発達障がい・こころのやまい

専門外ながら相談を受けることがあり、その際に読んだ本や集めた情報を書き留めました(本棚9)。

「セロトニン症候群 」という病気

2017-02-18 13:28:02 | その他の精神神経疾患
 この病名、知りませんでした。
 セロトニンが過剰な病態ですが、てんかんと区別が難しい症状なので診断が難しい。
 セロトニンそのものを分泌する腫瘍(カルチノイド)で起こりますが、精神疾患に使われる薬を過剰に服用した際に生じることもあるとの警告。

■ てんかんと誤診された12歳女子、意識障害の原因はセロトニン症候群
(2017年2月5日:MEDLEY)
 セロトニン症候群は命に関わる場合があります。脳や神経に作用する薬の副作用としてまれに現れます。自殺目的で薬を大量に飲み、手足が勝手に動く・意識の異常などの症状が現れた女の子の例が報告されました。

◇ 手足・意識の症状で入院した12歳の女の子
 トルコの研究班が、抗うつ薬のクロミプラミンを大量に飲んだことでセロトニン症候群が現れた12歳の女の子の例を、専門誌『Clinical Psychopharmacology and Neuroscience』に報告しました。
 この女の子は、手足が意思と関係なく勝手に動く症状(不随意収縮)と意識の異常(意識変容)があり、てんかんと診断されて入院しました。
 診察では心拍数が1分あたり140回、体温は39.5℃で、興奮、震え、汗、目が左右に震える(水平眼振)などの症状がありました。てんかんの特徴に当てはまらないため、改めてより詳しい問診がなされました。

◇ 自殺目的で抗うつ薬大量服用
 問診の結果、この女の子は入院以前に精神科クリニックで処方されたリスペリドン(抗精神病薬)を普通と違った用法で飲んでいました。
 お金を盗む、嘘をつく、家や学校から逃げ出すなどの行動がありました。
 さらに、自殺目的で抗うつ薬のクロミプラミン75mg錠を9錠飲んでいたことがわかりました。
 クロミプラミンは、日本で成人のうつ病などに対して処方される場合は、1日あたり225mgが用量の上限とされています。その最大用量に換算すると、この女の子は3日分を一度に飲んだ計算になります。
 入院治療の結果、24時間で症状は消え、2日後には血液検査値も改善傾向を示しました。
 自殺を図っていたことから、小児精神科クリニックの診察も受けました。4日後には監督のもとで退院となりました。
 研究班は考察の中で「抗うつ薬治療を受けている青少年に対してはセロトニン症候群を念頭に置くべきだ。なぜなら彼らは抗うつ薬で自殺を図ることがあるから」と指摘しています。

◇ 薬とセロトニン症候群
 セロトニン症候群は、脳内物質のセロトニンが異常に働くことによって起こります。原因は主に薬剤です。
 ここで紹介した女の子では、もし詳しく問診されていなければ、セロトニン症候群が見逃され、治療が遅れていた可能性があります。診察にあたった医師が薬の影響を想定できたことが原因の特定につながりました。確かに救急治療をする医師にとっては、似た症状を見たときにセロトニン症候群を思い出せることが大切と言える例でしょう。
 一方、セロトニン症候群は抗うつ薬などを飲んでいる人にとっても知るべきものです。自殺目的で故意に大量に飲んだときだけでなく、正しい用法・用量だったとしてもセロトニン症候群はごくまれに現れます。
 2016年3月には、アメリカの規制機関である食品医薬品局(FDA)から、痛みを和らげる作用がある「オピオイド鎮痛薬」と以下の薬などを同時に使った場合について、セロトニン症候群の危険性があるとして警告が出されました。

 抗うつ薬(三環系抗うつ薬、SSRI、SNRI)
 抗精神病薬
 片頭痛治療薬の一部(トリプタン製剤)
 パーキンソン病治療薬の一部(MAO-B阻害薬)
 吐き気止めの一部(オンダンセトロン、グラニセトロンなど)
 咳止めの一部(デキストロメトルファン)
 抗菌薬の一部(リネゾリド)
 セントジョーンズワート
 トリプトファン

一般にセロトニン症候群には次のような症状があります。

 興奮、幻覚、心拍数の増加(頻拍)、発熱、過剰な発汗、
 震え、筋肉のけいれん、こわばり、体をバランスよく動かせない、
 吐き気・嘔吐、下痢

 薬を飲んでいるときにもしこのような症状を感じたら、早めに薬を処方した医師に相談してください。


<参照文献>
Serotonin Syndrome after Clomipramine Overdose in a Child. Clin Psychopharmacol Neurosci. 2016 Nov 30.

