海外協力隊への応援歌

青年海外協力隊はじめJICAボランティアを心から応援しています。
2010年1月帰国、イエメン、青少年活動隊員より

青年海外協力隊 民間企業からの現職参加について 草稿結論つづき

2013-03-30 | Weblog
<修論番外編(草稿より)>
(◆~◇部分は引用)

第4章 結論

<中略>
 外務省は、「海外ボランティア事業の成果と他の手段による非代替性」として次のように述べている 。
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◆ 海外ボランティア事業の成果と他の手段による非代替性
 途上国住民の視点をもったグローバル人材の育成という効果は,本来別の目的をもって行われる民間企業の人材育成,学生の海外留学によっては,効率的には達成できない。
 民間企業などでも,新人職員を育てる中で,海外で仕事ができる人材は育成され,その成果は企業内で還元され,企業活動の枠中で発揮されるが,派遣先国において「親日感情」なる国民的利益として根付くには社会貢献活動などの更なる企業努力に負うこととなる。
 途上国の実態について草の根レベルでの学びの場を提供する海外ボランティア事業の効果は,座学中心の海外大学留学や都市近郊等での仕事が中心となる企業の海外勤務では得にくい。また,国の将来を担う人材の育成がその時々の経済状況に左右されることは望ましくなく,海外ボランティア事業を国策として維持していく必要がある。
(外務省ホームページ, 2011年7月, 『草の根外交官:共生と絆のために―我が国の海外ボランティア事業』注17, http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shimin/seinen/kusanone_seisaku_p.html
2011年9月19日アクセス)◇
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 海外ボランティア事業によって、日本は、企業の研修や留学では得られない成果を得られると言うが、ここに、青年海外協力隊事業への社員の派遣を研修として考えられない理由があるとも言える。つまり、企業には、「途上国住民の視点をもったグローバル人材の育成」は必要ない場合のほうが多い。企業にとっては、どの視点を持っているかは重要ではなく、途上国というマーケットで利益を上げられる社員の育成が必要なのである。そのために途上国住民の視点を持った社員が必要な場合も考えられ、その場合は、積極的に社員を現職参加させる、本業に直結している場合の研修的利用となる。そうでない場合、この海外協力隊事業の目的に基づくプログラムが自社で提供できないプログラムであるために、社員の自己実現への支援の根拠となることはある。
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◆ 海外ボランティアを一人派遣するために2年間で700万円以上も国費を投入するのはコスト高であるとの議論もあるが、例えば、企業が社員を米国に留学させるには、通常1年間で550万円から750万円程度(学費、生活費、航空賃)必要となるが、協力隊員の場合、2年間派遣で、700万円程度(募集・選考経費、航空賃を含む)であり、海外ボランティア事業が高コストとは言えない。
(外務省ホームページ, 2011年7月, 『草の根外交官:共生と絆のために―我が国の海外ボランティア事業』注17, http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shimin/seinen/kusanone_seisaku_p.html
2011年9月19日アクセス)◇
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 民間企業が社員を米国に留学させるのは、その留学の成果が投資以上の効果をほぼ確実視しているからである。ODAによって青年海外協力隊員が途上国に派遣されるのは、日本にとって、その派遣の成果が税金の使途として投入以上の効果を上げることがほぼ確実視できているからである。ODAの目的は最終的には国益であるが、青年海外協力隊事業は日本の国益が他の諸国の国益と矛盾するものではない。「技術移転」、「友好親善」、「人材育成」3つの目的を持った事業であり、世界がその裨益に預かることが可能な事業である。

 現職参加は、この国家事業には不可欠である。毎回要請に対して十分な隊員を派遣することができていないが、もし、民間企業からその要請を満たすことのできる隊員を自由に選べるとしたら、確実に満たすことができる。そこまで徴兵のような仕組みになっていないのは、日本が自由と権利に立脚した国家であり、この事業も自由意志を尊重した、ボランティアを基本とする事業だからである。社員はこの事業に手を挙げることができ、企業はそれを支援することもでき、支援しない選択権もある。

 青年海外協力隊事業の本来の目的には企業の利益はまったく含まれていないが、企業は、長い目、大きな視野で見たとき、国家としてのプレゼンスを上げたり、日本人の海外における安全保障につながるなど、将来的に確実に企業にも還元される裨益効果があることを理解し、目の前でどんなリターンが自社にもたらされるとか、自社の社員がステークホルダーだからといったことに捉われることなく、今現在許容できる痛みなら許容して、この国家事業を支援していきたい。


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