発達障がい・こころのやまい

専門外ながら相談を受けることがあり、その際に読んだ本や集めた情報を書き留めました(本棚9)。

クエチアピン(セロクエル®)の自律神経系への影響

2017-08-04 06:07:12 | 抗精神病薬
 様々な情報が飛び交う抗精神病薬。
 今回は、自律神経系への影響を検討した報告を紹介します。

 以下の4つの抗精神病薬を心拍変動のパワースペクトル分析により自律神経系(ANS)活性を評価;
・リスペリドン(リスパダール®)
・オランザピン(ジプレキサ®)
・アリピプラゾール(エビリファイ®)
・クエチアピン(セロクエル)

この中で、クエチアピンが他の薬剤と比較して有意に活性が低下していたとのこと。

■ 4種類の非定型抗精神病薬、自律神経系への影響を比較:横浜市大
ケアネット:2017/08/04
4種類の非定型抗精神病薬、自律神経系への影響を比較:横浜市大のイメージ
 抗精神病薬は、統合失調症患者の自律神経系(ANS)機能不全に関連するが、各非定型抗精神病薬の影響は明らかになっていない。横浜市立大学の服部 早紀氏らは、リスペリドン、オランザピン、アリピプラゾール、クエチアピンの4種類の非定型抗精神病薬が、ANS活性にどのような影響を及ぼすかを調査した。Schizophrenia research誌オンライン版2017年7月12日号の報告。
 対象は、日本人統合失調症患者241例。すべての患者に非定型抗精神病薬単独療法を実施した。内訳は、リスペリドン90例、オランザピン68例、アリピプラゾール52例、クエチアピン31例。心拍変動のパワースペクトル分析によりANS活性を評価した。
 主な結果は以下のとおり。

・クエチアピン群は、リスペリドン群およびアリピプラゾール群と比較し、交感神経と副交感神経活性が有意に低下した。また、クエチアピン群は、オランザピン群と比較し、交感神経活性が有意に低下した。
・重回帰分析では、抗精神病薬の種類が、ANS活性に有意な影響を及ぼすことが示唆された。

 著者らは「今回調査した4種類の抗精神病薬の中で、クエチアピンがANS活性に最も強い影響を及ぼすことが確認された」としている。


<原著論文>
・Hattori S, et al. Schizophr Res. 2017 Jul 12.

<参考>
■ 統合失調症患者への抗精神病薬高用量投与、自律神経系への影響は:横浜市大
2017.1.18:ケアネット

オランザピン(ジプレキサ®)関連情報

2017-03-28 06:13:44 | 抗精神病薬
 オランザピン(ジプレキサ®)は統合失調症を中心とした精神疾患関連に用いられる抗精神病薬です。
 効果のある薬である一方で副作用もあります。
 肥満・糖尿病が有名ですが、心血管系副作用も無視できません。

 オランザピン関連情報をいくつか集めました。
 まずはオランザピンが引き起こす視交叉上核(SCN)経由の副交感神経緊張状態による心血管代謝系副作用(血圧低下、心拍数低下)がメラトニンにより保護されるという報告。

■ オランザピンの心血管副作用、メラトニンの保護可能
2017/03/28:ケアネット
 第2世代抗精神病薬(SGA)は、患者の早期死亡の起因となる有害な心血管代謝系副作用と関連している。これら心血管代謝系副作用を引き起こすメカニズムは十分にわかっていないが、最近、3つの独立した研究において、メラトニンがSGA治療患者の心血管代謝リスクを防御していることが示された。循環するメラトニンの主要標的領域の1つである視交叉上核(SCN)が、SGA誘発性の早期心血管系効果に関連しているかを、メキシコ国立自治大学のFrancisco Romo-Nava氏らは、Wistarラットを用いて検討を行った。Journal of pineal research誌オンライン版2017年2月22日号の報告。
 体内時計、室傍核および自律神経系におけるオランザピンとメラトニンの急性効果について、免疫組織化学、侵襲的心血管測定、ウエスタンブロットを用いて評価を行った。
 主な結果は以下のとおり。