 続いて、症例報告です。

■ セロトニン症候群で死亡、46歳女性は目が勝手に動いていた 台湾から症例報告
from The New England journal of medicine
2016年11月30日:MEDLEY
 セロトニンという脳内物質が異常に働くことによって、発汗や幻覚を特徴とする「セロトニン症候群」という危険な状態が現れます。薬が原因と見られるセロトニン症候群で死亡した女性に見られた特徴的な症状が報告されました。

◇ セロトニン症候群で死亡した女性の症例報告
 台湾の研究班が、セロトニン症候群で死亡した46歳女性の例を、医学誌『New England Journal of Medicine』に報告しました。
 この女性が救急治療部に運ばれたとき、38.6℃の発熱、心拍数が1分あたり169回、興奮、冷や汗などの症状がありました。
 眼球がいろいろな方向に動いてしまう「眼球粗動」、足が固まって動かせない「強剛」、腕が勝手に動いてしまう「ミオクローヌス」の症状も現れていました。
 この女性は症状が出る前に、ベンラファキシンという抗うつ薬を、処方された量を超えて飲んでいました。ほかにアルプラゾラムエスタゾラムという抗不安薬(または睡眠薬)も処方されていました。
 症状と服薬歴からセロトニン症候群と診断され、ICU(集中治療室)で治療が行われましたが、数日後に死亡しました。

<参照文献>
Ocular Flutter in the Serotonin Syndrome. N Engl J Med. 2016 Nov 3.
・[動画]

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第2世代抗精神病薬の賦活系・沈静系作用(副作用)について

2017-02-18 12:57:13 | 抗精神病薬
 抗精神病薬には「賦活系作用」「鎮静系作用」という表現があるらしい。
 人体に好ましくない作用であれば「副作用」とも表現されるようです。

 そのことに関する記事を見つけました。

■ 各抗精神病薬、賦活系と鎮静系を評価
2017/02/16:ケアネット
 抗精神病薬の副作用である賦活や鎮静は、薬物治療の妨げとなる可能性がある。米国・ニューヨーク医科大学のLeslie Citrome氏は、第2世代抗精神病薬の賦活および鎮静の副作用について評価を行った。Journal of clinical psychopharmacology誌オンライン版2017年1月30日号の報告。
 本研究では、統合失調症および大うつ病の補助的治療に適応を有する薬剤の製品ラベルで報告されている副作用の割合を調査し、第1選択薬として用いられる経口の第2世代抗精神病薬の賦活および鎮静特性を定量化し評価した。追加データソースとして、規定文書、調査概要、パブリッシュされた調査レポートを含んだ。副作用リスク増加とNNH(Number Needed to Harm:有害必要数)は、各薬剤対プラセボにて算出した。
 主な結果は以下のとおり。

・賦活や鎮静の副作用は、各抗精神病薬で違いが観察され、一部では賦活と鎮静の両方の可能性が示唆されている。

・統合失調症に用いられる薬剤では、主な賦活系薬剤としてlurasidone(NNH:アカシジア11 vs.傾眠20)cariprazine(NNH:アカシジア15 vs.傾眠65)が挙げられる。

リスペリドン(NNH:アカシジア15 vs.鎮静13)アリピプラゾール(NNH:アカシジア31 vs.眠気34)の賦活と鎮静のバランスは同程度であった。

・主な鎮静系薬剤は、オランザピン、クエチアピン、ziprasidone、asenapine、iloperidoneが挙げられる。

・賦活、鎮静に作用しない薬剤は、パリペリドン、brexpiprazoleであった。

・うつ病に用いられる抗精神病薬については、全体的に統合失調症と同様な所見であった。

・抽出されたデータは、製品ラベルに含まれる有害事象表に寄与する登録研究からの入手可能なものに限られていた。その後の比較研究では、異なる結果が示される可能性がある。


<原著論文>
Citrome L. J Clin Psychopharmacol. 2017 Jan 30.

