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発達障がい・こころのやまい

専門外ながら相談を受けることがあり、その際に読んだ本や集めた情報を書き留めました(本棚9)。

うつ病治療ガイドライン2016(2024年に改訂)の信頼性

2025-04-12 06:41:58 | うつ病
少し前の話題になりますが、
2016年に発表された「うつ病治療ガイドライン」(日本うつ病学会)の問題点が2024年に修正された、
という記事が目に留まりました。
(はて、どういうこと?)
と気になり読んでみました。

その内容は「引用文献(原著論文)を読み込まないまま引用」に尽きるようです。
これは、一般の医学論文でも時々見かける現象です。
一つの論文を作成するためには、
参考にした文献を添付する必要があります。
それが結構膨大な量になり全部に目を通す余裕がないため端折る、
ということ。

後々残る資料ですから、許されないことですが。
とくにアカデミズムの集約である学会が発効するガイドラインでは、
あってはならぬこと。
学会への信頼性が大きく揺らいだことは否めません。


▢ 日本うつ病学会治療ガイドラインの修正版が公表うつ病治療ガイドラインの疑義は晴れたのか「修正によって治療方針を変更する必要が生じるものではない」、だが…
三和 護=医学ジャーナリスト
2024/06/27;日経メディカル)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 日本うつ病学会は2024年3月11日、理事長名で「日本うつ病学会ガイドライン修正についてのお知らせ」を公表した。『日本うつ病学会治療ガイドライン II.うつ病(DSM-5)/大うつ病性障害2016』(以下、うつ病治療ガイドライン2016)の引用文献に対する疑義が発表されたのを機に、同学会が検証した結果、対象の文献157件のうち37.6%に問題ありと判断された。この影響でステートメントの削除・修正が39カ所で行われる事態に発展。学会は「修正によって治療方針を変更する必要が生じるものではない」とするが、傷付いた学会ガイドラインの信頼性をどうやって取り戻すかは今後の課題となる。

▶ 引用文献の約4割に問題、ステートメント削除・修正は39カ所
 これまでの経緯を振り返っておきたい。2023年、福井大学医学部精神医学准教授の大森一郎氏らは、ステートメントと引用文献の内容とに食い違いがあると研修医が気付いたことを機に、『うつ病治療ガイドライン2016』の内容について批判的吟味を行った。その結果、第3章「中等症・重症うつ病」で65カ所、第4章「精神病性うつ病」で26カ所に、それぞれ「適切とは考えにくい引用文献」が確認され、第119回日本精神神経学会学術総会と第20回日本うつ病学会総会で発表した(関連記事:うつ病治療GLで「適切とは考えにくい引用文献」を指摘うつ病治療ガイドラインに投げかけられた疑問符)。
 これらの指摘を重く受け止めた日本うつ病学会は、学会外部メンバーを含めた検証ワーキンググループで議論を重ね、その結果を2024年3月11日に公表した1-5)。それによると、「問題あり」と判断された引用文献は、検証対象157件のうち37.6%に相当する59カ所に及んだ
 次に検証ワーキンググループは、問題が判明した引用文献を根拠とするステートメントについて、修正の必要性を検討。その結果、ステートメントの全文削除が8カ所(文末の表1、2)で、文言修正が31カ所でそれぞれ行われた。引用文献の修正のみ(削除、差し替え、追加など)は、15件だった(図1)。なお、こうした修正を反映させた『うつ病治療ガイドライン2016』は、3月1日付で公表されている6)。
・・・こうした全文削除や文言修正の理由については、公開された検証シート(「第3章 中等症・重症」3)、「第4章 精神病性」4))の中で説明されている。
 なぜ「不適切な引用文献」が多発したのか。一般論ではあるが、2つの段階で問題があったのではないか。一つは引用文献の探索の段階で、原著論文を読み込まないまま引用してしまった可能性だ。もう一つは引用文献の確認の段階で、ダブルチェックが不十分だった点。さらに、こうしたミスを長年にわたって放置してきた学会のチェック機能の不備も重なったことになる。

