早朝のNHKラジオ番組「健康ライフ」で「10代のうつ病」(青山学院大学教育人間科学部 小児科医・児童精神科医 古荘純一Dr.)を放送していました。
通して聞いてみて「子どもの体が現代社会を拒否した結果、子どものうつ病が増えてきているのではないか」と感じました。
戦後社会が発展し、効率化を求め続けてきました。無駄のない生活は窮屈なもの。
それを強制し続けるとストレスとなり、それが蓄積すると体をむしばんでいく。
一線を越えると逃避行動として「うつ病」を発症する、いや、自分が壊れることで自分を守っているのかもしれません。
子どもが追い詰められてうつ病を発症するような家族は、両親も追い詰められている可能性が大きいと思われます。
両親を追い詰めているのは、“社会”です。
効率化や業績を求める姿勢がなくならない限り、この傾向は変わらないのでしょう。
気になったところをメモ。
<メモ>
□ 「見逃されてきた子どものうつ病」
(2018.10.22放送)
・子どものうつ病は増えている。20年くらい前から実感しはじめた。
・腹痛や頭痛を繰り返し訴え、学校を休みがちになる子どもの経過を見ていると、精神的な不調が目立つようになり、行動面の問題(イライラして切れやすくなる、対人関係が気づきにくい、切れやすくなる)、焦燥感が強いなど一見うつ病とは反対の症状が現れてくることがある。眠れない、疲れやすい(朝目が醒めたときから疲労感がある)という訴えも目立つ。
・しかしこのような子どもの中に、ときに悲しみに満ちあふれている、自信を喪失していることも観察される例がある。悲壮感に溢れ、楽しみしていることもできなくなる。多彩な症状を訴えるこのような子どもたちをうつ病という視点でみると合致することに気づいた。
・当時はこのような子どもに「心身症〜起立性調節障害や心因反応」「不定愁訴」と診断名を付けていた。
・1980年代に海外で「子どものうつ病」の報告が増えてきて注目されるようになり、日本でも児童精神科医がその視点から診察するようになり、認知されるようになった。
・子どものうつは稀な病気ではない。抑うつの尺度を用いて評価すると、9〜15%の子どもが抑うつ度が高いと判断された。その子どもを実際に面接すると、そのうち2割程度に臨床的にうつ病の可能性が高いことが判明した。中学生に当てはめると、3〜5%になり、世界的な頻度(3%)と変わらない。クラスにひとりはうつ病予備軍/うつ病が存在する。
・「落ち込み」と「うつ病」の違い。うつ病は悲しい感情が強く、悲壮感(自分は取るに足らない人間だ、自分のすることはすべて失敗する等)にとらわれていて簡単に修正ができない。ただし子どもでは大人ほど長くは続かない(楽しいことがあったり、気分転換ができると回復しやすい)ことも特徴。それに加えて身体の不調(身体症状、身体反応)を訴える。
・子どものうつ病は表面化しにくい。以前はその存在が指摘されていなかったこと、「こどもにはうつ病はない」という医療者の先入観もその理由。
・古典的にはうつ病は中壮年の男性の病気と捉えられてきた。
・元気のない子どもに「精神を強く持て」「時間が経てば治る」「大人になれば治る」と様子観察されて見落とされてきたが、それで改善する子どもがたくさんいる一方で、一部の子どもは体の不調の訴えが続き、その後身体の不調を訴えるようになり、日常生活もうまくできなくなっていく、といううつ病の経過を辿る例もある。
□ 「大人のうつ病との違い」
・脳の中で起きていることは同じであるが、大人と子どもでは言動が異なるので、症状も異なってくる。
・子どもでは攻撃的な行動が特徴である。大人では見られないような、イライラした気持ち、じっとしていられない、攻撃的な言動を繰り返すなど、一見うつ病ではなく、発達障がい、ほかの精神疾患、単なる反抗などを思わせる症状が目立つ側面がある。ただ、それに伴い大人で見られるような身体的な不調、精神的落ち込みの要素も見られることがしばしばある。
・身体症状として眠れない(不眠)が目立つことが特徴である。大人のうつ病同様の「早朝覚醒」や「中途覚醒」がみられ、これらはふつうの子どもには見られない(「寝付けない」はときどきある)。
・子どもに特化したうつ病の診断基準はなく、大人用の診断基準を当てはめて用いるのが現状。ただし同じ質問をしても反応が異なるため、子ども用の「抑うつの尺度」がある(18の質問項目を3段階に分ける)。
・原因は他の精神疾患同様、先天的因子+後天的因子(環境因子)とされる。発達障がいや統合失調症と比較して環境因子が強く影響すると言われている。後天的因子の中では心理的ストレスが重要であり、年齢が早いほど、ストレスが多いほどリスクが高いことがわかってきた。
・子どものうつ病が増えている背景は、後天的因子の影響が大きいと考えると、急速な近代化に伴い社会環境・構造が大人に便利なように変化してきたため、社会的弱者である子どもがついて行けない、ストレスを感じてしまう、などが考えられる。