 要約すると以下の通り;

・賦活系>鎮静系:lurasidone、cariprazine
・賦活系=鎮静系:リスペリドン(リスパダール®)、アリピプラゾール(エビリファイ®)
・賦活系<鎮静系:オランザピン(ジプレキサ®)、クエチアピン(セロクエル®)、ziprasidone、asenapine、iloperidone
・賦活/鎮静系に作用しない:パリペリドン(インヴェガ®)、brexpiprazole


 もうひとつ関連記事を。

 鎮静系副作用による中止率は、クエチアピン(セロクエル®)13.0%>オランザピン(ジプレキサ®)7.3%>リスペリドン(リスパダール®)4.2%>アリピプラゾール(エビリファイ®)2.0%

 ただし、抗精神病薬間の差というより、患者間の差が大きいのでそちらに注意すべきだという結論です。
 まあ、そう云われればそうですね。

■ 第2世代抗精神病薬、賦活と鎮静作用の違いを検証
2016/05/11:ケアネット
 若者に対する第2世代抗精神病薬(SGAs)の賦活や鎮静の効果について、米国・ニューヨーク大学ランゴン医療センターのZainab Al-Dhaher氏らが検討を行った。Journal of child and adolescent psychopharmacology誌オンライン版2016年4月19日号の報告。
 若者に対する第2世代抗精神病薬治療の適応症、有効性、忍容性(SATIETY)を評価する自然主義的コホート研究の一環として、SGAsを開始した抗精神病薬未治療の若者における賦活や鎮静症状の主観的評価を、Treatment Emergent Symptoms尺度(TESS)を使用し、3ヵ月間毎月収集した。中止率、TESSからの報告症状率、重症度は、臨床や治療パラメータに関連していた。TESSの測定は、任意の日中の賦活(ACTIVATION+)と鎮静症状(SEDATION+)の2つが定義された。
 主な結果は以下のとおり。

・4件の研究から得られた、SGAsを開始した抗精神病薬未治療の若者327例における鎮静による中断率は、クエチアピンが最も高く(13.0%)、次いでオランザピン(7.3%)、リスペリドン(4.2%)、アリピプラゾール(2.0%)であった(p=0.056)。

・抗精神病薬未治療の若者257例(13.8±3.6歳、男性率:57.8%)の使用開始薬剤は、アリピプラゾール40例、オランザピン45例、クエチアピン36例、リスペリドン135例であり、ベースライン後1回以上のフォローアップを実施した。

・ベースラインの有病率は、ACTIVATION+(39.9%)、SEDATION+(54.1%)で、SGAs間に差は認められなかった。

・ACTIVATION+とSEDATION+は、時間とともに有意に変化した(ACTIVATION+ 減少:p=0.0002、SEDATION+ 増加:p<0.0001)。それぞれのSGAs間でわずかな違いが認められ、オランザピンのACTIVATION+は低く(p=0.002)、フォローアップ中のアリピプラゾールのACTIVATION+ はやや高く(p=0.018)、アリピプラゾールのSEDATION+ は低かった(p=0.018)。

・4つのSGAsにおいて、不眠症は減少し(p=0.001)、過眠症が増加した(p<0.001)。

・ベースライン後の傾眠の有病率は、最も頻繁にみられたが、TESSの訴えは85%が軽度であり、SGAs間の違いはなかった。

・年齢の低さが、賦活症状と関連し、年齢の高さが鎮静症状と関連していた。そして、ベースライン時の機能の低さは、両方の増加と関連していた。

・精神運動遅滞率は、統合失調スペクトラム障害において高かった。一方で、診断にかかわらず、ADHD治療と精神運動興奮との関連が認められた。

 結果を踏まえ、著者らは「単独TESSによるレイティングの独立予測因子は、SGA間の特異的な差よりも、むしろ臨床パラメータを含んでいる。このことから、特定のSGAsに注意を払うよりも、慎重な個別化治療戦略の必要性が示唆された」とまとめている。


<原著論文>
Al-Dhaher Z, et al. J Child Adolesc Psychopharmacol. 2016 Apr 19.
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「心のバランスを取り戻そう」(大野裕先生)

2017-02-04 19:08:16 | 心理療法
 NHKラジオ第一放送「健康ライフ」より。
 認知行動療法の第一人者である大野先生のお話です。
 今までに彼の著書を何冊か読んだことがありますが・・・どうもピンとこないんです。
 なんとなく「当たり前のこと」しか書いてないように感じる私(^^;)。
 おそらくその本質を理解していないのでしょう。