▶ 「おわびして修正いたしました」
 今回の修正を受けて日経メディカルでは、日本うつ病学会に対して、修正率37.6%の評価、うつ病の臨床現場および今後の学会活動への影響などについて見解を求めた。その結果、6月19日までに、日本うつ病学会理事長の渡邊衡一郎氏(杏林大学)とガイドライン検討委員会委員長の馬場元氏(順天堂大学)の連名で文章による回答を得た。以下に抜粋する。

Q 修正率37.6%という数字をどのように評価しているのか。また、引用文献に問題があったためステートメントの削除・修正が行われたが、その臨床現場への影響をどのように考えているのか。

A 検証の結果、第3章および第4章において多数のステートメントの修正・削除がなされました。これだけ多くの修正・削除があったことを当学会としては大変重く受け止めており、「お知らせ」にも記載した通り、おわびして修正いたしました。この結果は、臨床現場において診療にあたる医師や、患者さんご本人、ご家族など当事者の方々に不安や混乱を与えたものと思われます。一方で今回の修正・削除は、本ガイドラインに記載されている治療の推奨を変更するものではありませんでした。これも「お知らせ」に記載しました通り、このガイドライン自体がMinds 診療ガイドライン作成マニュアルに沿って作成されてはおらず、当時のエキスパートらのコンセンサスを基本とした治療の推奨となっております。このため今回の修正によって推奨そのものが変わるようなことはございません。つまり今回の修正によって治療方針を変更する必要が生じるものではないと考えております。

Q こうした訂正が実現できたことは、今後の日本うつ病学会の活動にどのようなプラスの影響をもたらすと考えるか。

A 今回の指摘とそれに基づく修正が実現できたことは、ガイドライン作成の方法論を見直す機会となり、より精度の高いガイドライン作成に向けての重要な経験になったと考えております。今回の事態をプラスに捉え、うつ病に関わる全ての人々にとって有用な、質の高いガイドラインを作成していきたいと思います。

▶ 批判的吟味の呼び掛けが信頼回復の第一歩に
 回答にあったように日本うつ病学会は現在、日本医療機能評価機構のMinds 診療ガイドライン作成マニュアルに沿った新しい『うつ病診療ガイドライン』を作成中だ。7月に開かれる第21回日本うつ病学会総会で、ガイドラインの草稿を発表する運びとなっている。
 一方、問題のあった『うつ病治療ガイドライン2016』は、エキスパートコンセンサスに基づいて作られたものになる。今回の修正によって「治療方針を変更する必要が生じるものではない」というコメントは救いになろうが、多くの修正・削除が行われた学会ガイドラインの信頼性をどうやって取り戻すかは今後の課題だ。全く新しいガイドラインになるからといって、信頼性が全面的に回復するとは限らない。一つの解決策は、修正のきっかけとなった研究を主導した大森氏らの「批判的吟味」(下記「大森氏のコメント」参照)という視点を、学会員のみならずガイドラインを利用する全ての医療関係者が持ち続けることではないだろうか。そのことを学会自らが呼び掛けることは、信頼回復の第一歩になるに違いない。

▶ 日経メディカルに寄せられた大森氏のコメントから
 「明確な臨床疑問を持ち、適切な論文を見つけ、批判的に読む。その結果を目の前の患者の診療にどう生かすかについて、経験を踏まえて考える。患者の意向を最大限尊重する。今回の批判的吟味の取り組みは、そうしたプロセスの大切さを改めて考えるきっかけになりました。ともに学ぶ福井大学の若い医師が、この取り組みを通じて『ガイドラインをうのみにすることはできない。原著論文をきちんと読まなければならない』という実感を持ってくれたことは、私にとって大切なアウトカムの一つです」

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「10代のうつ病」(NHK健康ライフ)

2018-11-19 07:35:05 | うつ病
 早朝のNHKラジオ番組「健康ライフ」で「10代のうつ病」(青山学院大学教育人間科学部 小児科医・児童精神科医 古荘純一Dr.)を放送していました。

 通して聞いてみて「子どもの体が現代社会を拒否した結果、子どものうつ病が増えてきているのではないか」と感じました。
 戦後社会が発展し、効率化を求め続けてきました。無駄のない生活は窮屈なもの。
 それを強制し続けるとストレスとなり、それが蓄積すると体をむしばんでいく。
 一線を越えると逃避行動として「うつ病」を発症する、いや、自分が壊れることで自分を守っているのかもしれません。