・オランザピンは、SCNにおいてc-Fos免疫反応性を誘導し、続いて室傍核および迷走神経の背側運動核を誘導し、副交感神経緊張の強力な誘導を示した。
・オランザピン投与後のSCN-副交感神経ニューロン経路の関与は、コレラトキシンB逆行性追跡および血管作動性腸管ペプチド免疫組織化学を用いてさらに記録された。
・オランザピン誘発性の血圧低下と心拍数低下が裏付けられた。
・メラトニンは、副交感神経経路および心血管作用を含むオランザピン誘発性SCN c-Fos免疫反応性を是正し、その一方、線条体、腹側被蓋野および側坐核を含むオランザピンの有益作用に関連する脳領域の活性化は維持された。
・SCNにおいて、オランザピンはメラトニンが関与した体内時計の調整因子であるGSK-3βをリン酸化した。
・SCNの両側病変は、オランザピンの副交感神経活性への影響を防御した。

 著者らは「SCNは、心血管機能に対するオランザピンの初期効果を媒介する重要な領域である。さらなる調査が必要ではあるが、メラトニンは、その作用を是正し、潜在的な保護効果を有する可能性がある」としている。


 次は、そのオランザピンによる心血管系副作用(平均動脈圧、静脈緊張および心収縮能を低下)の報告。

■ オランザピンによる急性期治療、心血管系に影響
2014/07/11:ケアネット
 オランザピンの急性治療は、平均動脈圧、静脈緊張および心収縮能を低下することが、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のJoanne Y.T. Leung氏らによるラット試験の結果、明らかにされた。抗精神病薬による治療は、有害な心血管作用(たとえば起立性低血圧不整脈)と関連している。また、統合失調症患者は心血管系合併症の有病率が高いが、抗精神病薬の血管緊張や心収縮への作用については、これまでほとんど注意が払われていなかった。Vascular Pharmacology誌オンライン版2014年6月23日号の掲載報告。
 研究グループは本検討において、抗精神病薬の心血管作用を明らかにするため、非定型抗精神病薬オランザピンが心血管機能を変化しうるかどうかを、ラットを用いたin vivo試験で評価した。検討に用いられたのは雄のSprague-Dawleyラットで、留置カテーテルで調節した。手術から回復4時間後、オランザピン[3または15mg/kgを腹腔内投与(i.p.)]または溶媒の単回投与後60分のベースライン時点で、意識があり拘束をされていない状態のラットにおいて平均動脈圧(MAP)、循環系平均充満圧(MCFP;体静脈緊張の指数)、心拍数、左室最大収縮期圧(LVP)、心収縮能(+/-dP/dt)を測定した。
 主な結果は、以下のとおり。

・溶媒投与群は、測定を行ったいずれの時点においても心血管測定値に変化はみられなかった。
・オランザピンの心拍数への影響はみられなかったが、投与後30分の最大効果到達時点において、用量依存性でMAP、MCFP、LVP、心収縮能の減少が認められた。
・ラットにおける急性期オランザピン治療は、MAP、静脈緊張および心収縮能を低下した。
・静脈緊張は、抗精神病薬治療の初期において患者にみられる起立性低血圧に寄与している可能性が示唆された。



 次に、オランザピンによる代謝異常(体重増加を伴わない脂質異常症や糖尿病)の原因は膵臓β-細胞のアポトーシスであることが判明したという報告;

■ オランザピンの代謝異常、原因が明らかに:京都大学
2013/08/30:ケアネット
 オランザピン服用患者の一部で認められる、体重増加を伴わない脂質異常症や糖尿病の原因について、オランザピンがインスリン分泌を制御する膵β細胞のアポトーシスを引き起こしている可能性があることを、京都大学大学院理学研究科教授・森 和俊氏らが明らかにした。Cell Structure and Function誌2013年第2号の掲載報告より。
 統合失調症患者の症状軽減のためにさまざまな薬物投与が行われるが、いくつかの有効な第2世代(非定型)抗精神病薬、とくにオランザピンは一部の患者において、肥満や脂質異常、糖尿病を引き起こす。一般的にオランザピンは、肥満を誘発し、その後インスリン抵抗性が引き起こされることによって糖尿病発症に関与すると考えられているが、森氏らはインスリン分泌を制御する膵β細胞への直接的な薬物作用を、オランザピンほかリスペリドン、その他の非定型抗精神病薬についてハムスターを用いて調べた。また、その際に細胞への悪影響(ストレス)を生じさせる小胞体(ER)ストレスの喚起が認められるかについて、ERストレスセンサー分子PERKの低活性をエビデンスとして調べた。
 得られた主な知見は以下のとおり。

