発達障がい・こころのやまい

専門外ながら相談を受けることがあり、その際に読んだ本や集めた情報を書き留めました(本棚9)。

自閉症スペクトラムが世界中で増えている

2025-01-17 06:12:46 | カウンセリング
昨年、自治体の乳幼児健診(3歳児健診)に参加したときのことです。
カルテに「発達障害」あるいは「発達障害の相談中」の文字が目立ちました。
保健師さんに確認すると、なんと受診者の1/3が発達障害(あるいは相談中)とのこと。
その数字に愕然としました。

発症率が増えたのは、診断基準が変わったからだとか、社会の受け入れ体制が変わったからだ、と言う意見もありますが、やはり実際に増えているのでしょう。

この世代が社会を支える時代になったら、日本はどうなるのでしょう。
3人に1人はサポートが必要・・・その負荷に社会は耐えられるのでしょうか。

以下の記事を読むと発達障害の増加は日本だけではなく、世界規模であることがわかります。


▢ 若年者の健康問題、自閉症がトップ10にランクイン
HealthDay News:2025/01/17:Care Net)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 2021年の世界での自閉スペクトラム症(以下、自閉症)の患者数は約6200万人に上ったことが、新たな研究で明らかにされた。米ワシントン大学健康指標評価研究所のDamian Santomauro氏らによるこの研究結果は、「The Lancet Psychiatry」に12月19日掲載された。
 この研究は、世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study;GBD)2021に基づき、自閉症の有病率と健康負担(障害調整生存年〔DALY〕)の最新の世界的な推定値を提示したもの。有病率の推定では、受動的な患者の発見に依存した研究を除外し、新たなシステマティックレビューに基づきデータを更新した。また、障害による重み付けの推定方法も修正された。最終的に、33カ国における自閉症の有病率に関する105件の研究データが統合された。
 解析の結果、2021年には世界で約6180万人の人が自閉症であると推定された。これは、127人に1人が自閉症であることを意味するという。世界の年齢調整有病率(10万人当たり)は788.3人で、男性では1,064.7人、女性では508.1人と推定された。自閉症による健康負担は1150万DALYsと推定された。これは、10万人当たり147.6DALYs(年齢調整済)に相当する。地理的枠組み別に見ると、年齢調整済DALY率は、東南アジア・東アジア・オセアニアで10万人当たり126.5DALYsと最も低く、高所得地域で204.1DALYsと最も高かった。またDALY率は年齢とともに減少する傾向が見られ、5歳未満の子どもでは10万人当たり169.2DALYs、20歳未満では163.4DALYs、20歳以上では137.7DALYsと推定された。ただし、こうした健康負担は生涯を通じて認められた。さらに、20歳未満の若年者では、自閉症が非致死的な健康負担のトップ10にランクインすることも確認された。
 研究グループは、「これらの数字は、人生の早い段階で自閉症を診断し、生涯を通じて役立つ治療を受けられるようにすることがいかに重要であるかを示している」と述べている。また、「自閉症の子どもや若者のニーズだけでなく、研究やサービス提供の対象として考慮されないことが多い成人のニーズにも対処することが不可欠だ」としている。
 ただし、本研究で推定された自閉症の有病率は、米疾病対策センター(CDC)の推定(36人に1人)よりはるかに高い。この点について研究グループは、「この高い有病率は、臨床および教育記録の症例ノートのレビューにより個人が自閉症の診断基準を満たしている可能性が高いかどうかを判断したものであり、集団診断調査で行われるような自閉症の臨床的評価により判断されたものではない。そのため、自閉症の有病率は過大評価されている可能性がある」と述べている。
 研究グループは、「世界的な自閉症の健康負担に対処するには、早期発見プログラムへのリソースを優先させる必要がある。特に、ケア、介護者のサポート、および自閉症者の生涯にわたり変化するニーズに合わせたサービスへのアクセスが限られている成人や低・中所得国の人を対象に、診断ツールを改善することが重要だ」とワシントン大学のニュースリリースで結論付けている。

<原著論文>

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たくさん愛情を注いだはず・・・なのに。

2025-01-01 12:30:01 | カウンセリング
「あなたのためを思って」
「お前の将来を思って」
親は自分の行動に講理由をつけがちです。

しかし子どもにとっては「ありがた迷惑」のことが多いのが現実。

事実、私も、
「勉強を頑張れ、もっと頑張れ」
「いい大学へいけばいい生活が待っている」
と常に圧力を感じた中学高校時代でした。
現状に満足せずもっと上を目指すことを指示され、
期待した成績より悪ければガッカリした表情になり、
“そのままの自分“を認めて愛してもらった感情は希薄でした。

私の両親は戦争で青春も将来の夢も奪われた世代、
なので子どもに期待するのはある程度仕方が無い、
と割り切ったつもりでも、
窮屈な日々であり、そのために人生を曲げられた感覚が今でも残っています。

この記事は本の内容の紹介ですが・・・ウ〜ン、すべて想定内なので、
購入して読む気が起きません。

▢ こうして親子の間にどんどん溝ができていく…いたって普通の家庭で愛着の問題を抱える子が育つ深刻な理由ほめられても、無条件の愛情は感じられなかった…
村上 伸治:精神科医
2024.12.27:PRESIDENT Online)より一部抜粋(下線は私が引きました);

普通の家庭で育った子どもも愛着の問題を抱えるのはなぜなのか。精神科医の村上伸治さんは「親の側は一生懸命愛情を注いだつもりでも、子の側は『素の自分を愛してはもらえなかった』という思いを抱き続け、親子間に溝ができてしまうことがある」という――。

▶ 普通の家庭でも愛着の問題が生じる
虐待などの不適切な養育環境ではなく、まったく普通の家庭で育てられたにもかかわらず、愛着に問題を抱えている人が実は少なくないのです。
もっとも典型的なのは、神経発達症(発達障害)がみられる子どもの場合です。
愛着関係は相互のやりとりで形成されます。愛着形成がもっとも活発に行われるのは、0歳から3歳ころまでの時期です。ASD(自閉スペクトラム症)がある場合、他者との情緒・相互的交流が育ちにくかったり、かなり遅れたりするため、親との愛着形成が乳幼児期にはなかなか進まず、発達障害に加えて愛着の問題を抱えやすくなります。
また、発達の問題がなくても、些細な誤解がきっかけとなり親子関係にボタンのかけ違いが生じ、それが長期化し、親子の距離が広がってしまった可能性も考えられます。
目立った衝突や葛藤がないため、親も子も自分たちのあいだにある溝を、なかなか自覚できません。
基本的安心感や自己肯定感が乏しく、それが子どもの頃からあったのであれば、どこかに愛着の問題(広義の愛着障害)が隠れていると考えるべきでしょう。

▶ くり返す精神疾患の背景
うつや不安症などの精神疾患がくり返されるケースでは、表面化している症状だけを見るのではなく、根底にある身体の機能的な問題(発達の問題)と養育の問題(愛着の問題)にまで目を向ける必要があります。
・・・精神疾患の根底には発達と愛着の問題が存在すると考えると理解しやすいでしょう。
とくに愛着は、物心のつかない、自我ができあがっていない時期に生じ、精神という建物の土台をつくります。ここに問題があると、土台の歪みが、やがて別の精神疾患などを引き起こします。
上層階や屋根が立派でも土台が弱ければ、その建物は傾いてしまいます。外にあらわれた疾患の背景にある愛着の問題に目を向け、自己理解を深めていくことは、精神疾患の根本的な治療にもつながるのです。

▶ 素の自分を見てもらえなかった
成績や試合の結果について親が子どもをほめるとき、成果に注目してほめる場合とがんばりに注目してほめる場合とでは、子どもに与える影響は異なります。成果ばかりに注目してほめると、本人は「素の自分」ではなく「出した結果」だけがほめられたように感じてしまいます。
本人にとって、成果はあくまで自分の外側。成果が出たことだけをほめられると、まるで「きれいなコスメだね」と言われているように感じ、素の自分がほめられているとは感じられません。
親の側は一生懸命愛情を注いだつもりでも、子の側は「愛情をかけてもらってはいたが、親が求める条件を満たさなくなったら、愛してもらえなくなると感じていた」「素の自分を愛してはもらえなかった」という思いを抱き続けることになるのです。
成績がよくてもわるくても、試合で勝っても負けても、親がつねに「がんばったね」とプロセスを見てくれていたら、無条件の愛情を感じられ、素のままの自分に生きる価値があると思えたのかもしれません
「がんばらなくてもほめてあげてください」と伝えたら「がんばらなくてもほめるんですか」と聞き返したお母さんがいました。人にはがんばれないときもあります。そんなときは「生きているだけでじゅうぶん」と、ほめてあげてください。がんばれないときも「それでいいのよ」とハグすることで、子どもは親との絆を深めて安心できるのです。