・子どもの方が社会の変化に柔軟に適応できそうなものであるが、表面上はそうでも、環境の変化には適応しにくい傾向がある(例:一晩眠れないとそれを子どもが取り戻すのは大変)。
・受診のタイミング:休息を取っても調子が戻らない、興味を持っていたものを楽しめない、午前中は調子が悪く夕方調子がよくなるが寝ても回復しない、朝起きてから眠気がなかなかとれない・だるい〜睡眠障害がある、気持ちが落ち込み自分を責めるような言動(極端な例では「死にたい」)。
□ 「子どものうつ病の対処法・治療法」
・まずは正確な診断・鑑別診断。
・診断後にできることは「環境調節」「精神療法」「薬物療法」の3つ。
・環境調節:子どもが体調不良を訴えたときは、大人が思っているより疲れている。精神論、大人の都合による治療目標(いつまでに治そう、等)を語りだすと子どもを追い詰めてしまう。
・精神療法(認知行動療法):発想方法の転換を訓練し、身につけていく。
・薬物療法:子どもに適応がある薬物は日本にはないが、大人用の薬を使っているのが現状。
□ 「子どものうつ病に潜むもの」
・ストレスを多く感じる子どもほど、うつ病になりやすい。大人のペースに合わせた生活にするとストレスを感じやすい。
・「睡眠不足の自覚」がキーワード。
・過剰な情報を処理し切れていないこと、それにこだわることがストレスになる。
・いじめを契機に発症することがある。
・うつ病になると、すべてのことを否定的に捉えるようになり、自分のことも否定的に捉える(自己卑下)。QOLが低いこと、自尊感情が下がることがうつ病と強く関連する。
・小学生〜中学生にかけて自分の限界が見えてきて、一般的に世界的にも自尊感情は下がる傾向があるが、日本人はそれが顕著である。
□ 「子どものうつ病の予防と対策」
・防ぐためには、子どもたちのストレスを減らすこと。
・今の子どもたちは学校で強いストレスを感じている。
・学校では「集団」と「個別」を使い分けられていない。
・信頼できる大人が必要。スクールカウンセラーや医師に相談する。
・メールは相手の表情が見えないので、傷つけることがある。直接相手の表情を見て離す必要がある。
・SNSは24時間監視されている状況を作りやすい。
・うつ病予備軍に早く気づくことが大切。発達障がい、不登校はうつ病を発症しやすい。
・子どもの回復力を信じる。それを以下に引き出すか、支えるかが大切。
・そのためには親のストレスをなくす、社会のストレスをなくすことが必要。
・子どもだけではなく養育者のサポートも必要。養育者を追い詰めては解決しない。
通して聞いてみて「子どもの体が現代社会を拒否した結果、子どものうつ病が増えてきているのではないか」と感じました。
戦後社会が発展し、効率化を求め続けてきました。無駄のない生活は窮屈なもの。
それを強制し続けるとストレスとなり、それが蓄積すると体をむしばんでいく。
一線を越えると逃避行動として「うつ病」を発症する、いや、自分が壊れることで自分を守っているのかもしれません。
子どもが追い詰められてうつ病を発症するような家族は、両親も追い詰められている可能性が大きいと思われます。
両親を追い詰めているのは、“社会”です。
効率化や業績を求める姿勢がなくならない限り、この傾向は変わらないのでしょう。
気になったところをメモ。
<メモ>
□ 「見逃されてきた子どものうつ病」
(2018.10.22放送)
・子どものうつ病は増えている。20年くらい前から実感しはじめた。
・腹痛や頭痛を繰り返し訴え、学校を休みがちになる子どもの経過を見ていると、精神的な不調が目立つようになり、行動面の問題(イライラして切れやすくなる、対人関係が気づきにくい、切れやすくなる)、焦燥感が強いなど一見うつ病とは反対の症状が現れてくることがある。眠れない、疲れやすい(朝目が醒めたときから疲労感がある)という訴えも目立つ。
・しかしこのような子どもの中に、ときに悲しみに満ちあふれている、自信を喪失していることも観察される例がある。悲壮感に溢れ、楽しみしていることもできなくなる。多彩な症状を訴えるこのような子どもたちをうつ病という視点でみると合致することに気づいた。
・当時はこのような子どもに「心身症〜起立性調節障害や心因反応」「不定愁訴」と診断名を付けていた。
・1980年代に海外で「子どものうつ病」の報告が増えてきて注目されるようになり、日本でも児童精神科医がその視点から診察するようになり、認知されるようになった。
・子どものうつは稀な病気ではない。抑うつの尺度を用いて評価すると、9〜15%の子どもが抑うつ度が高いと判断された。その子どもを実際に面接すると、そのうち2割程度に臨床的にうつ病の可能性が高いことが判明した。中学生に当てはめると、3〜5%になり、世界的な頻度(3%)と変わらない。クラスにひとりはうつ病予備軍/うつ病が存在する。