 子どもが追い詰められてうつ病を発症するような家族は、両親も追い詰められている可能性が大きいと思われます。
 両親を追い詰めているのは、“社会”です。
 効率化や業績を求める姿勢がなくならない限り、この傾向は変わらないのでしょう。


 気になったところをメモ。

<メモ>

「見逃されてきた子どものうつ病」
(2018.10.22放送)
・子どものうつ病は増えている。20年くらい前から実感しはじめた。
・腹痛や頭痛を繰り返し訴え、学校を休みがちになる子どもの経過を見ていると、精神的な不調が目立つようになり、行動面の問題(イライラして切れやすくなる、対人関係が気づきにくい、切れやすくなる)、焦燥感が強いなど一見うつ病とは反対の症状が現れてくることがある。眠れない、疲れやすい(朝目が醒めたときから疲労感がある)という訴えも目立つ。
・しかしこのような子どもの中に、ときに悲しみに満ちあふれている、自信を喪失していることも観察される例がある。悲壮感に溢れ、楽しみしていることもできなくなる。多彩な症状を訴えるこのような子どもたちをうつ病という視点でみると合致することに気づいた。
・当時はこのような子どもに「心身症〜起立性調節障害や心因反応」「不定愁訴」と診断名を付けていた。
・1980年代に海外で「子どものうつ病」の報告が増えてきて注目されるようになり、日本でも児童精神科医がその視点から診察するようになり、認知されるようになった。
・子どものうつは稀な病気ではない。抑うつの尺度を用いて評価すると、9〜15%の子どもが抑うつ度が高いと判断された。その子どもを実際に面接すると、そのうち2割程度に臨床的にうつ病の可能性が高いことが判明した。中学生に当てはめると、3〜5%になり、世界的な頻度(3%)と変わらない。クラスにひとりはうつ病予備軍/うつ病が存在する。
・「落ち込み」と「うつ病」の違い。うつ病は悲しい感情が強く、悲壮感(自分は取るに足らない人間だ、自分のすることはすべて失敗する等)にとらわれていて簡単に修正ができない。ただし子どもでは大人ほど長くは続かない(楽しいことがあったり、気分転換ができると回復しやすい)ことも特徴。それに加えて身体の不調(身体症状、身体反応)を訴える。
・子どものうつ病は表面化しにくい。以前はその存在が指摘されていなかったこと、「こどもにはうつ病はない」という医療者の先入観もその理由。
・古典的にはうつ病は中壮年の男性の病気と捉えられてきた。
・元気のない子どもに「精神を強く持て」「時間が経てば治る」「大人になれば治る」と様子観察されて見落とされてきたが、それで改善する子どもがたくさんいる一方で、一部の子どもは体の不調の訴えが続き、その後身体の不調を訴えるようになり、日常生活もうまくできなくなっていく、といううつ病の経過を辿る例もある。

「大人のうつ病との違い」
・脳の中で起きていることは同じであるが、大人と子どもでは言動が異なるので、症状も異なってくる。
・子どもでは攻撃的な行動が特徴である。大人では見られないような、イライラした気持ち、じっとしていられない、攻撃的な言動を繰り返すなど、一見うつ病ではなく、発達障がい、ほかの精神疾患、単なる反抗などを思わせる症状が目立つ側面がある。ただ、それに伴い大人で見られるような身体的な不調、精神的落ち込みの要素も見られることがしばしばある。
・身体症状として眠れない(不眠)が目立つことが特徴である。大人のうつ病同様の「早朝覚醒」や「中途覚醒」がみられ、これらはふつうの子どもには見られない(「寝付けない」はときどきある)。
・子どもに特化したうつ病の診断基準はなく、大人用の診断基準を当てはめて用いるのが現状。ただし同じ質問をしても反応が異なるため、子ども用の「抑うつの尺度」がある(18の質問項目を3段階に分ける)。
・原因は他の精神疾患同様、先天的因子+後天的因子(環境因子)とされる。発達障がいや統合失調症と比較して環境因子が強く影響すると言われている。後天的因子の中では心理的ストレスが重要であり、年齢が早いほど、ストレスが多いほどリスクが高いことがわかってきた。
・子どものうつ病が増えている背景は、後天的因子の影響が大きいと考えると、急速な近代化に伴い社会環境・構造が大人に便利なように変化してきたため、社会的弱者である子どもがついて行けない、ストレスを感じてしまう、などが考えられる。
・子どもの方が社会の変化に柔軟に適応できそうなものであるが、表面上はそうでも、環境の変化には適応しにくい傾向がある(例:一晩眠れないとそれを子どもが取り戻すのは大変)。
・受診のタイミング:休息を取っても調子が戻らない、興味を持っていたものを楽しめない、午前中は調子が悪く夕方調子がよくなるが寝ても回復しない、朝起きてから眠気がなかなかとれない・だるい〜睡眠障害がある、気持ちが落ち込み自分を責めるような言動(極端な例では「死にたい」)。

