発達障がい・こころのやまい

専門外ながら相談を受けることがあり、その際に読んだ本や集めた情報を書き留めました(本棚9)。

統合失調症患者の攻撃性に有用な薬物療法

2016-01-19 06:28:00 | 
 病識のない統合失調症患者さんを病院へ連れて行くことは大変という話を耳にしたことがあります。
 この病気の「攻撃性」に有効な薬に着目した論文を紹介します。
 
 ベンゾジアゼピン系は依存性/習慣性が発生しやすく、かつ攻撃性を増すということですから、長期投与はできれば避けたい薬だと思いました。

■ 統合失調症患者の攻撃性に有用な薬物療法は
提供元:ケアネット、公開日:2016/01/18)より抜粋
□ 統合失調症患者の攻撃性に有用な薬物療法は
 フランス・Fondation FondaMentalのG. Fond氏らは、統合失調症患者の攻撃性に関する薬物治療の有用性を検討した。その結果、第2世代抗精神病薬(SGA)は第1世代抗精神病薬(FGA)に比べて攻撃性を有意に低下すること、また気分安定薬および抗うつ薬は攻撃性に大きな変化をもたらさずベンゾジアゼピン系薬ではむしろ攻撃性が高まることが示された。著者らは、「結果は、攻撃性を示す統合失調症患者におけるSGAの選択を支持するものであるが、より長期間で詳細な研究が必要である」と述べ、また「ベンゾジアゼピン系薬の有害事象(とくに依存および認知障害)の可能性や今回の結果を踏まえると、ベンゾジアゼピン系薬の長期処方は統合失調症患者や攻撃行動を有する患者には推奨されない」と結論している。Psychopharmacology誌オンライン版2015年12月3日号の掲載報告。

 主な結果は以下のとおり。

・被験者は、統合失調症患者255例、統合失調感情障害76例の計331例(平均年齢 32.5歳、男性75.5%)であった。
・SGA服用患者は非服用患者に比べ、BPAQスコアが低かった(p=0.01)。具体的には、これらの患者において肉体的、言語的攻撃性スコアが低かった。
・ベンゾジアゼピン系薬服用患者は非服用患者に比べ、BPAQスコアが高かった(p=0.04)。
・気分安定薬(バルプロ酸塩を含む)および抗うつ薬服用者と非服用者の間で、BPAQ スコアに有意差は認められなかった。
・これらの結果は、社会人口統計学的特性、精神病症状、病識、治療コンプライアンス、抗精神病薬の1日投与量、抗精神病薬の投与経路(経口薬 vs.持効型製剤)、現在のアルコール障害、日常的な大麻の摂取と独立して認められた。

<原著論文>
Fond G, et al. Psychopharmacology (Berl). 2015 Dec 3.
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双極性障害I型とII型の違いをMRIで分析

2016-01-19 06:07:31 | 
 双極性障害は躁状態とうつ状態のサイクルを反復する病気です。
 双極障害はⅠ型のⅡ型に分けられ、入院が必要になる強い躁状態をきたす場合はⅠ型、日常生活に支障のない程度の躁状態にとどまる場合はⅡ型と診断されます。

 紹介する論文は、双極性障害のⅠ型とⅡ型をMRIによる脳のマクロ的構造を評価して鑑別する試みです。
 ポイントは、以下の通り;

・双極性Ⅰ型障害では前頭部、側頭部および内側後頭部で、皮質容積・皮質厚・皮質表面積の低下を認めた。
・双極Ⅱ型障害では前頭部のみで、皮質容積・皮質厚・皮質表面積の低下を認めた。


 変化の範囲が異なるようですね。

■ 双極性障害I型とII型、その違いを分析
提供元:ケアネット、公開日:2016/01/19
□ 双極性障害I型とII型、その違いを分析のイメージ
 スウェーデン・カロリンスカ研究所のChristoph Abe氏らは、双極性障害I型(BD I)およびII型(BD II)患者について、皮質容積・皮質厚・皮質表面積を同時に分析するコホート研究を行い、診断に関連した神経生物学的な違いを明らかにした。著者らは、「今回の結果から、BD IとBD IIの症状の違いを説明することができ、診断のバイオマーカーとなりうる可能性を示している」と結論している。ただし、本検討結果で示された違いについては、「疾患の進行性の変化によって、また発症前の状態によっても説明でき、社会・環境・遺伝的な未知の要因に影響された可能性もある」と研究の限界にも言及している。Journal of Psychiatry Neuroscience誌オンライン版2015年12月7日号の掲載報告。

 BDは、主に躁病、軽躁病、うつ病の発症によって特徴付けられる一般的な慢性精神障害で、認知機能障害あるいは脳構造の異常(健常者に比し前頭部の皮質容積が小さいなど)と関連している。I型とII型では症状や重症度が異なるが、これまでの研究はBD Iに焦点が当てられていた。研究グループは、BD I患者81例、BD II患者59例および健康な対照群85例を対象に、皮質容積、皮質厚、皮質表面積をMRIで測定し、重要な交絡因子に関して調整し解析を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・BD患者の前頭部、側頭部および内側後頭部で、皮質容積・皮質厚・皮質表面積の異常が認められた。
・内側後頭部の異常にはリチウムと抗てんかん薬の使用が影響を及ぼしていた。
・BD I患者およびBD II患者では共に一般的な皮質異常(健常者と比較し前頭部における皮質容積・皮質厚・皮質表面積が低下)が認められた。
・側頭部および内側後頭部の異常はBD I患者でのみ認められ、皮質容積および皮質厚が異常に低かった。

<原著論文>
Abe C. et al. J Psychiatry Neurosci. 2015 Dec 7;41:150093.
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