・オランザピン治療細胞でのみ、アポトーシスの誘発が認められた。
・オランザピン治療細胞においては、PERK仲介翻訳減衰が選択的に損傷を受けており、そのためにERストレスの持続がみられた。
・インスリン分泌は顕著に阻害されていた。そして、プロインスリンとインスリンがいずれもオランザピン治療細胞に蓄積していた。
・蛋白質合成抑制とインスリンmRNAのノックダウンにより、それ以後はオランザピン誘発のアポトーシスは減弱した。
・以上から、オランザピンを服用する患者の一部で、体重増加することなく高脂血症と高血糖が臨床的に認められることについて、オランザピン治療による膵β細胞への損傷が好ましくない代謝の影響に関与している可能性が示唆された。


 次は、オランザピンによる代謝異常(メタボリックシンドローム)が他の抗精神病薬であるアリピプラゾールへ切り替えることにより改善されるという報告;

■ オランザピンの代謝異常、アリピプラゾール切替で改善されるのか
2015/04/01:ケアネット
 統合失調症患者では、抗精神病薬で誘発される代謝異常の頻度が高い。そして、そのために心血管疾患を生じやすい。このことを念頭に、インド・スリナガル医科大学のRayees Ahmad Wani氏らは、オランザピンでメタボリックシンドロームを発症した安定期統合失調症患者における、アリピプラゾール切り替え後のさまざまな代謝パラメータへの影響を、非盲検試験で調査した。Neuropsychiatric disease and treatment誌オンライン版2015年3月13日号の報告。
 対象は、オランザピンで安定しており、NCEP ATP III(National Cholesterol Education Program Adult Treatment Panel III)の基準でメタボリックシンドロームを発症した統合失調症患者62例。対象患者は、アリピプラゾール切り替え群とオランザピン継続群に1:1で無作為に割り付けられた。アリピプラゾール切り替え群は、1ヵ月にわたる漸減漸増にて切り替えを行った。代謝パラメータは、ベースラインおよび試験開始8週および24週時点で評価した。有効性は、ベースラインおよび24週目におけるPANSS(陽性・陰性症状評価尺度)、ベースラインのCGI-S(臨床全般印象・重症度尺度)と24週時点のCGI-I(臨床全般印象・改善度尺度)にて評価した。
 主な結果は以下のとおり。

メタボリックシンドロームのすべてのパラメータ(腹囲、血圧、トリグリセリド値、空腹時血糖値、HDLコレステロール)は、アリピプラゾール切り替え群の継続的な改善と比較して、オランザピン継続群では悪化したままであった。
・研究終了時点で、NCEP-ATP-III基準を満たすメタボリックシンドロームを有する患者の割合は、オランザピン継続群100%(26例)、アリピプラゾール切り替え群42.8%(15例)であった。
・PANSS総スコアやCGI-Iスコアで示された精神病理学的変化は、両群間で統計学的に有意な差は認められなかった。
・本結果から、代謝異常が認められるオランザピン使用中の安定期統合失調症患者では、アリピプラゾールへ漸減漸増で切り替えることにより、有効性を維持したまま、代謝異常を改善できることが示唆された。


第2世代抗精神病薬の賦活系・沈静系作用(副作用)について

2017-02-18 12:57:13 | 抗精神病薬
 抗精神病薬には「賦活系作用」「鎮静系作用」という表現があるらしい。
 人体に好ましくない作用であれば「副作用」とも表現されるようです。

 そのことに関する記事を見つけました。

■ 各抗精神病薬、賦活系と鎮静系を評価
2017/02/16:ケアネット
 抗精神病薬の副作用である賦活や鎮静は、薬物治療の妨げとなる可能性がある。米国・ニューヨーク医科大学のLeslie Citrome氏は、第2世代抗精神病薬の賦活および鎮静の副作用について評価を行った。Journal of clinical psychopharmacology誌オンライン版2017年1月30日号の報告。
 本研究では、統合失調症および大うつ病の補助的治療に適応を有する薬剤の製品ラベルで報告されている副作用の割合を調査し、第1選択薬として用いられる経口の第2世代抗精神病薬の賦活および鎮静特性を定量化し評価した。追加データソースとして、規定文書、調査概要、パブリッシュされた調査レポートを含んだ。副作用リスク増加とNNH(Number Needed to Harm:有害必要数)は、各薬剤対プラセボにて算出した。
 主な結果は以下のとおり。

