発達障がい・こころのやまい

専門外ながら相談を受けることがあり、その際に読んだ本や集めた情報を書き留めました(本棚9)。

急性双極性うつ病に対する非定型抗精神病薬の信頼性

2016-03-11 12:34:00 | 
 双極性障害の急性期症状に第2世代抗精神病薬(SGA)が有効かどうかを後向き研究(過去のデータを使用して解析する手法)した報告です。
 日本で認可されているSGAはジプレキサ®とセロクエル®が有名ですね。
 一般的に、SGAは躁状態には有効であるがうつ状態にはあまり効かない、という認識だと思われます。
 この論文では躁状態にもうつ状態にも有効であったと結論づけています。

■ 急性双極性うつ病に対する非定型抗精神病薬の信頼性は
ケアネット:2016/03/11
 双極性障害(BD)に関連する混合性の特徴を伴う急性うつ病の治療における第2世代抗精神病薬(SGA)の使用を支持するエビデンスは乏しく、不明確である。そのような中、米国・コロンビア大学のMichele Fornaro氏らは、混合特徴を伴う急性BDのうつ病治療に対するSGAを調査した研究のシステマティックレビューと予備メタ解析を行った。International journal of molecular sciences誌2016年2月号の報告。
 独立した2人の著者が、1990~2015年9月の期間で主要な電子データベースより、混合性の特徴を伴う急性双極性うつ病治療に対するSGAの有効性を調査した無作為化(プラセボ)対照比較試験(RCT)またはオープンラベル臨床試験の検索を行った。ランダム効果メタ解析により、SGAとプラセボ間のうつ症状および躁症状のスコアのベースラインからエンドポイントまでの変化に関する標準化平均差(SMD)、95%信頼区間(CI)を計算した。
 主な結果は以下のとおり。

・RCT 6報、オープンラベルプラセボ対照研究(事後レポートを含む)1報から1,023例の患者が抽出された。
・対象患者には、ziprasidone、オランザピン(ジプレキサ®)、lurasidone、クエチアピン(セロクエル®)、asenapineのいずれかが、平均6.5週間投与されていた。
・Duval and Tweedie調整により出版バイアスを加味したメタ解析では、SGAは、ヤング躁病評価尺度(YMRS)総スコアの平均値により評価されるように、混合性の双極性うつ病の躁(軽躁)症状の有意な改善をもたらした(SMD:-0.74、95%CI:-1.20~-0.28、SGA:907例、対照:652例)。
・メタ解析では、SGA治療患者(979例)は、プラセボ群(678例)と比較してモンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)スコアの大幅な改善が認められた(SMD:-1.08、95%CI:-1.35~-0.81、p<0.001)。

 著者らは「全体的に、SGAはプラセボと比較し、MADRSやYMRSスコアの良好な改善が認められた。しかし、本報告の予備的な性質を考えると、信頼性の向上や決定的な結論を導くために追加のオリジナル研究が必要とされる」とまとめている。

<原著論文>
Fornaro M, et al. Int J Mol Sci. 2016;17.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

双極性障害に対する非定型抗精神病薬比較

2016-03-08 07:42:37 | 
 双極性障害の話題を続けます。

 コストという視点から非定型抗精神病薬を評価した報告を紹介します。
 国民皆保険の日本人にはピンときませんが、外国では効果があっても高価であれば採用されません。
 日本では花粉症に対する抗アレルギー薬がたくさん処方される時期ですね。これ、結構高いので、外国での評価は低いと耳にしたことがあります。

 この報告では、エビリファイ®の方が、ジプレキサ®よりコスト面で有利、と解析されています。

■ 双極性障害に対する非定型抗精神病薬比較
ケアネット:2014/09/22
 スペイン・Health Value社のCarlos Rubio-Terres氏らは、双極性障害の治療薬としてのアリピプラゾール(エビリファイ®)とオランザピン(ジプレキサ®)について、有害事象の側面から医療費比較の検討を行った。その結果、アリピプラゾールのほうが、有害事象に関連するコストが低いことを報告した。Actas Espanolas Psiquiatria誌2014年9月号(オンライン版2014年9月1日号)の掲載報告。