・「落ち込み」と「うつ病」の違い。うつ病は悲しい感情が強く、悲壮感(自分は取るに足らない人間だ、自分のすることはすべて失敗する等)にとらわれていて簡単に修正ができない。ただし子どもでは大人ほど長くは続かない(楽しいことがあったり、気分転換ができると回復しやすい)ことも特徴。それに加えて身体の不調(身体症状、身体反応)を訴える。
・子どものうつ病は表面化しにくい。以前はその存在が指摘されていなかったこと、「こどもにはうつ病はない」という医療者の先入観もその理由。
・古典的にはうつ病は中壮年の男性の病気と捉えられてきた。
・元気のない子どもに「精神を強く持て」「時間が経てば治る」「大人になれば治る」と様子観察されて見落とされてきたが、それで改善する子どもがたくさんいる一方で、一部の子どもは体の不調の訴えが続き、その後身体の不調を訴えるようになり、日常生活もうまくできなくなっていく、といううつ病の経過を辿る例もある。
□ 「大人のうつ病との違い」
・脳の中で起きていることは同じであるが、大人と子どもでは言動が異なるので、症状も異なってくる。
・子どもでは攻撃的な行動が特徴である。大人では見られないような、イライラした気持ち、じっとしていられない、攻撃的な言動を繰り返すなど、一見うつ病ではなく、発達障がい、ほかの精神疾患、単なる反抗などを思わせる症状が目立つ側面がある。ただ、それに伴い大人で見られるような身体的な不調、精神的落ち込みの要素も見られることがしばしばある。
・身体症状として眠れない(不眠)が目立つことが特徴である。大人のうつ病同様の「早朝覚醒」や「中途覚醒」がみられ、これらはふつうの子どもには見られない(「寝付けない」はときどきある)。
・子どもに特化したうつ病の診断基準はなく、大人用の診断基準を当てはめて用いるのが現状。ただし同じ質問をしても反応が異なるため、子ども用の「抑うつの尺度」がある(18の質問項目を3段階に分ける)。
・原因は他の精神疾患同様、先天的因子+後天的因子(環境因子)とされる。発達障がいや統合失調症と比較して環境因子が強く影響すると言われている。後天的因子の中では心理的ストレスが重要であり、年齢が早いほど、ストレスが多いほどリスクが高いことがわかってきた。
・子どものうつ病が増えている背景は、後天的因子の影響が大きいと考えると、急速な近代化に伴い社会環境・構造が大人に便利なように変化してきたため、社会的弱者である子どもがついて行けない、ストレスを感じてしまう、などが考えられる。
・子どもの方が社会の変化に柔軟に適応できそうなものであるが、表面上はそうでも、環境の変化には適応しにくい傾向がある(例:一晩眠れないとそれを子どもが取り戻すのは大変)。
・受診のタイミング:休息を取っても調子が戻らない、興味を持っていたものを楽しめない、午前中は調子が悪く夕方調子がよくなるが寝ても回復しない、朝起きてから眠気がなかなかとれない・だるい〜睡眠障害がある、気持ちが落ち込み自分を責めるような言動(極端な例では「死にたい」)。
□ 「子どものうつ病の対処法・治療法」
・まずは正確な診断・鑑別診断。
・診断後にできることは「環境調節」「精神療法」「薬物療法」の3つ。
・環境調節:子どもが体調不良を訴えたときは、大人が思っているより疲れている。精神論、大人の都合による治療目標(いつまでに治そう、等)を語りだすと子どもを追い詰めてしまう。
・精神療法(認知行動療法):発想方法の転換を訓練し、身につけていく。
・薬物療法:子どもに適応がある薬物は日本にはないが、大人用の薬を使っているのが現状。
□ 「子どものうつ病に潜むもの」
・ストレスを多く感じる子どもほど、うつ病になりやすい。大人のペースに合わせた生活にするとストレスを感じやすい。
・「睡眠不足の自覚」がキーワード。
・過剰な情報を処理し切れていないこと、それにこだわることがストレスになる。
・いじめを契機に発症することがある。
・うつ病になると、すべてのことを否定的に捉えるようになり、自分のことも否定的に捉える(自己卑下)。QOLが低いこと、自尊感情が下がることがうつ病と強く関連する。
・小学生〜中学生にかけて自分の限界が見えてきて、一般的に世界的にも自尊感情は下がる傾向があるが、日本人はそれが顕著である。
□ 「子どものうつ病の予防と対策」
・防ぐためには、子どもたちのストレスを減らすこと。
・今の子どもたちは学校で強いストレスを感じている。
・学校では「集団」と「個別」を使い分けられていない。
・信頼できる大人が必要。スクールカウンセラーや医師に相談する。
・メールは相手の表情が見えないので、傷つけることがある。直接相手の表情を見て離す必要がある。
・SNSは24時間監視されている状況を作りやすい。
・うつ病予備軍に早く気づくことが大切。発達障がい、不登校はうつ病を発症しやすい。
・子どもの回復力を信じる。それを以下に引き出すか、支えるかが大切。
・そのためには親のストレスをなくす、社会のストレスをなくすことが必要。
・子どもだけではなく養育者のサポートも必要。養育者を追い詰めては解決しない。