春の雪
金澤ひろあき
春の雪が降る昼のことである。ある料理店の、私の隣の席に、三十代に見える男女が座った。恋人のようである。
そのうち二人は、共通の知り合いであるSという男のことを話し出した。
Sはカリスマ性を持ち、中学時代から、多くの人の憧れであったらしい。
現に女性のほうはワインを飲みながら、「憧れていて、真剣に結婚したいと思っていた」と、涙を浮かべながら言う。
二人は社会人になってすぐに、Sが興した会社に参加している。Sはカリスマ性を発揮し強気に進んで行くのだが、細かいフォローをせず、あちこちで破綻し迷惑をかけたらしい。
結局うまく回らなかったのだが、Sは魅力ある人物なのだろう。もといた会社に戻り、うまくやっている。
話をしている二人は、もといた会社にも戻ることができず、借金もかかえ、男のほうは離婚も経験している。
しかし、二人ともSのことを懐かしがり、ほめているのである。
春の雪 思い出話かた結び ひろあき
春の雪が上がったので、私は店を出た。話はまだ続いていた。
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金澤ひろあき
春の雪が降る昼のことである。ある料理店の、私の隣の席に、三十代に見える男女が座った。恋人のようである。
そのうち二人は、共通の知り合いであるSという男のことを話し出した。
Sはカリスマ性を持ち、中学時代から、多くの人の憧れであったらしい。
現に女性のほうはワインを飲みながら、「憧れていて、真剣に結婚したいと思っていた」と、涙を浮かべながら言う。
二人は社会人になってすぐに、Sが興した会社に参加している。Sはカリスマ性を発揮し強気に進んで行くのだが、細かいフォローをせず、あちこちで破綻し迷惑をかけたらしい。
結局うまく回らなかったのだが、Sは魅力ある人物なのだろう。もといた会社に戻り、うまくやっている。
話をしている二人は、もといた会社にも戻ることができず、借金もかかえ、男のほうは離婚も経験している。
しかし、二人ともSのことを懐かしがり、ほめているのである。
春の雪 思い出話かた結び ひろあき
春の雪が上がったので、私は店を出た。話はまだ続いていた。
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