 検討は、Markovモデルを用い、「有害事象なし(NAE)」「錐体外路症状(EPS)」「体重増加(WG)」「性機能障害(SD)」を考慮に入れたコスト解析を実施した。
 双極性障害の病態変化の移行確率は、臨床試験のメタ解析およびスペインでのレトロスペクティブな研究から推定した。また、それぞれの病態に関連する医療費は、公表されているスペインの研究を参考にした。コスト比較には、病院薬局の効率性という観点から、1日平均用量における1mg当たりの最低取得コストを使用。解析適用の計画対象期間は12ヵ月とした。モンテカルロシミュレーションを用いて、解析に含まれるすべての変数に対し確率的感度分析を実施。なおSpanish Health System price indexを用い、2013年に更新されたコストを使用した。
 主な結果は以下のとおり。

・アリピプラゾールを用いた治療はオランザピンに比べ、患者1人当たりの年平均コストを289ユーロ(95%信頼区間[CI]:271~308ユーロ)削減した。
・アリピプラゾールによる性機能障害発現率が、クエチアピン(非定型経口抗精神病薬の中で最も低頻度)と同程度と仮定した場合、患者1人当たりの追加コストは323ユーロ(95%CI:317~330ユーロ)であった。
・アリピプラゾールによる治療はオランザピンと比較して有害事象に関連するコストが低かった。この差は双極性障害患者の治療において、スペインの医療システムに大きなコスト節減をもたらす可能性が示された。
・結果の頑健性は、確率論的解析により検証された。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

双極性障害に対する非定型抗精神病薬の選択基準

2016-03-08 07:22:17 | 
 双極性障害の話題を続けます。

 テーマはとても知りたい内容なので取りあげましたが、専門用語がたくさん出てきてわかりづらい報告ですね(^^;)。
 用語を整理すると、
・NNT:治療必要数
・DAE:有害事象による治療中止
・NNH:DAEに関する有害必要数
 ・・・ウ~ン、整理しても今ひとつピンときません。参考にならなくて申し訳ない。

 薬剤は一般名(化学物質名)で記されていますので、製品名を書いておきます;
・オランザピン  = ジプレキサ®
・フルオキセチン = プロザック®
・クエチアピン  = セロクエル®
・ルラシドン   = ラツーダ®(国内未承認)
・ラモトリギン  = ラミクタール®
・アリピプラゾール = エビリファイ®
・ジプラシドン  = ジプシドン®(国内未承認)


■ 双極性障害への非定型抗精神病薬、選択基準は
ケアネット:2015/06/22
 米国ケース・ウェスタン・リザーブ大学のKeming Gao氏らは、双極性障害に対する各種非定型抗精神病薬の有効性と安全性について、治療必要数(NNT)または有害事象による治療中止(DAE)という観点でレビューを行った。その結果、FDAに承認されている薬剤においてNNTの差異は小さかったが、DAEに関する有害必要数(NNH)の差異は大きかったことを示した。結果を踏まえて、著者らは「非定型抗精神病薬の選択は安全性および忍容性に基づくべきである」と提言している。Neuroscience Bulletin誌オンライン版2015年5月30日号の掲載報告。
 検討は、1980年1月~2014年10月30日にMEDLINEに掲載された英語文献を、抗精神病薬、非定型抗精神病薬の後発医薬品名ならびに先発医薬品名、「双極性うつ/双極性障害」「プラセボ」「治験」をキーワードとして検索した。原著論文より、レスポンスの指標(モンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度[MADRS]トータルスコアの改善率が50%以上)、寛解(エンドポイントにおけるMADRSトータルスコアが12点以下または8点以下)、DAE、眠気、7%以上の体重増加、錐体外路症状の副作用(EPS)、アカシジアを抽出した。レスポンス、寛解に対するNNTまたはDAEに対するNNH、あるいはプラセボに関連する他の副作用を予測し、予測値を95%信頼区間と共に算出した。
 主な結果は以下のとおり。