▶ 親が忙しそう、しんどそう……
子どものほうから愛着形成のサイクルを止めてしまう場合があります。親が忙しかったり大変そうだったりすると、子どもがそれを察して、自分から愛情要求を止めてしまうのです。
こうした傾向は、生まれつきの性質も関係します。幼くても周囲の状況や他人の表情を敏感に感じとれる子や、その場の状況に対して、適切なふるまいができる子がいます。親が忙しそう、つらそうだとわかると、自分の要求を控え、親が望むように行動してしまいます。
子どもをかまえないほど忙しい親と、このタイプの子のくみ合わせになると、愛着形成は双方からストップしてしまいます。親からすると、子どもが早熟で自立したように見えるため、「もうあなたは大丈夫ね」と安心して子どもから離れてしまいます。
手がかからないしっかりした子ども時代を過ごしたように見えますが、本当はもっと甘えたかったという思いを抱えている人が多いのです。

▶ 甘えることができなくなった
親や周囲の大人からほめられたことがきっかけで愛着サイクルを止めてしまう子もいます。
たとえば下の子が生まれて忙しいとき、上の子が世話をしてくれると親は「さすがお姉ちゃんね」などと、ほめることがあります。上の子はまだ幼く、本当は弟や妹のように親に甘えたいのに「お兄ちゃんだから」「お姉ちゃんだから」と言われると、甘えられなくなってしまいます。
また、家族に病人がいて、小さいときから家事やケアを担っている子もこのタイプで、現在はヤングケアラーとして問題化しています。
「しっかりしてるね」「強いね」という親のほめ言葉は、「あなたはもう甘えなくていいわね」というサインにもなります。サインを受けとった子どもは自ら「甘えたい」という本音に蓋をしてしまいます。
ほめられることで自立を意識するようになった子は、じゅうぶんな安定感や安全基地がつくられる前に愛着サイクルを止めてしまいます

▶ 発見が遅れるヤングケアラー
病気の家族の介護や家事を過度にまかされている子をヤングケアラーと呼びます。子どもらしい遊びや学習時間、睡眠や将来の夢など自分の人生を犠牲にしているのに、家族には「よくお手伝いする良い子」とほめられ、本人も「自分がやらないと」と思い込んでいるので、学校の先生も周囲の大人も気づかず発見が遅れてしまいます。

▶ 「タイパ」が子どもの成長を急かす
現代はスピードが重視される時代です。「タイパ」という言葉が流行るように、誰もが時間をかけず効率よくものごとを片づけようとしています。子どもの心の成長にもその影響が出ているように思えます。
共働きの両親と核家族が増えたせいなのでしょうか、家事や育児にも時間や気持ちの余裕がなくなってきています。ますます子どもも「早く大人になってほしい」と成長を急かす親御さんが増えた印象です。仕事や家事を効率化するのは合理的かもしれませんが、子どもの成長は違います。数十年やそこらで人間の成長スピードが変わるはずもなく、子どもの心も体も一人前に成長するには、急かされない環境で、ゆったりとした時間が必要です。

▶ 個人の努力だけではどうしようもない
お話ししてきたように、人の精神構造は建築のようなもので、突貫工事でつくればいろいろな問題が生じます。後から補強もできますが、それにはとても大変な労力と時間がかかってしまいます。
だから、時間をかけて基礎工事をすることが大切なのです。「まだやってるの」と言われるぐらい時間をかけたほうが建物は安定します。
誰もが愛着の問題を抱えやすい世のなかになったのが現代です。本書を手にとったみなさんも、過去のできごとを思い出すにつれ、いろいろと思い当たることがあったのではないでしょうか。いつの時代も、親と子がじっくり向き合う時間がとれれば理想的なのです。
しかし、家族関係、人間関係は社会の影響を大きく受けます。個人の努力だけではどうしようもない部分もあるのです。
さまざまな精神疾患で受診する患者さんと話をしていると、最初は気づかなかった生育の問題に気づくことがよくあります。本人も意識してこなかった自己肯定の問題が浮かび上がり、それが主題になって診察が進むこともあります。毎回ほんの10分程の診察でも愛着の問題に目をやり、改善していくこともできると感じています。
自分の愛着の問題に気づいた人は、親との関係の再構築が困難であっても、周囲の人との間で愛着形成を補うことで心の補強工事をしていくことは可能です。

▶ 愛着形成を社会全体で支える
かつて日本社会は地縁が深く、近所のおじさんおばさんと家族ぐるみのつき合いがありました。子どもたちは親や家族と愛着を形成した後、愛着を身近な大人に広げることで、親との愛着に不備があっても、身近な大人との関係でそれを補うことができました。
ところがいま、地縁社会は失われ、子どもは親や先生以外の大人と交流する機会はとても少なくなっています。愛着を親子関係だけのことにせず、身近な大人との関係を豊かにすることで、愛着形成を社会全体で支えるようになることが望まれます。

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