・賦活や鎮静の副作用は、各抗精神病薬で違いが観察され、一部では賦活と鎮静の両方の可能性が示唆されている。

・統合失調症に用いられる薬剤では、主な賦活系薬剤としてlurasidone(NNH:アカシジア11 vs.傾眠20)cariprazine(NNH:アカシジア15 vs.傾眠65)が挙げられる。

リスペリドン(NNH:アカシジア15 vs.鎮静13)アリピプラゾール(NNH:アカシジア31 vs.眠気34)の賦活と鎮静のバランスは同程度であった。

・主な鎮静系薬剤は、オランザピン、クエチアピン、ziprasidone、asenapine、iloperidoneが挙げられる。

・賦活、鎮静に作用しない薬剤は、パリペリドン、brexpiprazoleであった。

・うつ病に用いられる抗精神病薬については、全体的に統合失調症と同様な所見であった。

・抽出されたデータは、製品ラベルに含まれる有害事象表に寄与する登録研究からの入手可能なものに限られていた。その後の比較研究では、異なる結果が示される可能性がある。


<原著論文>
Citrome L. J Clin Psychopharmacol. 2017 Jan 30.

 要約すると以下の通り;

・賦活系>鎮静系:lurasidone、cariprazine
・賦活系=鎮静系:リスペリドン(リスパダール®)、アリピプラゾール(エビリファイ®)
・賦活系<鎮静系:オランザピン(ジプレキサ®)、クエチアピン(セロクエル®)、ziprasidone、asenapine、iloperidone
・賦活/鎮静系に作用しない:パリペリドン(インヴェガ®)、brexpiprazole


 もうひとつ関連記事を。

 鎮静系副作用による中止率は、クエチアピン(セロクエル®)13.0%>オランザピン(ジプレキサ®)7.3%>リスペリドン(リスパダール®)4.2%>アリピプラゾール(エビリファイ®)2.0%

 ただし、抗精神病薬間の差というより、患者間の差が大きいのでそちらに注意すべきだという結論です。
 まあ、そう云われればそうですね。

■ 第2世代抗精神病薬、賦活と鎮静作用の違いを検証
2016/05/11:ケアネット
 若者に対する第2世代抗精神病薬(SGAs)の賦活や鎮静の効果について、米国・ニューヨーク大学ランゴン医療センターのZainab Al-Dhaher氏らが検討を行った。Journal of child and adolescent psychopharmacology誌オンライン版2016年4月19日号の報告。
 若者に対する第2世代抗精神病薬治療の適応症、有効性、忍容性(SATIETY)を評価する自然主義的コホート研究の一環として、SGAsを開始した抗精神病薬未治療の若者における賦活や鎮静症状の主観的評価を、Treatment Emergent Symptoms尺度(TESS)を使用し、3ヵ月間毎月収集した。中止率、TESSからの報告症状率、重症度は、臨床や治療パラメータに関連していた。TESSの測定は、任意の日中の賦活(ACTIVATION+)と鎮静症状(SEDATION+)の2つが定義された。
 主な結果は以下のとおり。

・4件の研究から得られた、SGAsを開始した抗精神病薬未治療の若者327例における鎮静による中断率は、クエチアピンが最も高く(13.0%)、次いでオランザピン(7.3%)、リスペリドン(4.2%)、アリピプラゾール(2.0%)であった(p=0.056)。

・抗精神病薬未治療の若者257例(13.8±3.6歳、男性率:57.8%)の使用開始薬剤は、アリピプラゾール40例、オランザピン45例、クエチアピン36例、リスペリドン135例であり、ベースライン後1回以上のフォローアップを実施した。

・ベースラインの有病率は、ACTIVATION+(39.9%)、SEDATION+(54.1%)で、SGAs間に差は認められなかった。

・ACTIVATION+とSEDATION+は、時間とともに有意に変化した(ACTIVATION+ 減少:p=0.0002、SEDATION+ 増加:p<0.0001)。それぞれのSGAs間でわずかな違いが認められ、オランザピンのACTIVATION+は低く(p=0.002)、フォローアップ中のアリピプラゾールのACTIVATION+ はやや高く(p=0.018)、アリピプラゾールのSEDATION+ は低かった(p=0.018)。

