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と、おじさんはハッとして口元を手で隠した。
「いや、失礼。初めて会う方に話すようなことではありませんでしたね」
「あ、いえ。こちらこそ立ち入ったことを聞いてしまってすみません。えっ……と、ところで遺跡を造った竜(ドラゴン)というのはどんな種族なんですか?」
強引に話題を変えれば、それはそれでおじさんを驚かせたらしい。
「おや、聞いたこともありませんか? まあ私も直接会ったことはないので偉そうに言えないのですが……。彼らは鱗に覆われた頑強な体を持ち、高度な魔法を扱い、身の丈は一山ぐらいあるそうです。知性と暴力を兼ね備え、さらに希少性も高く、悪魔と並んで世界の頂点に立つ種族ではないでしょうかね」
あの悪魔と同等。なかなかぞっとしない情報だった。
「あ、ここからは特に傾斜が急になってるのでこのロープを掴んでいてください」
前に来たときに張られたのだろう少し色褪せたロープを握り、地面を睨みつけてゆっくり歩かなければ、簡単に谷底へ落ちてしまいそうだった。
99階は、しばらく下りた先の森の中で、太い何本もの木の枝や根に引っかかるようにして存在していた。
「これ、もし何かの拍子にズレちゃって、さらに下へ落ちていったらどうするんですか?」
「それはもう、運に任せるしかないですね」