□ 「子どものうつ病の対処法・治療法
・まずは正確な診断・鑑別診断。
・診断後にできることは「環境調節」「精神療法」「薬物療法」の3つ。
・環境調節:子どもが体調不良を訴えたときは、大人が思っているより疲れている。精神論、大人の都合による治療目標(いつまでに治そう、等)を語りだすと子どもを追い詰めてしまう。
・精神療法(認知行動療法):発想方法の転換を訓練し、身につけていく。
・薬物療法:子どもに適応がある薬物は日本にはないが、大人用の薬を使っているのが現状。

□ 「子どものうつ病に潜むもの
・ストレスを多く感じる子どもほど、うつ病になりやすい。大人のペースに合わせた生活にするとストレスを感じやすい。
・「睡眠不足の自覚」がキーワード。
・過剰な情報を処理し切れていないこと、それにこだわることがストレスになる。
・いじめを契機に発症することがある。
・うつ病になると、すべてのことを否定的に捉えるようになり、自分のことも否定的に捉える(自己卑下)。QOLが低いこと、自尊感情が下がることがうつ病と強く関連する。
・小学生〜中学生にかけて自分の限界が見えてきて、一般的に世界的にも自尊感情は下がる傾向があるが、日本人はそれが顕著である。

□ 「子どものうつ病の予防と対策
・防ぐためには、子どもたちのストレスを減らすこと。
・今の子どもたちは学校で強いストレスを感じている。
・学校では「集団」と「個別」を使い分けられていない。
・信頼できる大人が必要。スクールカウンセラーや医師に相談する。
・メールは相手の表情が見えないので、傷つけることがある。直接相手の表情を見て離す必要がある。
・SNSは24時間監視されている状況を作りやすい。
・うつ病予備軍に早く気づくことが大切。発達障がい、不登校はうつ病を発症しやすい。
・子どもの回復力を信じる。それを以下に引き出すか、支えるかが大切。
・そのためには親のストレスをなくす、社会のストレスをなくすことが必要。
・子どもだけではなく養育者のサポートも必要。養育者を追い詰めては解決しない。

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うつ病にまつわる5つの誤解

2018-02-17 07:40:46 | うつ病
 「うつ病は“こころの風邪”」と呼ばれた時代もありました。
 が、現実を知る人々には違和感がありました。

 わかりやすく解説した記事が目にとまりましたので紹介します。

※ 下線は私が引きました。

うつ病にまつわる5つの誤解
2018/2/16:All About
 うつ病に関するよくある5つの誤解について詳しく解説します。

◆まだ誤解されがちな「うつ病」という病気
 自分や身近な誰かが心の病気になってしまった時、回復の第一歩として大切なことは、まずその病気をよく理解することです。
 心の病気は一般的に病態が複雑なことも多く、また、誤解されがちな点もあります。これらは病気を正しく理解する妨げになってしまう可能性もあります。
 ここでは代表的な心の病気の一つである「うつ病」を取り上げて、よくある誤解について詳しく解説します。