・4つのSGAsにおいて、不眠症は減少し(p=0.001)、過眠症が増加した(p<0.001)。

・ベースライン後の傾眠の有病率は、最も頻繁にみられたが、TESSの訴えは85%が軽度であり、SGAs間の違いはなかった。

・年齢の低さが、賦活症状と関連し、年齢の高さが鎮静症状と関連していた。そして、ベースライン時の機能の低さは、両方の増加と関連していた。

・精神運動遅滞率は、統合失調スペクトラム障害において高かった。一方で、診断にかかわらず、ADHD治療と精神運動興奮との関連が認められた。

 結果を踏まえ、著者らは「単独TESSによるレイティングの独立予測因子は、SGA間の特異的な差よりも、むしろ臨床パラメータを含んでいる。このことから、特定のSGAsに注意を払うよりも、慎重な個別化治療戦略の必要性が示唆された」とまとめている。


<原著論文>
Al-Dhaher Z, et al. J Child Adolesc Psychopharmacol. 2016 Apr 19.

抗うつ薬服用中の患者、車の運転を“解禁”

2016-12-06 06:12:57 | 抗精神病薬
 精神疾患患者と自動車免許・運転に関する記事を紹介します;

■ 抗うつ薬服用中の患者、車の運転を“解禁”―厚労省、注意事項順守で
2016年11月30日 新井哉・CBnews
 厚生労働省は、服用中は車の運転ができないとしてきた抗うつ薬について、医師が副作用に関する指導を行うなどの一定の条件を満たした場合、運転ができるようにすることを決め、製造販売業者に添付文書の改訂を指示した。関連学会から「患者の生活を奪う」と改善を求める要望が出ていたため、多剤併用を避けるといった注意事項を順守すれば運転ができるようにした。
 添付文書改訂の対象となった薬剤は、ミルナシプラン塩酸塩(商品名・トレドミン錠12.5mg、15mgなど)とデュロキセチン塩酸塩(同・サインバルタカプセル20mg、30mg)、ベンラファキシン塩酸塩(同・イフェクサーSRカプセル37.5mg、75mg)。
 これらの薬剤については、めまいや眠気といった運転に影響を与える副作用が発生する可能性があるため、これまでは車の運転をしないよう添付文書に記載していた。しかし、恩恵があるはずの治療薬によって患者の生活が奪われ、必要な治療を受けられずに症状が悪化したり、再発したりすることを懸念した日本神経精神薬理学会と日本うつ病学会が2014年1月、厚労省に添付文書の改訂を求める要望書を出していた。
 こうした要望を踏まえ、厚労省の薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会の安全対策調査会で、副作用の状況や医師が患者に確認する必要がある事項などを検討。厚労省は同調査会の審議結果を踏まえ、医師が患者に対して副作用に関する適切な指導を行うといった一定の条件を満たせば、運転が可能と判断した。
 厚労省は、添付文書の改訂に合わせて運転を希望する患者に関する注意事項をまとめた。それによると、医師が注意すべき点として、▽患者のうつ病などの精神疾患の状態が安定しているかよく観察する▽運転に影響を与える可能性のある副作用が発生することがあるので、患者の自覚症状の有無を確認する▽多剤併用処方は避け、必要最小限のシンプルな処方計画を心掛ける―といったことを挙げている。


 小児科医の私の視点から見ると、医師から処方される薬剤の添付文書には安易に「小児に対する安全性は確立されていない」と書かれていると感じています。
 「何かあったら製造メーカーの責任ではありません、処方した医師の責任ですから」と腰の引けた製薬会社のスタンス。

 例として挙げますと、「麻黄湯」という漢方薬は「乳児の鼻閉塞・哺乳困難」の適応があります。しかし麻黄湯の添付文書には「小児等に対する安全性は確立されていない」とはっきり記載されているのです。
 もう、その保身に徹する企業姿勢に呆れるしかありません。

 成人領域では花粉症に使用する抗アレルギー薬も問題です。
 「アレロック」(=オロパタジン)というベストセラーの薬がありますが、その添付文書には、「重要な基本的注意」として「眠気を催すことがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事させないよう十分注意すること」と記載されています。
 すると、スギ花粉症治療中の患者さん(国民の3割?)は2〜4月は車の運転ができないことになります。
 他の抗アレルギー薬も右へならえ状態で、記載が無いのは「アレグラ」(フェキソフェナジン)と「クラリチン」(=ロラタジン)くらい・・・でもこの2剤の効果はそれなりなんですよね(^^;)。

 使用の実態を調査して、より現実的な記載に変えていただきたいと、切に希望します。