この病名、知りませんでした。
セロトニンが過剰な病態ですが、てんかんと区別が難しい症状なので診断が難しい。
セロトニンそのものを分泌する腫瘍(カルチノイド)で起こりますが、精神疾患に使われる薬を過剰に服用した際に生じることもあるとの警告。
■ てんかんと誤診された12歳女子、意識障害の原因はセロトニン症候群
(2017年2月5日:MEDLEY)
セロトニン症候群は命に関わる場合があります。脳や神経に作用する薬の副作用としてまれに現れます。自殺目的で薬を大量に飲み、手足が勝手に動く・意識の異常などの症状が現れた女の子の例が報告されました。
◇ 手足・意識の症状で入院した12歳の女の子
トルコの研究班が、抗うつ薬のクロミプラミンを大量に飲んだことでセロトニン症候群が現れた12歳の女の子の例を、専門誌『Clinical Psychopharmacology and Neuroscience』に報告しました。
この女の子は、手足が意思と関係なく勝手に動く症状(不随意収縮)と意識の異常(意識変容)があり、てんかんと診断されて入院しました。
診察では心拍数が1分あたり140回、体温は39.5℃で、興奮、震え、汗、目が左右に震える(水平眼振)などの症状がありました。てんかんの特徴に当てはまらないため、改めてより詳しい問診がなされました。
◇ 自殺目的で抗うつ薬大量服用
問診の結果、この女の子は入院以前に精神科クリニックで処方されたリスペリドン(抗精神病薬)を普通と違った用法で飲んでいました。
お金を盗む、嘘をつく、家や学校から逃げ出すなどの行動がありました。
さらに、自殺目的で抗うつ薬のクロミプラミン75mg錠を9錠飲んでいたことがわかりました。
クロミプラミンは、日本で成人のうつ病などに対して処方される場合は、1日あたり225mgが用量の上限とされています。その最大用量に換算すると、この女の子は3日分を一度に飲んだ計算になります。
入院治療の結果、24時間で症状は消え、2日後には血液検査値も改善傾向を示しました。
自殺を図っていたことから、小児精神科クリニックの診察も受けました。4日後には監督のもとで退院となりました。
研究班は考察の中で「抗うつ薬治療を受けている青少年に対してはセロトニン症候群を念頭に置くべきだ。なぜなら彼らは抗うつ薬で自殺を図ることがあるから」と指摘しています。
◇ 薬とセロトニン症候群
セロトニン症候群は、脳内物質のセロトニンが異常に働くことによって起こります。原因は主に薬剤です。
ここで紹介した女の子では、もし詳しく問診されていなければ、セロトニン症候群が見逃され、治療が遅れていた可能性があります。診察にあたった医師が薬の影響を想定できたことが原因の特定につながりました。確かに救急治療をする医師にとっては、似た症状を見たときにセロトニン症候群を思い出せることが大切と言える例でしょう。
一方、セロトニン症候群は抗うつ薬などを飲んでいる人にとっても知るべきものです。自殺目的で故意に大量に飲んだときだけでなく、正しい用法・用量だったとしてもセロトニン症候群はごくまれに現れます。
2016年3月には、アメリカの規制機関である食品医薬品局(FDA)から、痛みを和らげる作用がある「オピオイド鎮痛薬」と以下の薬などを同時に使った場合について、セロトニン症候群の危険性があるとして警告が出されました。
抗うつ薬(三環系抗うつ薬、SSRI、SNRI)
抗精神病薬
片頭痛治療薬の一部(トリプタン製剤)
パーキンソン病治療薬の一部(MAO-B阻害薬)
吐き気止めの一部(オンダンセトロン、グラニセトロンなど)
咳止めの一部(デキストロメトルファン)
抗菌薬の一部(リネゾリド)
セントジョーンズワート
トリプトファン
一般にセロトニン症候群には次のような症状があります。
興奮、幻覚、心拍数の増加(頻拍)、発熱、過剰な発汗、
震え、筋肉のけいれん、こわばり、体をバランスよく動かせない、
吐き気・嘔吐、下痢
薬を飲んでいるときにもしこのような症状を感じたら、早めに薬を処方した医師に相談してください。
<参照文献>
・Serotonin Syndrome after Clomipramine Overdose in a Child. Clin Psychopharmacol Neurosci. 2016 Nov 30.
続いて、症例報告です。
■ セロトニン症候群で死亡、46歳女性は目が勝手に動いていた 台湾から症例報告
from The New England journal of medicine
(2016年11月30日:MEDLEY)
セロトニンという脳内物質が異常に働くことによって、発汗や幻覚を特徴とする「セロトニン症候群」という危険な状態が現れます。薬が原因と見られるセロトニン症候群で死亡した女性に見られた特徴的な症状が報告されました。
◇ セロトニン症候群で死亡した女性の症例報告
台湾の研究班が、セロトニン症候群で死亡した46歳女性の例を、医学誌『New England Journal of Medicine』に報告しました。
この女性が救急治療部に運ばれたとき、38.6℃の発熱、心拍数が1分あたり169回、興奮、冷や汗などの症状がありました。
眼球がいろいろな方向に動いてしまう「眼球粗動」、足が固まって動かせない「強剛」、腕が勝手に動いてしまう「ミオクローヌス」の症状も現れていました。
この女性は症状が出る前に、ベンラファキシンという抗うつ薬を、処方された量を超えて飲んでいました。ほかにアルプラゾラム、エスタゾラムという抗不安薬(または睡眠薬)も処方されていました。
症状と服薬歴からセロトニン症候群と診断され、ICU(集中治療室)で治療が行われましたが、数日後に死亡しました。
<参照文献>
・Ocular Flutter in the Serotonin Syndrome. N Engl J Med. 2016 Nov 3.