◆うつ病は「気持ちの弱い人の病気」という誤解
 うつ病を本当の「病気」として見ずに、その人の性格や性質に原因がある単なるパーソナリティの問題のように見なすことは、うつ病にありがちな誤解の一つです。
 例えば、「うつ病は気持ちの弱い人に起こる問題だ」といった考え方です。
 こうした誤解が強くある方がうつ病を発症してしまった場合、精神科を受診することは自分の弱さを認めることだと誤った認識をしてしまうこともあり、これにより、必要な治療がなかなか始められないことも考えられます。
 うつ病は基本的には脳内に何らかの問題が生じたことが原因で起こるもので、抗うつ薬などで対処する必要がある病気です。
 当人のパーソナリティといった単一の要因で簡単に説明できるものではなく、遺伝子レベルの要因、心理的な要因、そして生活環境などの問題が複雑に関わったときに発症すると考えられています。
 うつ病は決して特定の性格の人に起こる病気ではありません。逆に言うと、普段自信に満ち溢れている人でも、いわゆる気の強い性格の人や、明るく社交的な人でも、複数の要因が揃ってしまうと、うつ病を発症する可能性があります。

◆うつ病になると必ず不眠症状が出るという誤解
 うつ病をある一つのイメージで捉えている方も少なくないと思います。
 うつ病発症の初期にそれらのイメージ通りの症状が現われていれば、病気に気付きやすいですが、うつ病の症状にかなり個人差があることは意外と知られていないかもしれません。発症時の状況がイメージから外れていた場合、初期症状を見逃してしまうことになります。
 例えば、うつ病の典型的なイメージとして、顔に笑顔がなくなり、食事も喉を通らず、夜眠れなくなる、といった状態を浮かべる方も少なくないでしょう。
 実際に睡眠や食欲のレベルはうつ病を発症すると、それまでとはかなり変化するため、 うつ病に気付くための重要なチェックポイントになります。
 しかし必ずしも全てのうつ病患者さんに食欲不振や不眠症などの症状が現われるとは限りません反対に過食や過眠傾向が強まることもあります
 また、うつ病を発症すると、精神症状だけでなく、頭痛や腹痛など身体症状がはっきり現われることもあります。
 うつ病は心の病気という認識だけでいると、これらの身体症状に注意が向き過ぎてしまい、現われているはずの気持ちの落ち込みを当人があまり自覚できないような場合もあります。
 うつ病の症状の現われ方が個々人で違ってくることは、うつ病に関する重要な基礎知識の一つとしてぜひ覚えていただきたいことです。

◆うつ病症状は頑張れば克服できるという誤解
 うつ病を発症すると、口数が少なくなったり、仕事や勉強の能率が落ちてきたり、場合によってはちょっとした家事や外出ですら億劫になりできなくなってしまうこともあります。
 周りの方はこうした問題をしばしば病気によるものとは考えられず、当人の気持ちや生活態度の問題のように受け取ってしまいがちです。
 もし上記のような状態を見て、「気合が足りない」「頑張ればできるはず」といった思いがあれば、それは大きな誤解です。うつ病は脳内の機能に問題が生じたために、心身がいわばガス欠になってしまったような状態です。
 当人自身がどんなに頑張りたくても、まるで頑張れない状態になっているのです。例えばですが、ひどい胃腸炎で苦しんでいるときに、どんなに頑張っても全力でスポーツなどに取り組むことができないことと同じです。
 気持ちや気合いだけではどうにもならないため、何か楽しい予定に誘ってみても、当人にそれを楽しむエネルギー自体がないため、つれない態度で拒絶されてしまう可能性もあります。
 苦しんでいる当人を誤解してしまわないよう、予め頭に置いておきたいことです。

◆うつ病は自然治癒するという誤解
 周りの誰かの気持ちが落ち込んでいることに気付いた時、少し時間がたてば元に戻るだろう……と、あまり気にかけないこともあるかと思います。
 確かに通常の気持ちの落ち込みならば、時間の経過とともに元に戻りますが、うつ病を発症している場合、「放っておけば良くなる」といった考えは完全に誤解です。うつ病は未治療のまま放置すれば、ますます深刻化していく可能性があります。
 とはいえ、うつ病の始まりは周りの目には日常的なレベルの不調と見分けがつきにくいものです。うつ病の始まりを見逃さないためには、落ち込みの持続期間と深刻さにどうか注意してみてください。
 もし周りの目から見ても、一定期間を超えて、継続的な気持ちの落ち込みが見られ、その他にも気になる問題が現われているような場合、治療が必要なレベルに深刻化している可能性もあります。
 個人差はありますが、もし1週間以上、気持ちの落ち込みがずっと和らぐことなく継続していて、日常生活にも支障が現われているような場合は、うつ病の可能性も考慮すべきでしょう。

