発達障がい・こころのやまい

専門外ながら相談を受けることがあり、その際に読んだ本や集めた情報を書き留めました(本棚9)。

双極性障害「初期診断はうつ病 65%」「正確な診断まで平均4年」

2017-01-10 06:16:55 | 双極性障害
 双極性障害(旧名:躁うつ病)は診断が難しい疾患です。
 うつ状態で発症すれば「うつ病」、少しでも幻覚・幻聴を訴えれば「統合失調症」と診断されがち。
 経過中に「ん?どうも変だぞ・・・」と疑問が出てきて診断を再検討し、双極性障害と最終診断されるパターンが少なからず・・・というか結構存在します。

■ 双極性障害「初期診断はうつ病 65%」「正確な診断まで平均4年」
ケアネット:2017/01/10
 双極性障害は、最初の医療機関を受診時に正しく診断される患者が約4分の1しかおらず、初診から正確な診断に至るまでには平均4年かかることが、杏林大学の渡邊 衡一郎氏らによる調査で明らかになった。Neuropsychiatric disease and treatment誌2016年11月21日号の報告。
 双極性障害は、再発や躁病・うつ病エピソードを繰り返す疾患である。そのため、正確な診断・適切な治療開始までに時間がかかる場合が多い。この要因としては、双極性障害に対する医師の理解不足も考えられるが、患者の洞察力不足により、症状を医師へ正確に伝えることができないという可能性も考えられる。また、誤った診断から正しい診断に至った要因がどのようなものかは不明である。
 そこで著者らは、これらを明らかにするため、日本の双極性障害患者1,050例を対象にインターネット上でアンケート調査を実施した(2013年2月~3月)。結果は、記述統計を用いて分析した。
主な結果は以下のとおり。

・457例(男性226例、女性231例)が回答した。
・最初の医療機関を受診時、専門医(精神科医、心身医学科医)を受診していたのは86%であった。
・最初の医療機関を受診時の症状は、うつ症状が70%、混合状態が15%、躁状態は4%であった。
・最初の医療機関で双極性障害と正しく診断されていたのは約4分の1であった。
・初期診断で最も多かったのは、うつ病/うつ状態(65%)であった。そのほかに多かったのは、自律神経失調症(14%、日本で未定義の精神疾患の診断に使われる)、パニック障害(11%)であった。
・70%が最初または2件目に受診した医療機関で双極性障害の診断がついたが、残りの30%は正確な診断に至る前に3件以上の医療機関を受診していた。
・初診から正確な診断に至るまでの平均時間差は4年(標準偏差±4.8年)であった。3分の1は5年以上の時間差があった。
・正確な診断に至るまでに時間がかかった主な要因は以下の3つであった。
  「躁の症状を病気として認識しておらず、医師に伝えなかった」(39%)
  「双極性障害という疾患を知らなかった」(38%)
  「医師とのコミュニケーションが欠如していた」(25%)
・70%以上の患者が、双極性障害の診断に至る前に診断が変更された(1回変更 33%、2回変更 25%)。
・正確な診断に至った主な要因は以下の3つであった。
  「治療の過程で医師が双極性障害の可能性を疑った」(57%)
  「躁状態に切り替わった」(30%)
  「他の医師を受診したら、診断が変更された」(28%)
・最初に誤って診断され、不適切な治療が行われたと考えられる患者は、長期就労や学校での勉強ができない(65%)など、社会経済的な問題を最も多く抱えていた。


<原著論文>
Watanabe K, et al. Neuropsychiatr Dis Treat. 2016;12:2981-2987.
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うつ病休暇取得者の半数が再燃

2017-01-08 13:07:10 | うつ病
 うつ病で休職した人の半数は再燃するという記事です。
 日本の労働環境を抜本的に変えない限り、うつ病はなくならないし再発も防げないことはわかっているのに変えられない・・・。