・[動画]
セロトニンが過剰な病態ですが、てんかんと区別が難しい症状なので診断が難しい。
セロトニンそのものを分泌する腫瘍(カルチノイド)で起こりますが、精神疾患に使われる薬を過剰に服用した際に生じることもあるとの警告。
■ てんかんと誤診された12歳女子、意識障害の原因はセロトニン症候群
(2017年2月5日:MEDLEY)
セロトニン症候群は命に関わる場合があります。脳や神経に作用する薬の副作用としてまれに現れます。自殺目的で薬を大量に飲み、手足が勝手に動く・意識の異常などの症状が現れた女の子の例が報告されました。
◇ 手足・意識の症状で入院した12歳の女の子
トルコの研究班が、抗うつ薬のクロミプラミンを大量に飲んだことでセロトニン症候群が現れた12歳の女の子の例を、専門誌『Clinical Psychopharmacology and Neuroscience』に報告しました。
この女の子は、手足が意思と関係なく勝手に動く症状(不随意収縮)と意識の異常(意識変容)があり、てんかんと診断されて入院しました。
診察では心拍数が1分あたり140回、体温は39.5℃で、興奮、震え、汗、目が左右に震える(水平眼振)などの症状がありました。てんかんの特徴に当てはまらないため、改めてより詳しい問診がなされました。
◇ 自殺目的で抗うつ薬大量服用
問診の結果、この女の子は入院以前に精神科クリニックで処方されたリスペリドン(抗精神病薬)を普通と違った用法で飲んでいました。
お金を盗む、嘘をつく、家や学校から逃げ出すなどの行動がありました。
さらに、自殺目的で抗うつ薬のクロミプラミン75mg錠を9錠飲んでいたことがわかりました。
クロミプラミンは、日本で成人のうつ病などに対して処方される場合は、1日あたり225mgが用量の上限とされています。その最大用量に換算すると、この女の子は3日分を一度に飲んだ計算になります。
入院治療の結果、24時間で症状は消え、2日後には血液検査値も改善傾向を示しました。
自殺を図っていたことから、小児精神科クリニックの診察も受けました。4日後には監督のもとで退院となりました。
研究班は考察の中で「抗うつ薬治療を受けている青少年に対してはセロトニン症候群を念頭に置くべきだ。なぜなら彼らは抗うつ薬で自殺を図ることがあるから」と指摘しています。
◇ 薬とセロトニン症候群
セロトニン症候群は、脳内物質のセロトニンが異常に働くことによって起こります。原因は主に薬剤です。
ここで紹介した女の子では、もし詳しく問診されていなければ、セロトニン症候群が見逃され、治療が遅れていた可能性があります。診察にあたった医師が薬の影響を想定できたことが原因の特定につながりました。確かに救急治療をする医師にとっては、似た症状を見たときにセロトニン症候群を思い出せることが大切と言える例でしょう。
一方、セロトニン症候群は抗うつ薬などを飲んでいる人にとっても知るべきものです。自殺目的で故意に大量に飲んだときだけでなく、正しい用法・用量だったとしてもセロトニン症候群はごくまれに現れます。
2016年3月には、アメリカの規制機関である食品医薬品局(FDA)から、痛みを和らげる作用がある「オピオイド鎮痛薬」と以下の薬などを同時に使った場合について、セロトニン症候群の危険性があるとして警告が出されました。
抗うつ薬(三環系抗うつ薬、SSRI、SNRI)
抗精神病薬
片頭痛治療薬の一部(トリプタン製剤)
パーキンソン病治療薬の一部(MAO-B阻害薬)
吐き気止めの一部(オンダンセトロン、グラニセトロンなど)
咳止めの一部(デキストロメトルファン)
抗菌薬の一部(リネゾリド)
セントジョーンズワート
トリプトファン
一般にセロトニン症候群には次のような症状があります。
興奮、幻覚、心拍数の増加(頻拍)、発熱、過剰な発汗、
震え、筋肉のけいれん、こわばり、体をバランスよく動かせない、
吐き気・嘔吐、下痢
薬を飲んでいるときにもしこのような症状を感じたら、早めに薬を処方した医師に相談してください。
<参照文献>
・Serotonin Syndrome after Clomipramine Overdose in a Child. Clin Psychopharmacol Neurosci. 2016 Nov 30.
続いて、症例報告です。
■ セロトニン症候群で死亡、46歳女性は目が勝手に動いていた 台湾から症例報告
from The New England journal of medicine
(2016年11月30日:MEDLEY)
セロトニンという脳内物質が異常に働くことによって、発汗や幻覚を特徴とする「セロトニン症候群」という危険な状態が現れます。薬が原因と見られるセロトニン症候群で死亡した女性に見られた特徴的な症状が報告されました。
◇ セロトニン症候群で死亡した女性の症例報告
台湾の研究班が、セロトニン症候群で死亡した46歳女性の例を、医学誌『New England Journal of Medicine』に報告しました。
この女性が救急治療部に運ばれたとき、38.6℃の発熱、心拍数が1分あたり169回、興奮、冷や汗などの症状がありました。
眼球がいろいろな方向に動いてしまう「眼球粗動」、足が固まって動かせない「強剛」、腕が勝手に動いてしまう「ミオクローヌス」の症状も現れていました。
この女性は症状が出る前に、ベンラファキシンという抗うつ薬を、処方された量を超えて飲んでいました。ほかにアルプラゾラム、エスタゾラムという抗不安薬(または睡眠薬)も処方されていました。
症状と服薬歴からセロトニン症候群と診断され、ICU(集中治療室)で治療が行われましたが、数日後に死亡しました。
<参照文献>
・Ocular Flutter in the Serotonin Syndrome. N Engl J Med. 2016 Nov 3.
・[動画]