◆「死にたい」という言葉は構われたいためという誤解
 また、落ち込んだ様子の相手の口からもし仮に自殺をほのめかすような言葉が出た時は、周りの方は絶対に軽視しないでください。
 中にはそういった言動を、構われたくて言っているだけではないかと考えてしまう方もいるようですが、死にたいといった言葉を口にする時点で、うつ病がかなり深刻化している可能性があります。
 ただちに精神科(神経科)を受診され、必要な治療を開始すべき状況です。そして放置すれば実際に行動に移してしまう可能性もあることを、周りの方はくれぐれも注意する必要があります。

 以上、ここではうつ病の基礎知識として、うつ病にありがちな誤解を詳しく解説しました。うつ病の発症率は統計によっても数字に幅がありますが、多くの統計で「人口の10%前後」と言われています。決して珍しい病気ではありません。
 万に一つではなく、十に一つの、身近な病気です。ここで解説したことに該当する誤解をされていた方は、どうかただちに修正し、正しい認識を持っていただくよう、お願いいたします。

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冬季うつ病

2017-12-21 15:58:03 | うつ病
 「冬季うつ病」という病気があります。
 寒い季節になるとうつ状態となり、温かくなると回復するサイクル。

 まるで冬眠するクマのようです。
 いや、自然の営みのリズムを強く残している体質、と捉えることもできるかもしれません。

 しかし現代社会に生きていくためには、1年の半分を無活動で過ごすことは許されず、治療対象とならざるを得ません。
 本当に治療が必要なんだろうか・・・。 

■ 冬になると気分が落ち込む 女性に多い「冬季うつ」
日経ヘルス:2017/12/18
 ツバメが春に巣作りをし、クマが冬眠するように、生き物の多くは季節の動きに合わせて生きている。この季節変動をもたらすのは、日照時間の長短だ。
 夏は太陽が出ている時間が長く、冬は短い。私たち人間は季節変動に影響されにくい生き物だが、影響を受けやすい人もいるとわかってきた。「全国の成人およそ1000人を調べたところ、2%の人で、気分や体重、睡眠時間に大きな季節変動が見られた」。国立精神・神経医療研究センターの三島和夫部長はこう話す。
 こんな「季節に敏感な人」に見られる精神症状が冬季うつ。うつ病の一種で、女性に多く、患者数は男性の1.5倍いる。冬季の気分の落ち込みに加え、「何事もおっくうで仕事がはかどらない」「人に会うのが面倒」といった「社会的引きこもり」症状が表れるのが特徴だ。また、うつ病では通常、食欲が低下するが、冬季うつでは食欲が高まる。特に炭水化物を食べたがり、結果として体重が増える。



 治療のカギを握るのが生活改善で、三島部長は「まずは1日1時間、太陽の光を浴びること」と話す。漫然と日光浴をするのではなく、光を目の奥に届かせるのがポイント。光を見ることで体内時計が調整され、朝と夜、夏と冬といった自然界のリズムに適応しやすくなる。さらに、気分の波や食欲をコントロールする働きがあり、冬季うつの症状とも深く関連している神経伝達物質「セロトニン」の合成量を光の刺激で増やせる。
 食事も重要だ。セロトニンを合成する原料となるのが、必須アミノ酸のトリプトファン。それが足りないと、光を浴びても効果が得られにくい。



 三島部長は「トリプトファンは、普通に食事をとっていれば、不足する心配はほとんどない。だが、冬季うつの人は炭水化物に偏った食事をとりがちなので、摂取量が足りなくなることがある」と話す。トリプトファンを多く含む豆類、肉類、チーズなどを積極的に食べるように心がけるといいだろう。


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うつ病になりやすい性格とは?