 気になった箇所を備忘録としてメモしておきます。
 ポイントは、
・自分の気持ちや行動を立ち止まって分析するクセを付け、うまくいかないときに応用すべし。
・そのスキルとして「元気度の高い行動」を知ることと、「3つのC(Communication, Control, Cognition)」が大切。
 ・・・てとこかな。

■ 「気分の変調は心のアラーム」
・「うつ」「不安」は心のサイン。
・「何かを喪失した」「何か大変なことが起きるかもしれない」というメッセージを立ち止まって見つめてみよう。
・落ち込んでいるときの3つの徴候:自分自身に対して悲観的、周りとの関係に悲観的、将来に対して悲観的。
・不安なとき3つの徴候:「危険なことを過大評価」「自分の力を過小評価」「周りからの支援を過小評価」
・自分の心の状態を時々振り返る習慣をつけよう。
・食欲・睡眠・お腹の調子は順調か。
・気づくコツは「いつもと気分が違うかどうか、毎朝(あるいは夜)チェック」

■ 「認知行動療法を知る」
・アーロン・ベック医師(アメリカ)が提唱。受け入れられるまで30年かかった。
・認知とは? ・・・目の前で起きていることをどう受け取るか。
・感情は変えることはできないが、判断は変えることができる。
・ネガティビティバイアス:人間は何かが起きた時にマイナス(悪い方)に考える傾向がある(生き延びるための本能)。
・そこに気づき、再考して正しく認識し直し、過剰なかつ不必要なマイナス思考に陥らないようサポートすることが認知行動療法。
・心が落ち込んでいるとき=何かを失ったとき。マイナス思考の中にプラスの要素を見つけて対策を考えよう。

■ 「心のスイッチを入れてみよう」
・落ち込んで何もやる気がしない。つらいことから逃げようとする。自分の殻に閉じこもる。元気がなくなる。
・元気の素は行動の結果。何もしないと元気が出ない、無くしてしまう。
・気力が出ないときに気力を出す方法は「行動」。
・自分の行動を記録し、その行動により気持ちが落ち込む、あるいは元気が出る、ということを認識する。行動直後に「元気度○○点」と点数化・数値化することがオススメ。
・つらいくなったら「自分が元気になる行動」を増やしてみよう。元気度が低い行動をやめるよりは、元気度が高い行動を増やすのがコツ。止める努力は難しいので自然に減るように仕向けよう。
・気分転換のコツを治療に応用したものです。

■ 「考えをしなやかにする」
・行動だけではなく考えにも目を向けよう。
・自分の考えが正しいかどうか(思い込みかもしれない・・・)をチェックしてみよう。
・次の対応が考えられて試すことができれば気持ちが楽になる可能性が生まれてくる。
・感じたことが実際にどうなのか、いくつかの候補を挙げて考える習慣を。
 (例)「友達に無視された、彼は私を嫌っている。」
  → 忙しいので気がつかなかったのかもしれない、別のことで怒っていて気がつかなかったのかもしれない、などいろんな可能性を模索。でも答えはわからない。
  → メールでそれとなく聞いてみよう(次の行動につながった)。
・心がつらいときは「何でつらいんだろう、思い過ごしではないの?」と立ち止まって考えよう。その結果がよくても悪くても次のステップに進める(前向きの考えを導き出せる)。

■ 「ストレスを味方につける」
・ストレスの正体:生活に降りかかる困った問題。
・よいストレスも悪いストレスもある。ほどほどの心理的ストレスを感じている状態がよい
・ストレスを味方に付けるには・・・ストレスを強く感じすぎないようにする。それを自分でコントロールすることができれば悪いストレスをよいストレスに変えることができるかもしれない。
・ストレス認知に必要なことは、まず自分の変化に気づくこと、そして「3つのC」が大切:
 Communication:人とのつながり、これを大切にすると手助けを得たり役に立つ。
 Control:自分をコントロールできると根拠のある自信が生まれ、前向きに行動することができるようになる。空元気ではいけない。
 Cognition:冷静に現実を見て対策を考える。冷静に現実を見て柔軟に強み弱みを判断することができる。
・人には苦手なストレスと得意なストレスがある。仕事でストレスを感じやすい人、人間関係でストレスを感じやすい人がいる。
・ふだんは自動運転だが、アラームが鳴ったときは手動に切り替えて自分でチェックしコントロールする。
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