■ <うつ病休暇>半数が再取得「企業は配慮を」 厚労省研究班
2017.1.8:毎日新聞
 うつ病になって病気休暇を取った大企業の社員の約半数が、復帰後に再発し、病気休暇を再取得していたとする調査結果を、厚生労働省の研究班(代表者、横山和仁・順天堂大教授)がまとめた。特に復帰後2年間は、再取得する人が多かった。仕事の負担が大きな職場ほど再取得のリスクが高いことも裏付けられた。専門家は社員の職場復帰について、企業が慎重に取り組むよう訴えている。
 調査は、社員1000人以上の大企業など35社を対象に、2002年4月からの6年間にうつ病と診断され、病気休暇を取得した後に復帰した社員540人の経過を調べた。その結果、うつ病を再発して病気休暇を再取得した人の割合は、復帰から1年で全体の28.3%、2年で37.7%と高く、5年以内で47.1%に達していた。職場環境について、仕事への心理的な負担を調べる検査「ストレスチェック」を職場メンバーに実施した結果、負担が大きいと感じる人の多い職場ではそうでない職場に比べ、病気休暇の再取得のリスクが約1.5倍高かった。
 休暇期間では、1回目の平均107日に対し、2回目は同157日と1.47倍に長くなっていた。1回目の休暇期間が長い場合や、入社年齢が高くなるほど、2回目の休暇が長くなる傾向もみられた。
 調査した東京女子医大の遠藤源樹助教(公衆衛生学)は「うつ病は元々再発しやすい。企業は、病気休暇の再取得が多い復帰後2年間は、特に注意を払い、時短勤務などを取り入れながら、再発防止に努めてほしい」と指摘している。
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双極性障害における再入院リスクの低い薬物療法は?

2017-01-05 06:05:44 | 双極性障害
 非定型抗精神病薬+気分安定薬の組み合わせが、気分安定薬単独や定型抗精神病薬+気分安定薬よりも有利であるという報告を紹介します。
 非定型抗精神病薬は、それまでの定型抗精神病薬の副作用を軽減すべく開発されてきた薬ですが、効果も弱くなったという印象が一般的。でも、再入院リスクという視点ではより有効であった、という内容で安心できました。

■ 双極性障害、再入院リスクの低い治療はどれか
ケアネット:2017/01/05
 気分安定薬(MS)による抗精神病薬補助療法が再発予防につながるとされる概念は、双極性障害(BD)患者における少数の自然主義的研究により支持されている。イスラエル・テルアビブ大学のEldar Hochman氏らは、MS(リチウムまたはバルプロ酸)単独療法または非定型、定型抗精神病薬補助療法により退院した双極性障害I型の躁病患者における1年間の再入院率を比較した。Bipolar disorders誌オンライン版2016年12月9日号の報告。
 2005~13年に躁病エピソードで入院したBD I型患者201例を対象に、退院時の治療に応じて1年間の再入院率をレトロスペクティブに追跡調査した。退院時の治療は、MS単独療法、非定型抗精神病薬+MS療法、定型抗精神病薬+MS療法に分類した。また、治療群間で1年間の再入院期間も比較した。再入院に影響を及ぼすことが知られている共変量を調整した多変量生存分析を行った。
 主な結果は以下のとおり。

・非定型抗精神病薬+MS療法における1年間の再入院率(6.3%)は、MS単独療法(24.3%、p=0.008)、定型抗精神病薬+MS療法(20.6%、p=0.02)と比較し、有意に低かった。
・非定型抗精神病薬+MS療法における再入院までの期間(345.5日)は、MS単独療法(315.1日、p=0.006)、定型抗精神病薬+MS療法(334.1日、p=0.02)と比較し、有意に長かった。
・非定型抗精神病薬+MS療法における調整後の再入院リスクは、MS単独療法と比較し、有意に低下した(HR:0.17、95%CI:0.05~0.61、p=0.007)。


 著者らは「BD躁病エピソード患者の再入院を予防するためには、MS単独療法よりも、非定型抗精神病薬+MS療法のほうが効果的であると考えられる」としている。


<原著論文>
Hochman E, et al. Bipolar Disord. 2016 Dec 9.
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