2017-10-12 05:55:44 | うつ病
 うつ病に関する記事を2つ。
 一つ目はうつ病になりやすい性格という興味深い題ですが、内容は今ひとつピンときません。

■ うつ病になりやすい性格
ケアネット:2017/10/10
 3つの性格特性、神経症(neuroticism)の傾向、外向性(extraversion)、適度な誠実性(conscientiousnes)の相互の影響が、健常な人々の抑うつ症状を予測している。この効果が、引きこもり(withdrawal)、勤勉(industriousness)、熱意(enthusiasm)といった3つの低次特性によって引き起こされるかを、米国・Centre for Addiction and Mental HealthのTimothy A. Allen氏らが検討し、この相互の影響を臨床集団内で初めて複製した。Journal of personality誌オンライン版2017年9月16日号の報告。
 対象は、健常成人376例(サンプル1)、うつ病患者354例(サンプル2)。性格および抑うつ傾向の測定には、サンプル1においてはBig Five Aspect ScalesとPersonality Inventory for DSM-5を用い、サンプル2においてはNEO-PI-RとBeck Depression Inventory-IIを用いた。
 主な結果は以下のとおり。

・引きこもり、勤勉、熱意が相互に影響を及ぼし、両サンプルの抑うつ傾向を予測した。
・相互パターンは、「3つの中で最良の2つ」の原則を支持していた。すなわち、2つの特性における低リスクスコアで、残る1つの高リスクスコアを防ぐことが示唆された。
・また、「3つの中で最悪の2つ」の原則も存在し、2つの高リスクスコアは、3つすべてが高リスクスコアの場合と同等の抑うつ症状重症度との関連が認められた。

 著者らは「これらの結果は、精神病理学における性格特性の相互効果を調査することの重要性を示唆している」としている。


 2つめはうつ病の治療に関する記事。
 うつ症状に抗うつ薬が効かない場合、双極性障害など他の疾患の可能性を探ることは常識と思われますが、それを裏付ける内容ですね。

■ 治療抵抗性うつ病、抗うつ薬併用 vs.抗精神病薬増強
ケアネット:2017/10/12
 治療抵抗性うつ病患者は、抗うつ薬の併用療法(ADs)または第2世代抗精神病薬(SGA)の増強療法(SGA+AD)で治療されるが、臨床的特徴、SGA+ADへの治療反応と独立して関連する因子、アウトカムの経過についてはよくわかっていない。カナダ・マギル大学のGabriella Gobbi氏らは、治療抵抗性うつ病に対するADsおよびSGA+ADの治療効果について検討を行った。International clinical psychopharmacology誌オンライン版2017年9月12日号の報告。
 2回以上の抗うつ薬治療に抵抗性を示した、治療抵抗性うつ病患者86例(ADs:36例、SGA+AD:50例)を対象に、最近の安定した試験(約3ヵ月間、投薬変更なし)に関して自然主義的研究を行った。MADRS(Montgomery-Asberg Depression Rating Scale)、HAM-D17(ハミルトンうつ病評価尺度)、その他の尺度による評価は、最近3ヵ月間の安定した試験の前(T0)と後(T3)に実施した。
 主な結果は以下のとおり。

・SGA+ADでは、ADsと比較し、精神病理的特徴を有するうつ病、パーソナリティ障害および物質使用障害の合併、ADsに対し治療抵抗性を示した回数、全尺度におけるT0での抑うつ症状について、それぞれの割合の増加が認められた(p<0.001)。
・SGA+AD、ADsともに、T0と比較し、T3におけるMADRSおよびHAM-D17で抑うつ症状の有意な軽減が認められた(p<0.001)。SGA+ADは、平均スコアのより大きな低下を示した。
・ロジスティック回帰分析では、精神病理的特徴、パーソナリティ障害、物質使用障害が、SGA+AD療法と独立して関連していることが示された。

 著者らは「SGA+AD後にうつ症状の改善がより大きければ、精神病理的特徴、物質使用障害、パーソナリティ障害を伴う重度の治療抵抗性うつ病に対し、SGAによる増強療法は第1選択の治療法とすべきである」としている。
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