小児科医という職業柄、発達障がい関連の本を何冊か読んだことがありますが、「なるほどなあ」と読み終わっても、しかし目の前の患者さんに何もできません。一般小児科医が感じているジレンマです。
前2項では「診断の難しさ」について書きましたが、診断後の対応に関しては、なかなか「コレ!」といった書籍や文章に出会えませんでした。
唯一、これは確かに効果があると感じたのは「応用行動分析」という手法くらいでしょうか。とくに奥田健次氏の本はわかりやすいです。
東洋経済ONLINに岩波明Dr.が対応についても書いていましたので読んでみました。
■ 発達障害「家族だけで解決するのが超危険」な訳 子供を「叱る」よりもまずは「離れる」を選ぼう
岩波 明 : 精神科医
小学校高学年になると、本人がなんとなく「私ってクラスメートと違うのかなあ?」と気づき始めるようです。そんなときの対応は・・・
親が子どもに説明するにしても、「発達障害」という言葉を使う必要はないと思います。発達「障害」という言葉のインパクトが強すぎるからです。本人も拒否反応を示し、自分が発達障害だと認めたがらないかもしれません。「あなたにはこういう特性があって、ほかの人とこんなふうに違うから、こんな場面ではこう気をつけたほうがいい」このように、日常のトラブルについて解決していく具体的な話し合いをするのがいいと思います。発達障害そのものの理解より、問題解決を優先しましょう。
なるほど、その通りだと思います。
そして診断されたら「まず学校へ報告すべし」と記しています。
学校にもよりますが、ルールや制限を緩める対応が期待されます。
また、いろんな“被害”(性被害・詐欺被害)にも会いやすい傾向があります。
ASD(自閉スペクトラム症)に顕著ですが、発達障害の人は、人の言葉の裏が読めず、言葉を真に受けてしまう、信じてしまう傾向が強くあります。その結果として性被害が起こりやすいのです。同じ理由で、詐欺などの被害にも遭いやすいと推測されます。
対応はパターン学習でしょうか。
まずは、そのような危険があるということを親なり教師なりが指導することが大切です。また、「知らない人に声をかけられたら警戒しなさい」など、具体的なルールを作ることです。言葉の裏を読むのは難しくても、こういうときに性被害が起こりやすい、こういうときはお金のトラブルが起きやすいと、パターンを覚えることならできるからです。
対応のコツは「治そうとしない」「解決しようとしない」と岩波Dr.は書いています。
親が頑張っても「治る」「解決する」ものではない、と。
ではどうすればよいか?
一度「離れ」て気持ちをリセットすることを勧めています。
一度は注意することが必要です。でも、その後も問題行動が続くようなら、いったんは子どもから離れるように指示します。家族との関係性を悪くしないことが、いちばんだからです。同じ注意や叱責が何度も続けば、相手も反論してくるでしょうし、やがて感情的になって、お互いに罵声を浴びせ合うことになりかねません。
・・・「なんとか子どもの問題を解決したい」という親心があるのはわかります。でも、口で注意して行動が変わるぐらいなら、とっくに解決しているはずです。
つまり「家族だけで抱えないこと」がポイントである、と。
そのために病院が存在するので、大いに利用してください、と。
最終的には、本人が「これはまずい」と自覚して、自分から「変わろう」と思わない限り、本人の行動は変わりません。親が援助する姿勢は大切ですが、同時に「家族が口で言っても、簡単には変わらない」ことは認識しなければいけません。
家族にできないからこそ、病院などほかのアプローチが用意されている、と考えてください。・・・ASDやADHDの治療をきちんとすることによって、さまざまな問題行動が少なくなっていくことは珍しくないのです。