・レスポンスのNNTはオランザピン単独療法11~12、オランザピンとフルオキセチンの合剤(OFC)4、クエチアピン-IR単独療法7~8、クエチアピン-XR単独療法4、ルラシドン単独療法4~5、ルラシドン併用療法は7であり、プラセボに比べて優れていた。
・寛解のNNTはそれぞれ、11~12、4、5~11、7、6~7、6であり、プラセボに比べ優れていた。
・OFCとラモトリギン、アリピプラゾールまたはジプラシドンとプラセボとの間に、レスポンスと寛解に関する有意差は認められなかった。
・オランザピン単独療法、クエチアピン-IR、クエチアピン-XR、アリピプラゾール、ジプラシドン120~160mg/日は、DAEに関するNNHのリスクが有意に高く、それぞれ24、8~14、9、12、10であった。
・眠気に関しては、クエチアピン-XRのNNHが4と最小であった。
・7%以上の体重増加に関しては、オランザピン単独療法およびOFCのNNHがいずれも5と最小であった。
・アカシジアに関しては、アリピプラゾールのNNHが5と最小であった。
・これらの結果から、OFC、クエチアピン-IRと-XR、ルラシドン単独療法および精神安定剤へのルラシドン追加療法など、FDAに承認されている薬剤においてレスポンスおよび寛解に対するNNTの差異は小さいが、DAEや一般的な副作用に対するNNHの差異は大きいことが示された。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

双極性障害治療、10年間の変遷

2016-03-08 07:08:24 | 
 双極性障害の記事を続けます。

 昔は双極性障害は躁うつ病と呼ばれ、躁状態には入院、うつ状態には抗うつ薬という時代が長く続きました。
 近年はリチウムを中心とした気分安定薬をベースに、躁状態には非定型抗精神病薬、うつ状態にはあまり選択枝がないのですが、ラミクタールでしょうか。
 その変遷を調査した報告です;

■ 双極性障害治療、10年間の変遷は
ケアネット:2016/03/08
 過去10年間メンタルヘルスケアにおいて、双極性障害と診断された患者の処方パターンや変化を明らかにするため、デンマーク・コペンハーゲン精神医学センターのLars Vedel Kessing氏らは、集団ベースおよび全国データを用いて検討した。さらに、国際的ガイドラインからの勧告と調査結果との関係も検討した。Bipolar disorders誌オンライン版2016年2月18日号の報告。
 集団ベースで全国的な研究が実施された。デンマーク全人口より、2000~11年までの10年間に、メンタルヘルスケアで躁病・双極性障害と初めての受診で診断されたすべての患者のレジストリベース縦断データと、すべての処方データが含まれた。
 主な結果は以下のとおり。

・合計3,205例の患者が研究に含まれた。
・調査期間中、リチウムはあまり処方されておらず、抗てんかん薬と非定型抗精神病薬は、より多く処方されていた。
・リチウムは、第1選択薬から最終選択薬へ変化し、非定型抗精神病薬に置き換えられていた。
・抗てんかん薬は、第4選択薬から第2選択薬クラスとして処方されていた。また、抗うつ薬は、10年間高いレベルでほぼ横ばいであった(1年間の値:40~60%)。
・ラモトリギン(ラミクタール®)およびクエチアピン(セロクエル®)の処方が大幅に増加していた。
・併用療法は、リチウムと抗うつ薬の併用を除き、すべての組み合わせで増加していた。


 結果を踏まえ、著者らは「調査期間中、主な変化は薬物処方でみられた。リチウムの処方減少と抗うつ薬の変わらぬ大量の処方は、国際的ガイドラインの勧告に沿わない」としている。


 簡略化すると以下の通り;
・第一選択:非定型抗精神病薬(セロクエル®、ジプレキサ®)
・第二選択:抗てんかん薬(ラミクタール®、デパケン®/バレリン®、テグレトール®)
・第三選択:抗うつ薬(種々)
・第四選択:リチウム

 私が読んできた本の記述と少し異なりますね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする