で宿直をしているとき、子ども達から「ホタル狩り」の誘いを受けたのがそもそもの始まりでした。川面に乱舞するゲンジホタルの大群に魅せられ、子ども達とともに観察を始め、人工飼育に挑戦し、3年がかりで卵から成虫になるまでを見届けた活動の記録です。
ホタルについてほとんど知識がなかった私ですが、この本の中の小学生達に教わっているような錯覚を受けました。
・成虫だけではなく卵も幼虫もさなぎも光ることを初めて知りました。
・カワニナという巻き貝しか食べない幼虫、水しか飲まなくて生殖活動を終えると3週間の命を終える成虫(「ホタル来い」の歌に習って砂糖水を与えたら死んでしまった!)。
・キレイな清流に住むホタル・・・鉱山の廃液が流れる川には一匹もいない事実。
本で調べてお終いではなく、実際に飼育して卵から成虫になる過程を詳細に観察し、試行錯誤の中で知識を確認していく熱意と集中力に脱帽しました。その生き生きとしたまなざしを記録に残したいと先生も思ったのでしょう。
初版の年代から計算すると、ホタル研究部の部員は私より少し先輩達。私の田舎にはすでにホタルはいませんでしたが、春夏のザリガニ釣り、小川にはメダカが泳ぎ、秋には赤とんぼの大群が空を埋め尽くす自然が残っていました。
現在の子ども達は「人為的に造られた遊び空間」しか与えられず、未知の自然に踏み入って行くときのドキドキ感が経験できなくてかわいそうですね。
一時、ホタルの研究で盛り上がった村も時代の流れの中で過疎を免れず、中枝小学校は廃校へ。図らずも、貴重な記録となってしまいました。
~自分のためのメモ書きです~
■ ホタルが飛びやすい条件:
・水温が14~16℃、それより高くなると上流へ移動していく。
・雨の降る夜や月の明るい夜は少ない。
・空が曇って湿度が高く、気温も高い夜に多い。
■ ホタルの飛行に関する知識:
・当たりが薄暗くなる7時過ぎに飛び出し、9時頃最もたくさんの数になり、それからだんだん数が減り、夜中と、朝の3時頃またちょっと増えるが、その後減り続け、やがて夜明けとともに姿を隠す。
・最初にオスが飛び始め、約2週間遅れてメスが飛び出す。
・オスは飛ぶ力が強く、メスは弱い。
・昼間はほとんど動かないで、草や木の葉の裏側や、葉の付け根の引っ込んだところにずっと隠れている。
■ ホタルの産卵(飼育観察):
産卵はいつも夜が更けてから行われた。苔の間をあちこち這いまわっていたメスのホタルは、卵を産むのにいい場所(ほとんどが隅の方)を見つけると、お尻を上下に振りながら、苔にこすりつけるようにして産みつけていく。そして、生み終わった後しばらくはそのあたりを這っているが、やがて草の影に身を隠して死んでしまう。
■ ヘイケボタルの観察より:
・汚い水辺に住んでいる
・大きさはゲンジボタルの約半分で、メスは10mm、オスは9mm。
・ゲンジボタルはふわりふわり曲線のカーブを描いて柔らかく飛ぶが、ヘイケボタルはすっ、すっと直線的に鋭く飛ぶ。
・光る回数はゲンジボタルと変わらないが、光はうんと弱い。
・・・ホタルが光る、その大元は「ルシフェリン」という化学物質です。実は私、今から15年前にこのルシフェリンを使って実験・研究をしていました。正確には「ウミホタル・ルシフェリン誘導体」という物質を用い、肺胞マクロファージという細胞から産生される活性酸素を喘息の薬が抑制するかどうか、という研究です(専門用語でよくわかりませんね)。一応この研究で医学博士の資格をいただきました。
重ね重ね、ホタルに感謝。
新版:2007年発行(未知谷)
地元の里の川でホタルを見ることができて感動した私は、本棚からホタル関係の本を引っ張り出して読んでみました。
著者は小学校の先生。徳島県は美郷村という山里の中枝小学校で宿直をしているとき、子ども達から「ホタル狩り」の誘いを受けたのがそもそもの始まりでした。川面に乱舞するゲンジホタルの大群に魅せられ、子ども達とともに観察を始め、人工飼育に挑戦し、3年がかりで卵から成虫になるまでを見届けた活動の記録です。
ホタルについてほとんど知識がなかった私ですが、この本の中の小学生達に教わっているような錯覚を受けました。
・成虫だけではなく卵も幼虫もさなぎも光ることを初めて知りました。
・カワニナという巻き貝しか食べない幼虫、水しか飲まなくて生殖活動を終えると3週間の命を終える成虫(「ホタル来い」の歌に習って砂糖水を与えたら死んでしまった!)。
・キレイな清流に住むホタル・・・鉱山の廃液が流れる川には一匹もいない事実。
本で調べてお終いではなく、実際に飼育して卵から成虫になる過程を詳細に観察し、試行錯誤の中で知識を確認していく熱意と集中力に脱帽しました。その生き生きとしたまなざしを記録に残したいと先生も思ったのでしょう。
初版の年代から計算すると、ホタル研究部の部員は私より少し先輩達。私の田舎にはすでにホタルはいませんでしたが、春夏のザリガニ釣り、小川にはメダカが泳ぎ、秋には赤とんぼの大群が空を埋め尽くす自然が残っていました。
現在の子ども達は「人為的に造られた遊び空間」しか与えられず、未知の自然に踏み入って行くときのドキドキ感が経験できなくてかわいそうですね。
一時、ホタルの研究で盛り上がった村も時代の流れの中で過疎を免れず、中枝小学校は廃校へ。図らずも、貴重な記録となってしまいました。
~自分のためのメモ書きです~
■ ホタルが飛びやすい条件:
・水温が14~16℃、それより高くなると上流へ移動していく。
・雨の降る夜や月の明るい夜は少ない。
・空が曇って湿度が高く、気温も高い夜に多い。
■ ホタルの飛行に関する知識:
・当たりが薄暗くなる7時過ぎに飛び出し、9時頃最もたくさんの数になり、それからだんだん数が減り、夜中と、朝の3時頃またちょっと増えるが、その後減り続け、やがて夜明けとともに姿を隠す。
・最初にオスが飛び始め、約2週間遅れてメスが飛び出す。
・オスは飛ぶ力が強く、メスは弱い。
・昼間はほとんど動かないで、草や木の葉の裏側や、葉の付け根の引っ込んだところにずっと隠れている。
■ ホタルの産卵(飼育観察):
産卵はいつも夜が更けてから行われた。苔の間をあちこち這いまわっていたメスのホタルは、卵を産むのにいい場所(ほとんどが隅の方)を見つけると、お尻を上下に振りながら、苔にこすりつけるようにして産みつけていく。そして、生み終わった後しばらくはそのあたりを這っているが、やがて草の影に身を隠して死んでしまう。
■ ヘイケボタルの観察より:
・汚い水辺に住んでいる
・大きさはゲンジボタルの約半分で、メスは10mm、オスは9mm。
・ゲンジボタルはふわりふわり曲線のカーブを描いて柔らかく飛ぶが、ヘイケボタルはすっ、すっと直線的に鋭く飛ぶ。
・光る回数はゲンジボタルと変わらないが、光はうんと弱い。
・・・ホタルが光る、その大元は「ルシフェリン」という化学物質です。実は私、今から15年前にこのルシフェリンを使って実験・研究をしていました。正確には「ウミホタル・ルシフェリン誘導体」という物質を用い、肺胞マクロファージという細胞から産生される活性酸素を喘息の薬が抑制するかどうか、という研究です(専門用語でよくわかりませんね)。一応この研究で医学博士の資格をいただきました。
重ね重ね、ホタルに感謝。